TONALITY OF LIFE

作曲家デビュー間近のR. I. が出会った
お気に入りの時間、空間、モノ・・・
その余韻を楽しむためのブログ

真冬のポートランド紀行 Vol. 3 ~ Ladd's Rose Gardens Circle and Squares

2016-01-25 00:24:49 | 旅行
ガイドブックで川の東側を眺めていたところ、面白い形状の区画が眼に留った。
周囲が碁盤の目になっているなかで、この一角はダイアゴナル(対角線)に道路が走り、
中央にサークル、それを取り囲む八角形の街路、そして4箇所にダイヤ形の緑地帯らしきものが設けられている。
住宅地なのか公園なのか、この幾何学的な場所を確かめることも目的に
DAY5は自転車を借りてミンモと橋を渡った。

結論から言うと、そこはやや古びた住宅街だった。
一戸一戸の区画は広く、街路樹やたくさんの庭木に囲まれているものの、地形が平坦なところが惜しい。
例えば放射状の中心が一番低い田園調布のような起伏があれば、この独創的な街区をもっと体感することができただろう。
中央のサークルは緑地帯、そしてダイヤ形はバラ園で、
「Ladd's Rose Gardens Circle and Squares」という名前を現している。
今は剪定が施され冬薔薇がちらほら咲いているだけだが、
半袖の頃には “Rose City” ポートランドの名に相応しい芳香に包まれることが想像できた。
あとで調べたところ、William Sargent Ladd(1826-1893)という人の発案だそうな。
ゴールドラッシュの波に乗って東部から西海岸へやって来て、
実業家として成功を収めたあとはポートランド市長も務めた人物とのこと。
サークルを望む「Palio Dessert & Espresso House」でお昼を食べた。





街区の外れには「Bee Thinking」という養蜂の専門店。
ハチミツはもちろんのこと蜜蝋キャンドルやTシャツといったグッズのほか、
巣箱から防護服まで本格的な養蜂具が販売されている。
レクチャーをおこなう教室も併設されていて
こんなお店が住宅街のなかにあるところもポートランドらしい。


このあとはビーガン料理の店「Harlow」を目指してさらに東へと漕いだ。
新鮮な小麦の若葉を圧縮したジュース “WHEAT GRASS” を飲むために。
自転車、橋、健康志向の食事もこの街のキーワード。

真冬のポートランド紀行 Vol. 2 ~ アメリカン・アートとの新しい出合い

2016-01-17 00:28:29 | 旅行
アメリカの美術と言えばホッパーとオキーフを知って以降、長らく更新が止まっていた。
しかしながらポートランド・アート・ミュージアムで、新しい出合いがあった。
共鳴したのはミルトン・エイブリーとデヴィッド・ローゼナック。
今回の旅行の思いもかけぬ収穫である。

Milton Avery(1885-1965)
Bathers, Coney Island, 1934
まず女性の水着の色に吸い寄せられた。
このグリーンが無ければ素通りしていたかもしれない。
背景の砂浜と海の対比といい、左端の赤茶といい、配色のセンスが際立っている。
タイトルも額も好みだ。
別のスペースにもう1枚あった。
Dancing Trees, 1960
やはり目が行って作者を確かめるとエイブリー。
驚いたのと同時に、この画家最大の魅力が色の配置であることへの確信が深まった。
また一見小学生が描くような線には、ホッパーに漂う孤独とは反対の親密性を感じる。




David Rosenak(1957-)
Untitled, 1995-2008
カラフルな季節も、強い陽射しを遮る街路樹のトンネルに入った途端モノトーンに変わることがある。
そんな光と影が独特のタッチで丹念に描かれていている。
木漏れ日が綾なす閑静な住宅街。
それはR. I. がいつか世に出したいと願っている作品の舞台でもある。
4点で一連の作品として展示されており、位置の指定も作者自身によるものなのか気になった。
どの絵にも人物が佇んでいるリアリティ。






オレゴンで活躍したアーティストの作品が特集されているフロアがあった。
Clara Jane Stephens(1877-1952)
ポートレートの写真は間違いなく美人である。
イングランド生まれで、ポートランドへは1894年にやって来たという。
Untitled(West Hills Nocturne, Rainy Night with Car Headlights), c. 1930 は、
雨の路面を走り去る車の音が聞こえてきそうな1枚。
この地に寄り添ってどんな生涯を送ったのか思いを馳せつつ眺めていた。


美術館はフラッシュなしの撮影が許可されている。
ミンモにカメラを渡すと、被写体として面白いのだろう、モダンアートがたくさん写されていた。

http://portlandartmuseum.org

真冬のポートランド紀行 Vol. 1 ~ ダウンタウンの表情

2016-01-11 22:31:31 | 旅行
8年ぶりのポートランド。
前回はリバーサイドに宿泊したが、今回はダウンタウンのど真ん中。
カウントダウン会場のパイオニア・コートハウス・スクエアまでも徒歩5分だし、
この方が街の活気や歴史を感じられて楽しい。

2015年の暮れ、R. I. は成田からデルタの直行便で、ママゴンとミンモはアムトラックの列車に乗って合流した。
朝晩の気温は氷点下、日中でも2、3度。
外を歩くと消耗したが、それでも後半晴天続きとなったのはラッキーだった。

ダウンタウンはクラシカルな印象。
近代的なビルよりも古い建物の方が目立っている。




今、全米住みたい街No.1の座にあるポートランド。
・全米で最も環境に優しい都市
・全米で最も自転車通勤に適した都市
・全米で最も外食目的で出かける価値のある都市
・全米で最も菜食主義者に優しい街
・きちんとした食生活で健康に暮らせる街
・知的労働者に最も人気のある都市
・全米で最も出産に適した街
として選ばれており、アメリカ人がここまで健康志向になっているのも驚きなのだが、
要は居心地がいいということなのだろう。

この街ではチェーン店よりも地元のショップが贔屓にされるという。
むろん旅先でスターバックスに入る気は起こらない。
滞在したホテルの近くにあったコーヒーショップ “Courier Coffee Roasters”。
店内はフィルターの入った段ボールやパレットの木材が無造作に置かれ、
流れているのはアナログのレコード。
壁に掛かった絵は地元のアーティストのもので、値札が付けられていた。
ちょっとしたアトリエのような空間である。
ポートランドのキーワード、まずはコーヒー、アナログレコード、そしてアート。