夜明けの曳航

銀行総合職一期生、外交官配偶者等を経て大学の法学教員(ニューヨーク州弁護士でもある)に。古都の暮らしをエンジョイ中。

ええにょぼ(ネタばれ注意)

2004年11月09日 | 演劇
今、NHKの衛星2で毎朝「ええにょぼ」という、1993年4月から9月まで放送した朝ドラの再放送をしている。

これは思い出のあるドラマだ。
1993年8月初めに、アメリカ、イギリスへの留学から帰国した時、やっていたドラマだから。
私は海外審査部に配属され、ロンドン支店等から上がってくる融資案件の審査を担当していたので、時差を考慮し、9時50分出勤だったから、このドラマを見てから寮を出ていた。

2年ぶりの日本は何もかも変わっていた。しかし、バブルが崩壊しきっていたという暗い面だけでなく、いわゆる55年体制が崩壊し、細川内閣誕生という画期的なことがあり、日本もいい方向に変わるのではないか、と期待していたのだ。

朝ドラは従来は、女性の忍従や苦労の話、しかも誰かの妻という立場(良くても夫とともに苦労するというパターン)での苦労という、ジェンダー的には旧弊なものが多かったのに、この朝ドラでは、主人公が医師でしかも新婚早々単身赴任するという設定なので、「時代も変わった。働く女性が生きやすくなるのだ」と喜んでいたのだ。
結局壊れかけた夫婦仲を修復するために病院を辞めて商社員の夫の海外転勤についていくところで終わるというゆるーいストーリーとはいえ、時代の変化を象徴すると思っていた。
(私が大人になってからリアルタイムで見た朝ドラはこの作品だけ。)

反面、ロースクールへの留学という人生の目標を一つクリアして、「次は結婚」と思い、結婚願望の強い時期だったから、中山美穂の歌う主題歌「幸せになるために」を切ない思いで聴いたりもしていた(この歌は今でも結婚式で歌ったりする)。

11年たって、自分がこの主人公と同じように都会に夫を残して地方に単身赴任する立場になったことをつくづく面白いめぐり合わせと思う。
慣れない仕事へのとまどいや、週末になると夫の元に飛んで帰る描写も、今は自分と重ね合わせてみてしまう。

ところで、主役を演じた戸田菜穂は、あまり演技がうまいとは言えず、とくに色気や情感がなく、生き残ることはできないのではないかと思っていた(その後、民放で主演した『スチュワーデスの恋人』を見て「早晩消えるだろう」と確信した。これは、『スチュワーデス物語』の路線を継ぐ大映ドラマだが、恋人のパイロット(宅麻伸)が失踪した妻の嫌がらせに悩まされるという設定が、昔田宮二郎が主演した『白い滑走路』(ジェームス三木脚本)に似ている。
彼が主演した『白い影』『白い巨塔』『高原へいらっしゃい』が最近相次いでリメークされたのだから、これもリメークか再放送してほしい。)

徹子の部屋に出たのを見たら、広島の大きな歯科病院の娘で、美人のお母さんが、小さい頃から彼女の工作作品やテストを全て保存しているという、絵に描いたようなお嬢様だと知った。

でも、11年たった今でも、主役こそ張らないが、準主役級でちゃんと生き残っている。
ショムニの秘書杉田美園役で、テーブルの上で薔薇をくわえてフラメンコを踊るというすごいシーンを衒いもなくやった時点で非常に見直したのだが、ここで役者として一皮剥けたのが生き残りの転機だったのでは、と想像する。

朝ドラのヒロイン女優も玉石混交で、山口智子なんかも、『同級生』で、安田成美演じる名取ちなみの親友役程度だったし、鎌田敏夫が1年の長丁場に挑戦した『過ぎし日のセレナーデ』でも、古谷一行と高橋恵子の娘役でほとんど出番はなかったし、このまま消えるに違いないと思った。『もう誰も愛さない』では役を選ぶ余裕もないのか、と思ったのが、いつのまにか「生き様がかっこいい女優NO1」になっていたのには驚いた。
(泣かず飛ばずで、『太陽にほえろ』のお茶くみ以来、映画『獄門島』で殺される双子の役や、大原麗子主演の『隣の女』に妹役で出ていたくらいの記憶しかないのに、88年の『抱きしめたい』で久々にドラマに出たらトレンディ女優NO1になった浅野ゆう子ほどの詐欺感はないが。でも、この作品は、浅野温子演じる麻子の魅力的な人間性と女の友情を見事に描いた出色のドラマだった。三谷幸喜も尊敬しているという松原敏春氏に合掌。)

たしかに、山口の主演した『29歳のクリスマス』はすばらしい作品だと思うけど、演技でいえば同じ鎌田脚本の『ニューヨーク恋物語』の桜田淳子ほどではない。(実は、桜田が、仕事のために私生活を犠牲にする決断をするときNYの橋の上で黙々とホットドッグを食べるシーンと、山口が陸橋の上で煙草を吸うシーンは重なるのだが)桜田の演技は、キャリアウーマンの哀しみとそれを引き受ける潔さを余すことなく伝えるすばらしい演技で、アイドル出身とは思えない英語の科白の発音とともにドラマ史に残るものと思っている。女優復帰してくれないかな)
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 骨は拾ってやる | トップ | 銀嶺祭・点字サークル »
最新の画像もっと見る

演劇」カテゴリの最新記事