origenesの日記

読書感想文を淡々と書いていきます。

リチャード・ドーキンス『遺伝子の川』(草思社)

2008-07-20 23:28:24 | Weblog
遺伝子が受け継がれていく様を川に例えたユニークな著作である。その川の中では、ある状況下において生存するのにより適した能力を持つDNAが受け継がれていきやすい。
人間の遺伝子の川を辿っていくと、一人の女性のミトコンドリア「イブ」に行き着くと言われている。レベッカ・キャンとアラン・ウィルソンの研究によって示された学説である。それによると、人間の遺伝子的な起源はアフリカにあり、人間の遺伝子はアフリカからアジアやヨーロッパへ伝わっていったという。人類のアフリカ起源説はかつてダーウィンも唱えており、根っからのダーウィン主義者であるドーキンスにとってはこの学説を否定すべくもないといったところなのだろう。
DNAの二重らせん構造に関する研究で著名なフランシス・クリックとジェームズ・ワトソンは、プラトンやアリストテレスに比すべき評価が与えられるべきだという意見が面白かった(モーリス・ウィルキンスはセネカあたりか?)。著者のデジタル・リヴァーのアイデアは、ネオダーウィニズムの始祖であるサー・ロナルド・フィッシャーやクリック・ワトソンに由来しているようだ。フィッシャーがダーウィンの最良の後継者であったように、ドーキンスもフィッシャーの最良の後継者であろうとしているのかもしれない(最もフィッシャーの優生学論者の面は批判されるべきだと思うが)。