大阪教育条例NO!

2012年、大阪で成立した教育関連条例の具体化と、「君が代」不起立処分に反対する運動の交流ブログ

安倍「教育破壊」を先取りする橋下市長主導の大阪市の教育の現状(2)

2014-01-10 21:17:32 | 大阪市の橋下教育の現状
第2回 橋下市長による重層的な教育支配の制度化

 安倍政権は、通常国会で首長に教育権限を持たせる教育委員会制度の改悪を推し進めようよしています。それは、橋下大阪市長が大阪市の教育現場で行っていることの全国化です。
 橋下市長が進める教育介入は、文字通り重層的なものとなっています。まずは、教育振興基本計画を市長主導で策定し、教育行政基本条例の前文で示されている「基本的な目標」の達成に向けて、2013年度から3年間で集中的に取り組むべき「教育施策の概要」と総合的・計画的な「施策推進のための留意事項」を定め、その予算化まで一手に握りました。しかも、それを実行する教育委員会の教育委員を公募により入れ替えていきました。これによって橋下市長と教育委員会の矛盾と軋轢は全くなくなり、橋下市長の意向が学校現場にストレートに反映されるようになっています。しかも、大阪市独自の政策として、橋下市長が公募で選んだ区長に教育行政の権限を持たせ、各区で橋下「教育」の推進競争を行わせています。
 現在、学校のことが学校で決められなくなっています。子どもたちの現状と地域の持ち味を生かした教育を進めることはできなくなっています。すべてが、ある日は教育委員会から、またある日は区長から唐突に教育政策が提起され、教職員はそれをただただ遂行するロボットのようになりつつあります。
 まずは、大阪市でのその仕組みを明らかにしたいと思います。

首長の直接的介入=教育方針の根幹が首長主導でつくられる

 橋下市長は、2012年5月「大阪市教育行政基本条例」を大阪市議会で可決させました。そこには、「教育振興基本計画は、市長が教育委員会と協議して案を作成し、市会の議決を経て決定します。」とあり、橋下市長が任命した人物が半数を占める教育振興基本計画有識者会議が組織され「教育進行基本計画案」がつくられました。2013年3月には、それが大阪市議会で可決されています。
 さらには、2013年3月に公正な職務の執行の確保のための市長の調査権限等に関する条例が可決され、市長が、「人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するために事実関係を明らかにすることが必要であると認めるとき」と「住民の福祉を確保するため必要があると認めるとき」に教育委員会等に「調査権限を行使」できるとしました。
 これらの大阪市議会で成立した2つの条例は、現在、文科省が進める教育委員会改悪(首長を教育行政の執行機関として「大綱的な方針」を策定)の方向性と全く同じであり、市長に絶大な教育権限を与えました。
 
◇大阪市教育振興基本計画「素案」を検証する①
 ~橋下市長とブレーンが牛耳る「有識者会議」~
http://blog.goo.ne.jp/osaka-edu/e/d77177147053ce3b3025af550e07fd67

◇大阪市教育振興基本計画「素案」を検証する②
「基本となる考え方」は、大阪維新提案「教育基本条例」とそっくり
http://blog.goo.ne.jp/osaka-edu/e/3684374366b235e6d14b019705a0f643

◇大阪市教育振興基本計画「素案」を検証する③
「具体的な目標」では、全国学テを基準にした数値目標のオンパレード
http://blog.goo.ne.jp/osaka-edu/e/3797f5994f1f5349f1fbb3522f97ac38

◇大阪市教育振興基本計画「素案」を検証する④
ICT教育って、本当に必要?
http://blog.goo.ne.jp/osaka-edu/e/25e8a4b2cc426ecc22c2ed497f6232ae

◇大阪市教育振興基本計画「素案」を検証する⑤
学校選択制の導入と学校統廃合の加速
http://blog.goo.ne.jp/osaka-edu/e/e350280036151f923b229778d0ecc7cf

◇大阪市教育振興基本計画「素案」を検証する⑥
「伸ばす子はしっかり伸ばす」教育と「習熟の遅れを取り戻すための特別学校」の設置がもたらすもの
http://blog.goo.ne.jp/osaka-edu/e/65bb2a87f1503f386b29533b6ff6b62d

◇大阪市教育振興基本計画「素案」を検証する⑦
いじめは、いじめた子の厳罰化で解決するのか?
http://blog.goo.ne.jp/osaka-edu/e/6fee344a15286864d8a2344a6cf9b240

