相撲取りの野球賭博が世間をにぎわせている。
シゴキで死亡,薬物,八百長疑惑,一般人を殴ってクビ,ヤクザに特等席提供ときて,今度は野球賭博。
野球賭博をやっていた人が29人で,その他,花札,賭けマージャン,賭けゴルフなどの小博打をやっていたのが65人という報道があった。
野球賭博という胴元が完全にヤクザと思われる博打と,賭けゴルフを一緒にするなと思うが,賭けゴルフ,つまりニギリは犯罪なのか。
刑法185条はこのように規定する。
「賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」
よく問題となるのはただし書きの「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」である。この場合は犯罪ではない。
しかし,判例は金銭は一時の娯楽に供する物には当たらないとする立場を取っている(最判昭和23年10月7日刑集2巻11号1289頁)。
この判例の事案は,300円を賭けたというものである。被告人の上告趣意によれば,うどん1杯が50円,ピース1箱が60円という時代だったそうだから,300円というのは,多く見ても2000円か3000円ということになるだろう。
2000円か3000円であっても,バクチで賭けたら,一時の娯楽に供する物ではないとするのである。
しかし,これでは,昼飯を賭けるニギリなら問題ないが,現金を賭けるニギリの場合,1点100円でも賭博だということになってしまう。
例えば,私が同伴者にしつこく「ニギろう,ニギろう」という。「1点10円でもいいからニギろう」という。同伴者は根負けして「いいよ,じゃ,タテヨコ1点10円ね」とニギってくれて,ラウンドを始めたとする。賭博罪はこの時点で既遂に達する。
ラウンド後,私が5点負けて,50円を精算をして,その足で私は警察に行き,自首する。
同伴者,逮捕。
おかしいですよね。
でも,理論上は正しいと思う。
現実には逮捕はされないだろうけど,理論上は私にも同伴者にも賭博が成立するのである。
しかし,いかにもおかしい。1点10円で賭博とは,いかにもおかしい。
そこで,私は,現金であっても額が低い場合は「一時の娯楽に供する物」とすべきという現在の有力的見解を支持したい。
では,いくらまでなら「額が低い」というべきか。
ここで私はゴルフ規則を持ち出したい。
アマチュア資格規則の3-2aである。
「アマチュアゴルファーは、統轄団体により規定されている小売価格の限度額を超える賞品(表象的賞品を除く)や賞品券を受け取ってはならない。この限度額は、ホールインワン賞を除き(規則3-2b参照)、アマチュアゴルファーが1競技、または1つのシリーズ競技で受け取る賞品や賞品券の合計額に対し適用する。
日本国内における限度額は75,000円(ただし、ジュニア競技については50,000円)とする。 」
アマチュア規則では賞品や賞品券を換金してはいけないとされているが(規則3-3),75,000円相当までなら貰ってもいいとされている。
ニギリもこれに準拠してはどうだろうか。
1ラウンドのニギリ額が7万5000円というのは,ちょっと高すぎるように思うが,1競技で同等の賞品をもらっても「アマチュアである」と言えるわけだ。「一時の娯楽に供する物」としても不当とまでは言えないだろう。
ちょっと無理がある理屈にも思えるけれども。