夜明けの曳航

銀行総合職一期生、外交官配偶者等を経て大学の法学教員(ニューヨーク州弁護士でもある)に。古都の暮らしをエンジョイ中。

夢じゃないかと思うー夫婦別姓法案その他―

2009年10月02日 | profession
政権が変わるということは、こういうことなのかと興奮が抑えられない。

1.夫婦別姓法案

千葉景子法務大臣は、夫婦別姓法案を来年の国会に提出すると明言した。

1996年の最初の法案作成依頼、今までは、「家族の一体性を損ねる」などというおかしな理由(じゃあ、中国や韓国では家族の一体性はないのか。失礼だろう)で、保守系の議員その他の反動勢力によって、本会議に出すどころか、その手前の委員会のところでだめになってきた。

今年度前期に「現代社会とジェンダー」という、教養科目を担当したので、「夫婦別姓法案は、選択肢を増やすだけで、夫婦で同じ苗字を名乗りたい人はそれを選ぶこともできるのに、法案として提出すらできないのはおかしい。大学でいえば、必修科目Aを必ず履修しなければならない、というカリキュラムをAかBの選択必修にしようとしたら、「Aじゃなきゃおかしい」というようなものでしょう。」と説明したら多くの学生がうなずいていた。

そんな状況だから、生きているうちに法的に別姓にはなれないだろうと諦めていたが、なんと、来年には実現しそうだ。本当に夢のようである。

ただ、結婚した時に苗字を変えるときの苦労(銀行から保険からクレジットカードから全部変更するのだから。ああ、ニューヨーク弁護士会の登録名も変えなきゃ)をまた繰り返すと思うと面倒だが。

最近、夫と喧嘩する(主に、家事を9割やっている夫が「もっと手伝ってほしい」とか、「荷物の量に比例したローンや家賃の分担にしよう」といいだすというような原因)と、私の殺し文句は「じゃあ、私が結婚するときに、あなたの苗字に合わせたためにどんな苦労をしているのか、想像してみてよ。外国に出張の際もアポの名前とパスポートの名前が合わないからもめたりするし。不公平だから、今まで14年間は私があなたの苗字に合わせたのだから、ペーパー離婚して今度は私の苗字で届け出し直して、その後14年間は法律上は私の苗字になってもらいましょうか」であったのだが、もうそういう必要もなくなったわけだ。

2.女性差別撤廃条約の選択議定書批准
1979年に国連で採択され、1985年にやっと日本が批准した女性差別撤廃条約(そのために、①国籍法が改正されたり=それまでは国際結婚の場合、父親が日本人でないと日本国籍が取れなかった。1986年生まれのダルビッシュは、前年に国籍法が改正されていたので、帰化手続なしでWBCにでられたというわけ、②男女雇用機会均等法が施行されたり=それが1986年だったので、その年のリクルート活動から大会社の多くが女性総合職を初めて採用内定した。1987年卒業の私が銀行で総合職第一期生になったのはそのため、また、③男女家庭科共修が始まったのだ)。

1999年にこの条約の選択議定書が採択され、個人通報制度(自国の政府が救済してくれない場合に、個人が国連男女差別撤廃委員会に直接救済を求めることができる)ができたのに、日本はなかなか批准しないのが問題になっていた。同委員会には日本人の林陽子弁護士が入っていて、いろいろな国の個人からくる通報を処理する仕事に従事しておられるのに。ジェンダー法学会でもそのことについて報告された。)

この点も、千葉大臣は批准すると明言してくれた。

3.男女共同参画局の事務連絡
2006年1月31日、担当大臣が猪口さんだったときに、とんでもない事務連絡が都道府県と政令指定都市当てに出された。「ジェンダー・フリー」という言葉を使うな、というお達しである。

それは当時吹き荒れていたバックラッシュを助長し、松山市議会などは、2007年12月17日に「松山市はジェンダー学あるいは女性学の学習あるいは研究を奨励しない」という、憲法で保障された学問の自由に反するような請願が採択したりした。
(私も所属するジェンダー法学会が「憂慮する声明」を出した)

上記の事務連絡については2006年6月5日に、福島みずほ大臣もそのひとりである(他には上野千鶴子等)「ジェンダー平等社会の実現を求める有志」が考え直すよう要望書を猪口(当時)大臣に出している。

福島大臣は、ジェンダー法関係の著書も多く、2004年のジェンダー法学会の大会にも来てくれ、普通は政治家はちょっと来てすぐ帰るのに、最後までいて、「トラフィッキングの禁止について議員立法を考えている」と積極的な発言をしており、本当に頼もしい。

本ブログにもそのことは書いた。

http://blog.goo.ne.jp/otowa1962/e/257dc1476b0e20bea0512328d99682ec

早急にこの忌々しい事務連絡を撤回するよう、男女共同参画局にさっそく要望メールを送った。



私は大学で法学を教えている者で、ジェンダー法学会にも所属しています。福島大臣は、2004年の研究大会にもわざわざお越しくださり、トラフィッキングに関する議員立法をするという頼もしい発言をされていたことをよく覚えております。

大学・学部も福島大臣の後輩で、14年間銀行で総合職一期生として苦労し、また、1998年には「少子化を考える有識者会議」の委員もしておりました。

ぜひお願いしたいことがあります。大臣もよくご存じの2006年1月31日に男女共同参画局から発布された「ジェンダー・フリー」についてという事務連絡を早急に撤回していただきたいということです。その中に「ジェンダー・フリー」という言葉を使うなという趣旨のことが書いてあり、この件については、大臣もその一人として有志の皆さんが、猪口(当時)大臣に同年6月5日に見直しを要望されています。この事務連絡のために、バックラッシュ現象が激化し、松山市議会などは、「松山市は女性学の研究を奨励しない」という請願を採択したほどです。ぜひとも、この問題の多い「事務連絡」を男女共同参画局として早急に撤回するよう、お願い申しあげます。

また、千葉大臣も就任会見で触れておられた女性差別撤廃条約の選択議定書の批准も早急な手当てをお願い申し上げます。

私は生きている間には実現しないだろうなと諦めていたような男女平等に関する様々な法律問題が、大臣と千葉大臣のおかげで解決する可能性が高くなり、大変うれしく頼もしく期待しております。

なお、男女共同参画局のHPの意見投稿欄の職業の選択肢に「主婦」はあっても「主夫」はなかったので、不適切だという指摘もしたが、すぐに以下のような回答が来た。


「男女共同参画局HP担当です。
この度は、ご意見をありがとうございました。

ご指摘の点は、まさにそのとおりでございますので、
先ほど、職業欄は選択式ではなく、フリーテキスト入力に
切り替えをいたしました。
(内閣府の意見登録システムは、業者提供の既製
アプリケーションを利用しているため、職業欄プルダウンメニュー
の項目は固定となっております。)

今後とも、当局ウェブサイトを宜しくお願い申し上げます。


男女共同参画局総務課HP担当


> 内閣府共通 意見等登録システム
>
> >
> ご意見、ご感想:まず、第一に、下記の職業欄ですが、「主婦」という表示はお
かしいです。男女共同参画、ワークライフバランスの考え方なら、男が
> 家事に専念しても問題ないわけで、主婦(夫)となっていないと、同じ、配偶者
や子供のために家事に専念するのに男というだけでその他にしなければ
> ならないのはおかしいです。
> それこそ男女の伝統的役割分担を前提にしており、男女共同参画局の設定した分
類としてきわめて不適切です。早急に直してください。」
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