(実際あの女性には力があるとは思うか?)
もしも……であるもしもあの美女になんらかの『力』が発言してる……となったらさすがの野々野足軽だって油断はできなくなる。これまでどこまで言っても野々野足軽に余裕があったのは、その『力」による裏付けである。
男性だから……という、だけのうっすい理由ではない。基本的に肉体的に男の方が女よりも身体的に有利である……なんてだけのはなしではなかったのだ。
野々野足軽には『力』という誰にもない第三の力があるからこそ、なにがあったとしてもなんとかなる……という想いがあった。でももしも……あのおかしな美女に何かあるのなら……その優位性が揺らぐことになる。
本当なら自分自身で確かめたいし、それが道理だとも野々野足軽だって思ってる。でもその何かを野々野足軽は感じる事は出来ない。
だからこうやってアースに訪ねてる。アースはこの星の……地球の化身である。この世界にある力の全ての根源と繋がってる……
といっても可笑しくないのがアースだ。
だからアースなら……と思った。
『私には変な力は感じませんね』
(おい)
お前が言ったんじゃん!! っていいたい野々野足軽である。さんざん不安になるような事を言ったのはアースである。けどそのアースも別に変な力は感じないらしい。おい……だよ。なんだよさっきの不安。
『ですが、その心は変質してますよ。それが邪悪かはどうかとして……』
(真っ黒になってると思うが?)
『私には別に人としての正義の定理なんてありませんから。私は命を摘み取ろうと何をしようと、それを邪悪なんて思ってません。必要なら命を奪うのは生命の摂理なので』
(お前は……そんなやつだったな)
そうだっだ。アースは別に生き死にに何かを見出すやつじゃない。アースが言うように、それは生命体として普通のことだから。そこに善悪はない。なにせ自然の動物たちは腹がっ減ったら獲物を殺すだろう。それだけだ。
なのでアースが考える生物の生き死にはその程度……でしかない。それに野々野足軽だって、普通の心の状態をしってるわけじゃない。
普段から人の心は輝いてるのか? と言われたら野々野足軽にもわかんない。けどこんなのはおかしい……と思うからあの美女の心はおかしいと野々野足軽は思った。
でもアースにはそれも別におかしくはないらしい。なにせ心には特定形なんてない……輝いてるのが普通ではないから、あの邪悪に染まったような心さえもアースには普通でしかなかったのかもしれない。
(変質してるっていうのは?)
『彼女の心は曖昧な存在に寄生されてます』
(寄生?)
寄生虫とかか? 心に? と思う野々野足軽。けどそうじゃなかった。もっと科学の外のいる存在の名前をアースはいった。
『悪魔……といえばわかりますか?』