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2012年、大阪で成立した教育関連条例の具体化と、「君が代」不起立処分に反対する運動の交流ブログ

大阪市教育振興基本計画で一変する大阪市の教育

2013-06-19 21:49:46 | 大阪市:教育振興基本計画
大阪市教育振興基本計画で一変する大阪市の教育
「運営に関する計画」を通した数値目標の強制

 この3月、大阪市教育振興基本計画が橋下市長の政治介入の産物として決定され、そこでは、全国学テの結果を指標とする数値目標のオンパレードになりました。いよいよこの4月から、各学校では、昨年市議会で可決された大阪市教育行政基本条例と大阪市立学校活性化条例に基づいて「基本計画」を踏まえた「運営に関する計画」の作成を強制される段階に入りました。

「運営に関する計画」は、各学校に強制された教育振興基本計画の「実行計画書」

 校長は「教育振興基本計画」に基づいて5月上旬までに「運営に関する計画」(総括シート、目標別シート)の作成が義務付けられました。そこには、中期目標(おおむね3年以内)と年度目標(当該年度の重点目標)、「年度目標を達成するための取組内容」、「取組の進捗状況を測るための指標」を記載することになっています。
 市教委は、記載の留意事項として、中期目標・年度目標や指標が「定期的・客観的なデータにより検証できる」ようになっていること、それが「教育振興基本計画」のどの部分に関連しているかを明記することが求めています。

 しかも、わざざわ目標や指標の例を提示しています。これを読めば、全ての教育目標が全国学テや大阪市独自の学テ(「しんだん」テスト)、全国体力・運動能力テスト、「各学校におけるいじめ・問題行動調査」、「授業アンケート」、「学校アンケート」に表される数値データの向上にがんじがらめに縛られていることがわかります。

*ホットライン大阪HP参照
http://www7b.biglobe.ne.jp/~hotline-osaka/sihyou.pdf

 さらに大阪市教委は、各学校から提出させた「運営に関する計画」を何度も突き返し、「数値目標の記載が不十分」「これでは教育委員会議で却下される」と変更を求めました。
 その結果、各学校の中期・年度目標は恐ろしいまでに数値目標が並んでいます。学力から心の中、家庭での生活まで全てを数値に支配されることになります。ここの紹介するのはほんの一部で、ほぼ全ての学校で同様の数値目標が強制されています。大阪市内の学校の教育目標がどうなっているか知りたい方は、大阪市小中学校HPをご覧ください。すでに「運営に関する計画」を掲載している学校が多くあります。

◆小学校
◇H27年度3学期における全学年の通知表(絶対評価3段階)において、全教科のC評定の割合を6%以下にする。かつ、国語、算数のA評定の割合を40%以上にする。
◇H27年度末の児童アンケート「休み時間、外で遊んでいる」のAの割合を90%以上にする。
◇H27年度末の児童アンケート「給食は残さず食べている」のDの割合を0にする。
◇毎日の遅刻指導における遅刻者と遅刻理由を調べ,前期(4月~9月)より後期(10月~2月)の遅刻者数を減少させる。
◇平成27 年度「国語のしんだん」「算数のしんだん」の全ての学年の平均正答率を大阪市平均以上にする。
◇今年度の学習理解度診断における通過率を、いずれの学年も70%以上にする。
◇各教科や領域指導でICTを活用した授業を月4回以上にする。
◇H27年度末の児童アンケート「早寝早起きをしている」のAの割合を90%以上にする。

