「お兄さん、どうだい? そのちょっとへいぼ……いやさえな――ある意味普通な顔をこの仮面で変えてみないかい?」
スタスタスタ――
「この仮面はなんとアフリカの奥地の大地の川に流れる一部からさらに派生した地底人信仰をしてる人たちの作品でね。なんと彼らの間には今も尚、地底人とのコンタクトがとられてて、これはなんと! その地底人から渡された貴重な一品なんだよ。
いやーこれだけでお兄さん、興味わいちゃって来たんじゃない?」
スタスタスタ――
「なるほどね。効能……それを言わないと話にならないってことだね。わかる、わかるよ。やっぱりどんなお金。それが例え一円でも一ルピーでも払うとなれば価値を見出したい! いよ、経済観念しっかりしてる!」
スタスタスタ――
「はいはい、わかったわかった。この仮面の効果はなんと! ズバリ理想の顔にしてくれるって事なんだ!! うっひょー!! 最高じゃんか!!」
スタスタスタ――
「今ならなんとそんな理想の顔になれるこの仮面がなんと!! 本当なら一億? 一千万? いやいやもっと値引きしてなんと50万円!! ええ高いって? さっすがお兄さん。うまいねうまいね。
そこまで言われたら仕方ない。これは特別だよ。本当に特別、今この瞬間の出会いに感謝。
感謝記念ってことでなんと今なら大大大特価!! 一万円だあああああああああ!? うおおおおおおおおおおおおお!!」
スタスタス――ピタ――
「お兄さん、やっと俺たち分かり合えたんだね」
そういって手を差し出してくる褐色の青年。野々野足軽はその人ににっこりとした笑顔を返す。けどそのこめかみがピクピク動いてるのは気のせいなのか……そうじゃないのか。
「いや、本当にすごいでね。本当ならですけど。一回実演してもらっていいですか?」
「あーちょ、それはできないんだよね。なにせこれって神聖でさ。しかも理想の顔になれるの一回! 一回きりなんだ」
さっきまで激押ししてた癖に自分やるのは嫌なのか? と思う野々野足軽である。けど野々野足軽は笑顔を絶やさずにこういった。
「ならこうしましょう。僕が一万円払います。それでつけてみてください」
「え? マジ?」
野々野足軽の提案に驚く褐色の青年。そしてすぐに考え出す。
「本当に本当に出す?」
「はい、ほら一万円です」
そういって野々野足軽は一万円を出した。それを彼に渡した。
「おおー、けど本当に俺が使っていいの? 一万円無駄になるよ?」
「本物ならもう一万円払ってもいいくらいの価値がありますよ」
「なるほど。さっすがお兄さん、あんた将来大物になるよ!」
そういって「では」といって褐色の青年は怪しげな仮面を顔にかぶせた。
「うわっくっせ」
「はい?」
「いや、なんでも……」
なんか聞こえたが、野々野足軽も聞こえなかったふりをする。
「いやーちょっと時間かかるみたい――ってちょ、お兄さん!?」
「いやいや、もっとちゃんとかぶらないとでしょ? なにせ理想の顔になるんだから。とりあえず目を閉じて思い描いてくださいよ」
そういって野々野足軽は半ば強引に褐色の青年の目を閉じさせる。仮面の上から手で押さえつけてる野々野足軽はこの間に、その仮面に力を流し込む。
「俺の神経逆撫でしたことを後悔してろ」
「ん? なんかいった?」
「いえいえ、なんか仮面がぼこぼこなってますよ? なにか感じますか?」
「うお!? 確かになんか熱いかも!? 大丈夫かこれ?」
「きっと理想の顔になってるんですよ!? もっと強く押し付けましょう!」
「いだだだだだ!? お兄さん痛いよ!!」
「いやいや! まだまだちゃんとやんないと!!」
野々野足軽はさっきまでの鬱憤を晴らすように仮面事褐色の青年にアイアンクローを決めにかかってた。