origenesの日記

読書感想文を淡々と書いていきます。

アミール・D.アクゼル『フーコーの振り子 科学を勝利に導いた世紀の大実験』(早川書房)

2008-07-16 02:13:22 | Weblog
19世紀フランスの物理学者レオン・フーコーの伝記的事実を記したサイエンス・ライターによる本。
ニコラウス・コペルニクス(1473~1543)
ジョルダーノ・ブルーノ(1548~1600)
ガリレオ・ガリレイ(1564-1642)
ヨハネス・ケプラー(1571~1630)
この4人の地動説の科学者たちの説を証明した者としてフーコーを描き出し、学歴を持たずも独力の研究で歴史に名を残した彼の偉大さを検証する。
貧しい生い立ち、物理学者アルマン・フィゾーとの出会い、フィゾーとの共同実験、光速度の測定、著名なパンテオンでの振り子の実験(エーコの『フーコーの振り子』でも描かれていた)、ジャイロスコープの発明といったフーコーの人生における出来事が生き生きとした文体で描かれている。
フーコーがナポレオン3世の庇護下にあったということを初めて知った。

『風の丘を越えて ~西便制~』

2008-07-16 01:40:06 | Weblog
韓国の民族音楽パンソリを継承する男性。その男性にパンソリの技法を叩き込まれる義理の姉弟。この3者が織り成す美しい悲劇を描いた作品である。
パンソリの人気が落ちた時代に、どうにかしてこの伝統芸能を守ろうとする人々の強い意志。そしてその意志ゆえに起きてしまう悲劇。どこかギリシア悲劇を思わせるプロットが素晴らしい。
古典芸能の描き方や色使いが溝口健二を想起させるものだった。