夜明けの曳航

銀行総合職一期生、外交官配偶者等を経て大学の法学教員(ニューヨーク州弁護士でもある)に。古都の暮らしをエンジョイ中。

今、屈原の気持ち

2004年10月07日 | profession

今度こそ、期間限定になるだろうけど、義憤にかられて以下記す。

裁判例・通説によると、大学と学生の間に締結される在学契約は、準委任契約をその中核とする無名契約である。
我々教員は、大学の被用者として、直接学生に対して在学契約上の債務を適正に履行することを義務付けられているのである。
大学、すなわち教員が負う義務の主なものは、いうまでもなく教育サービスの提供であるが、その中でも、講義を行い、学生の成績を適正に評価し、単位を認定することが最も重要な義務であることは争う余地がない。

成績評価については、基準の透明化・厳密化の要請が叫ばれており、私は大学教師になって1年余だが、前期に担当した契約法では、期末試験だけでなく、講義で毎回小テストを行い、小テストの採点もして全て返却し、厳密な採点基準を作成して、何十時間もかけて成績評価をした。
前期は7月末に終了したが、8月初めの成績提出締め切り前は大変だった。
過労で入院したことは先にご報告したとおり。

前期の成績は学生に9月30日に発表され、今週から後期が始まったが、学生、とくに4年生に非常に迷惑をかける事態が発生していることを昨日知って愕然とした。
ある教授(仮にX氏としよう)が、前期に彼が担当した○○法の採点をいまだにしていないため、その成績だけがまだ出ていないというのである。
成績表には、「○○法については後日」と注記されているとのこと。
そのために、学生は履修計画が立てられないし、とくに前期までに単位をとってしまい、後期は就職活動に専念しようとしていた4年生等が、保険のために後期も授業をとらなければならなくなったりして、大変な迷惑を被っている。

先に書いたとおり、これは重大な債務不履行である。
銀行員出身の私には「顧客に迷惑をかけるなんて最低のことで、プロとしてどんないいわけも通じない」としか思えない。

私が「もう黙っていられない」と思ったのは、実はX氏がこのようなことをするのは、私が直接知るだけでも、初めてではないからだ。さらに、私が赴任する前も、同様のことがあったらしい(しかも卒業認定に関わることだったらしい)が、未確認なので、ここでは私も当事者になっている件についてのみ記す。

昨年の後期に私は彼ともう一人の教員W氏と3人で、ある講義を担当していた。
3人がそれぞれぞれ違う課題で(3人の専門は全く違うため)レポートを課して、その結果を総合して最終的な成績を決めることになっていたが、X氏は多忙を理由に結局自分の分の採点を放棄したため、私とW氏の分のレポートだけで最終成績を決めざるをえなかった。
しかも、X氏は、学務係に提出させた自分の分のレポートを、今年の夏まで自分の研究室にもっていきもせず、そのまま学務係に置きっぱなしにしていたのである。(私は毎週2回契約法の小テストを回収する度に、2月締め切りのX氏宛てのレポートの束がそのままになっているのを目撃している)

国立大学は今年から法人化され、「学生に対して良質な教育サービスを提供する」責務の重要性、そしてそれが契約上の債務であるという意識は以前より高まっているし、厳しくなる第三者評価、そして少子化をsurviveするためにも、このようなことはあってはならないことと思う。ましてやX氏が他の教員に範を示さなければならない立場にいるのだから尚更である。

私は大学の現状を憂い、法科大学院の将来を思って、敢えてこういう文書を書いた。
刑法230条の2第3項では公務員に関することで事実であれば名誉毀損は成立しない。
もう国家公務員ではないとしても、第1項で公共の利害に関する事実で公益目的で書いた事実なら同様である。

問題があれば、「仲間の悪口をいうのはよくない」などという情緒的な批判でなく、法学者らしく理論で反駁してほしい。

それでも立場が決定的に悪くなることは確かだろう。
汨羅の淵に私の諫死体が浮かんだら粽でも投げてやってほしい。

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