TONALITY OF LIFE

作曲家デビュー間近のR. I. が出会った
お気に入りの時間、空間、モノ・・・
その余韻を楽しむためのブログ

♪「GREY」〜 ユーミンのセルフカバーを聴く

2016-11-11 02:02:18 | 音楽
ヨーロッパの石造りの街並みが浮かんでくる歌詞。
教会音楽に影響を受けたという原点を思い起こさせるアレンジ。
昔の声とは変わってしまったこともこの曲では重厚感を生み出す効果に転じている。
ユーミンの新作『宇宙図書館』の抜粋をチェックしながら、ラストの曲♪「GREY」を思わずダウンロードした。
アルバムの切り売りはユーミンの本望でないことを知ってはいたものの、
まずはこの一曲にだけどっぷり浸りたいと思った。

ユーミンが他のアーティストへ提供した楽曲を、自身のアルバムでセルフカバーすることは珍しくない。
なかには制作が間に合わず、カバーに甘んじたのではないかと意地悪な見方に傾くこともあったのだが、
♪「GREY」は見事なまでに新作のテーマと符合している。
大学に入った夏、レンタル屋さんで偶然手にした小林麻美のアルバム『GREY』。
ユーミンの全面プロデュースにより、そのエッセンスが香水のように華やかに噴霧された作品だった。
様々なレビューにはタイトル曲のセルフカバーを待望するコメントが早くから残されており、
1987年の発表から実に29年を経て、パズルの断片の如くぴったりなアルバムに収まったことになる。

それにしてもあらゆる情報を検索できる時代というのに、小林麻美が歌った音源にヒットしない。
ネット通販の中古CDは5,000円超。
この週末は昔ダビングしたはずのカセットを探すとしようか。
久々に雑誌の表紙にカムバックしているし、発売元が再発に動く可能性にも期待したい。

ユーミンのアルバムは綿密に練られた曲順も聴きどころであり、
最後に置かれた作品はそのアルバムのテーマやメッセージそのものを語って余韻となる。
一曲目をアルバムのタイトルチューンが飾り、終曲で再びテーマを繰り返すというテッパンの手法が
『宇宙図書館』における♪「GREY」でも披露された。
『REINCARNATION』における♪「経る時」と等しい構図だ。
膨大な作品群のなかに埋もれることなく、いぶし銀の味わいを堪能できたのは、ユーミンが今も現役で走り続けていてくれるからこそ。