著名な比較文学者がアメリカの小説について割合と自由に論じたもの。アメリカを「聖母のいない国」だと表現しているのは、平川祐弘からの影響があるのだろう。厳密な意味での「文学研究」ではないが、現代日本の風俗と照らしあわせつつ海外の文学を読んでいく著者の自由闊達な文章は読んでいてなかなか楽しい。ホーソーンの緋文字を未来の「精子バンク」社会に繋げて読むくだりはまさに著者の独壇場である。
作中で取り上げられていたマーティン・スコセッシの『エイジ・オブ・イノセンス』は見てみたい。
作中で取り上げられていたマーティン・スコセッシの『エイジ・オブ・イノセンス』は見てみたい。