TONALITY OF LIFE

作曲家デビュー間近のR. I. が出会った
お気に入りの時間、空間、モノ・・・
その余韻を楽しむためのブログ

下町の一日 ~ ギター・コンクールと東京スカイツリー

2011-01-23 10:02:36 | 子育て
椅子から降り立つと、「どう、弾けたよ!」と言わんばかりに客席を見渡した。
瞳が生き生きとしているのが遠目にも見て取れる。
ワンテンポずれたお辞儀が笑いを誘った。
ギターのコンクール、小学生以下の部はミンモが最年少。
こんなことで笑いを取れるのはきっと今のうち。

「ここは音がとてもよく響くから楽しいよ」とママが掛けた一言が、スッと入ったようだ。
強調したい音がとてもよく出ていた。
ダ・カーポを忘れそうになったのは想定内(苦笑)。
同じフレーズを繰り返すところ、
1回目はお日さまのように=フォルテ、2回目は曇り空で=ピアノ、と練習してきた箇所も
落ち着いて弾けていた。

抽選で決まった演奏順では、ミンモの前後に英才教育まっしぐらの小学生たちが登場。
男の子のギターはカッコいい。
しばしば建築に例えられる音楽。
重量感のある骨組みや細部の装飾はもちろんのこと、光が生み出す陰翳までもが浮かび上がってくるほどに
圧倒的な演奏を聴かせた少年がいた。
「天才の育て方」にも出ていたあのM先生門下のようだ。
一体どうやったら小学半ばでここまで弾けるようになるのだろう。
まるでギターと対話をしているかのように奏でる。
何事も経験ということで今回はエントリーさせてみたものの、
来年もとなるとこの競争から目を逸らすことはできないだろう。
出るからには結果も追い求めたくなる。
とは言え、一つのことに時間と労力を捧げると、必ず犠牲になるものが発生し、
バランスの面からは疑問が残るのも事実。
明らかなのは、この先は努力無しには報われないということか。
幼児から子供へ、子育てがそんな時期に差し掛かっていることを考えさせられた。

結果発表後、応援に駆けつけていたジイジバアバとスカイツリーが望めるレストランへ。
うわさのスカイツリーは、会場へと向かう街区からもその偉容を見せていたが、
このように向き合うと意外に高さを感じさせない。
それでも翌日の新聞には「541メートル」の見出しが躍っていた。
足元には浅草寺の瓦屋根。
東京の東も見渡す限り建物が白く続いている。

ジイジバアバはステージで演奏する孫を見て、
同じように子供をピアノのコンクールに送った日を思い出したと言う。
そんな自分が今日は我が子の演奏に付き添っている。
それぞれの歳月が巡り、三代で囲んだスカイツリーの見えるテーブルでは、
「今日はお客さん少なかったよ」とませた口ぶりのミンモに一同大笑い。
スカイツリーがこの高さであるのは今だけで、
それと同じくこの和やかな時間も今日この瞬間だけのもの。
冬空へと伸びる東京の新名所に、早くも一つ思い出が刻まれた。