新人くんの話
…とりあえず今でも『はぁ?』って場面は多い
多いんだけれど。
でも、いつまでも壁を作っていたらお互いに馴染めない
ゲーセンで無料ゲームを毎日やる事も
ガンダムや萌え系アニメが大好きな事も
俺が全く興味を示さない事を彼は理解しているようで
その話を全くしない
俺も『ガンダムってどんな?』なんて墓穴を掘らないし。
あとは仕事の事を話しして
時々ジョークを言って
相手の言うジョークは全く面白くは無いけれど
それでいいのかなって思っている
だから普通。
今は普通にしている
32歳君は先輩風を吹かせたくて
常に上から行こうとしている
『とにかくお前は一番下のペーペーなんだから何でもやらないとダメだ』
と、新人さんに言う
とりあえず新人とは言っても
一番下のペーペーだとしても
年齢は42歳で年上なのだ
『お前』っていう言い方をしている時点で
そう呼ばれている相手がブチ切れもせずにそれを受け入れて
『しょうがねぇヤツだな…』って思われてる時点で
32歳君は価値を落としている
仕事は多少知っているかもしれないけど先輩って言い張るただのバカに成り下がっている
性格が非常に悪い俺に言わせたら
それは逆におもしろい
新人さんはさて置いて
32歳君の物の言い方については
俺は何度も何度も何度も注意してきた
本当にそこで彼は損をしていると思っているからだ
直した方がイイと言っても
素直に返事が返ってきた試しはない
『しょうがねぇべ、俺バカなんだからよ!』
バカなのは知ってるから。嫌ってぐらい知ってるから直せって。
俺も新人さん同様、入社の順番で行けば32歳君の下という事になる
しかしあっという間に仕事の面では彼より責任のある場所を任されるようになった
彼はそれが最初面白くなかったのだ
面白くなくて不貞腐れていた
その時だって俺は言い聞かせるように話したけれど
どんな言葉を使っても彼のプライドはそれを受け付けず
『俺はバカだから仕方がない』で済ませる
今では俺に対して『俺の下なんだから』とは言わなくなった…
その姿も俺は可哀想だと感じている
…
俺が32歳君を追い越したように
新人さんにも追い越されたら実質は自分が一番のペーペーになる
それが嫌だから虚勢を張っている
『いちいちそんな事を質問しないでください!』
『分からなかったら聞けって言ってるじゃないですか!勝手に判断して失敗されると困る!』
であるとか
『メモを取って覚える仕事じゃないんで、見て覚えてください』
『なんでメモを取らなかったんですか?覚える気が無いんですか』
であるとか
…矛盾した注意の仕方で先輩を気取る
哀れに見える
俺もこの攻撃をずっと受けて来たから新人さんの気持ちも分かる
今は俺こんな事32歳君から言われなくなったけど
当時はそうとう精神的ダメージを受けたものだった
もしも言われたとしたら…
そうだね…今の俺だったら
『あっちゃ~俺ダメだねぇ~やっぱり32歳君じゃないと無理無理ぃぃ~』
って言って放棄してその仕事をやらせちゃうな
面倒くせぇし
…こういう悪い意味での強さも
新人さんは身に着けて
32歳君をピュンと軽く追い越して行けばいいんじゃないかと
何となく昨日は思った
俺も追い越される日が来ないように頑張らないとね
一日中スマホをいじって昼寝してる先輩って
普通にいないと思うし