◆中学校
◇平成26年度の全国学力・学習状況調査における無回答率を平成24年度より3ポイント以上減少させる。
◇平成26年度の全国学力・学習状況調査における平均正答率を3ポイント以上向上させる。
◇本年度の学習理解度到達診断における正答率5割以上の生徒の割合を、前年度より向上させる。
◇平成27年度の全国学力・学習状況調査における無回答率を10%以内にする。
◇平成27年度末の生徒アンケートにおける「授業はわかりやすい」と答える生徒の割合を85%以上にする。
◇平成27年度末の生徒アンケートにおける「学校に行くのが楽しい」と答える生徒の割合を90%以上にする。
◇本年度の本校アンケート調査で、各教科授業が「楽しい」「わかりやすい」の項目について、「よくあてはまる」を3%以上増加させる。
◇本年度の本校アンケート調査で、次の各項目について「よくあてはまる」と回答する生徒の割合を、平成24年度より3%以上増加させる。
・ 「人を思いやる心や社会の常識が身についた」
・ 「あいさつ、言葉遣い、服装などは正しくできている」
・ 「自転車通学、予鈴、本鈴遅刻などはしていない」
・ 「学校や社会のルールを守ることができている」
・ 「学校は落ち着いている」
・ 「○○中学校の生徒であることを誇りに思う」
◇遅刻0の日を年間85%以上にする。


全国学テ学校別正答率の公表圧力 

 しかし、これだけではありません。大阪市教委は、各学校に「運営に関する計画」を提出する際に、全国学テ・全国体力テの学校別結果、大阪市教委が学期に1回行うことを決めた「各学校におけるいじめ・問題行動調査」結果を添付するように求めています。
 さらに、大阪市教委は、各学校に対して「運営に関する計画」のHP等で公表するよう指示しています。その際、「各学校におけるいじめ・問題行動調査」結果のデータ部分は非公表としましたが、全国学テ・全国体力テの学校別結果については、校長が学校協議会の意見を聞いて公表・非公表を決めることとしています。これは、いくつかの学校で公表されていけば、雪崩を打って公表へと進むことは間違いありません。事実上の全校学テの学校別結果の公表に踏み出すことになります。

「校長経営戦略予算」の獲得競争を強いられる校長

 今年度から大阪市では11名の民間人校長が就任し、来年度には35名を公募するとしています。実に新規校長枠の半数以上です。大阪市立学校の校長全体でも約1割が民間人校長となり、全国的にも極めて異例です。しかも来年度の選考では、応募レポートで「学校選択制のもとで、選ばれる学校づくりについて」「学力向上のためのマネジメントについて」具体的に書かせることになっており、橋下「教育改革」の先導者を意図的に集めようとしています。
 今年度から学級数に応じて割り当てられる予算(1校平均50万円)に加えて「校長経営戦略予算」として1校上限500万円の予算化が決定されました。校長たちは500万円の予算を取るために、目に見える成果(土曜授業の回数増加、英語授業の推進、ICT授業、等々)を求める「学校マネジメント」に必死になっています。校長からの予算要求に対して大阪市教委は、内部に第3者機関を設け予算配分の査定をおこなうとなっています。そこには子どもの実態などは全くありません。校長たちは、民間人校長のスタンドプレーに驚愕しながらも、それに追随し、それぞれ競わされ、予算確保に邁進させられています。
 来年度から学校選択制が11区で実施され、翌年以降も橋下市長の意向を受け実施の方向で検討を始めています。学校選択制を呼び水にして、ますます学校の差別化・序列化が進もうとしています。

評価・育成システムが橋下「教育改革」推進教員を作り上げる

 教員は、評価・育成システムによって、校長の教育目標にそって自己目標を立てるように強制されます。今年度から市教委は生徒・保護者からの「授業アンケート」を実施し、評価・育成システムの評価に組み込み、低評価者を意図的に作りだそうとしています。評価結果は、教員の給与に反映されるだけなく、免職も視野に入れた指導改善研修に直結します。
 橋下市長が主導した大阪市教育基本振興計画→各学校の「運営に関する計画」→個々の教員の自己目標---この流れの中で評価・育成システムが絶大なる圧力となり、教員を橋下「教育改革」の実行者に仕立て上げていきます。
 また、今年度から大阪市教委は「がんばる先生支援」政策を始め、教員個人やグループに50万円~100万円の予算配当されることになりました。市教委の言う「がんばる先生」とは、学力向上や部活等で成果を上げることであり、英語教育やICT教育等の橋下「教育改革」を積極的に進めることです。まさに、桜宮高校「体罰」事件の背景にあった「教員に特別な意識」を植え付ける手法を続けることになるのではないでしょうか。

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