 さらには、2014年1月に入り、橋下大阪市長と市教委の合同の「教育改革推進本部」の設置も決めました。そこでは、教育振興実行計画の具体化について、橋下市長が直接「指示」するこができるものです。教育委員会の独立性は、完全に失われてしまいます。

橋下市長と市教委 合同で「教育改革推進本部」設置へ
2014.1.10 13:13 産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/140110/waf14011013150017-n1.htm

 教育行政の改革を目指す大阪市の橋下徹市長と市教委が合同で「教育改革推進本部」を設置する方針を固めたことが10日、分かった。今年度中に1回目の会合を開く予定。
 同本部は橋下市長や教育委員のほか、市と市教委の幹部で構成される見通し。
 市立桜宮高校の体罰問題を受けて市と市教委が共同設置した「教育委員会のあり方検討会議」が昨年12月、橋下市長と教育委員に改革案を提出。同本部では改革案で示された区長の校長人事への関与や、教育行政の指揮監督を首長が行うことなどの実現に向けて、必要な市と市教委の態勢づくりや、国への要望の方法などを検討する。


教育委員会も橋下市長による公募教育委員の拡大によって支配

 橋下市長は、大阪市教育委員の任期が切れるごとに、公募により教育委員を任命してきました。すでに6名中3名が公募委員となっており、どの委員もプチ橋下市長のような振る舞いをしています。
 以下、現在の大阪市教育委員の顔ぶれを紹介しますが、橋下市長が公募で任命した大森委員、西村委員、林委員が議論を引っ張り、「つくる会」系に近い高尾委員がそれに同調して、すべてが決まっていく構図があります。大阪市の教育が橋下市長就任から2年、教育振興基本計画開始後1年弱で激変しているのも、橋下市長の強引な介入があっただけでなく、教育委員を入れ替えることによって市教委内部から思い描く政策を推し進めていることによります。 

<大阪市教育委員会教育委員の顔ぶれ>

◇大森不二雄委員長(公募)
◇西村和雄委員(公募)
*この2名は「教育が変われば、日本が変わる教育政策ネットワーク」を立ち上げ、代表幹事になっています。そこでは、「グローバル社会に対応した教育」や教育委員会の廃止、全国学テの学校別公表等々の政策を提言しています。特定の政策集団から教育委員を任命するなど、恣意的としか思えません。大阪市の教育は、さながら「教育政策ネットワーク」の実験場のようになっています。  
*教育が変われば、日本が変わる教育政策ネットワーク
http://www.geocities.jp/education_policy2008/index.html

◇林園美委員(公募)
*日本公文教育研究会勤務。公教育に民間を参入させる呼び水になる可能性があります。

◇高尾元久委員長職務代理者
*育鵬社版歴史公民教科書を事実上編集している「日本教育再生機構」の機関誌「教育再生」に何度も投稿しています。
http://blog.goo.ne.jp/osaka-edu/d/20121221

◇長谷川惠一委員
*平松市長時代に教育委員に任命されており、橋下教育にたびたび躊躇を表明していましたが、2014年3月30日で任期切れ。またまた公募委員に替えられてゆくのでしょう。

◇永井哲郎教育長
*教育委員会の事務方の代表。大阪府教委の中原教育長とは違い、教育委員会でほとんど意見を述べず、あくまでも調整役、聞き役に徹しています。

橋下市長が選んだ公募区長を通じた介入~学校選択制の強制から教育内容全般への介入

 ここが大阪市教委の全国にはない独自性だろうと思われます。まず、橋下市長は公募区長を教育委員会の「区担当理事」を兼務をさせることから始めました。そこでは中学校での学校給食と学校選択制の導入をメーン政策に据え、各区長を競わせていました。しかし、2013年に入り、区長の権限を拡大する動きが急速に進んでいます。
 2013年12月「教育委員会のあり方検討会議」が報告書をまとめました。そこでは、「区長が校長人事に意見を述べる」制度、区における「教育改革の進捗状況や課題を協議する仕組み」の構築、「区長と区内各校長との連絡調整のための会議」の設置等、区長が区内の校長人事や教育内容に深く関わる制度を検討対象にあげました。

*教育委員会のあり方検討会議 報告書 2013年12月
http://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000227906.html
 
次回にはこのような教育支配の中で、どのような教育が行われてきているのか、明らかにしたいと思います。

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