origenesの日記

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中世のスンナ派

2008-04-13 17:40:32 | Weblog
第4代正統アリフがムアーウィァに乗っ取られた後、ムアーウィァを正統なカリフとして見なすスンナ派と、アリーこそが正統なカリフでありそれ以前のカリフもムアーウィァも正当ではないとするシーア派に分裂した。これまでのイスラム史の中で、スンナ派はシーア派やハワーリジュ派を異端とするために、ムアーウィァの正当性を神学的に証明しようと試みてきた。
10・11世紀のスンナ派を代表する学者としてアル=マーワルディという人物がいる。彼はカリフは正義の維持やシャリーアに従う刑罰と徴税の実施を職務とすべきだと主張し、スンナ派のカリフ論を確立した。彼の法学論においては、宗教と政治は乖離すべきでなく、カリフによって統一的に束ねられるべきものだった。
イブン・ジャマーアは一方で、政治的混乱をおそれて奴隷王朝であるマムルーク朝による支配を正当化する理論を打ち立てた。彼は、後の穏健派の学者たちに大きな影響を与えたが、しかし政治に従属するようなイスラム教を肯定してしまった彼の理論には批判されるべき余地があるだろう。13・14世紀のイブン・タイミーヤはジャマーアとは反対に、当時のウラマー(学者)やスーフィーを苛烈に批判し、度々投獄された学者である。しかしタイミーヤの思想は、革命ジハードに大きな影響を与えた。
政教分離を肯定し穏健に宗教者として生きるか、政教分離を否定し革命者として生きるか。スンナ派の宗教思想のルーツにはこの2つの潮流があった。

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