<読書会> おもしろ☆本棚

毎月都内で読書会を開いています。参加者絶賛募集中!
お問合せは omohon.renraku@gmail.com まで

10月例会レポート『マチネの終わりに|。

2019-11-04 19:34:10 | ・例会レポ

10月の開催は17日(木)19時

『マチネの終わりに』平野啓一郎 著 毎日新聞出版 & 文春文庫

昨年10月にも恋愛小説『寝ても覚めても』を推薦しました。
期せずして今年も恋愛小説を推薦することになりました。
やっぱりこれも映画化されるという作品です。


読書会で読んだことのない作家を選ぼうと思い推薦しました。
芥川賞を受賞しているこの作家の作品はなんだか難しそうと思って読んでいなかったのですが、
今回作品を読むことができて良かったなと感じた読書会になりました。
結末のあとこの二人はどうなるのか?というような話も出て、楽しい時間を過ごせました。

総じて良かったという評価が多かったように思います。

肯定的な意見としては
・携帯でのメールなりすましなどよく考えられている。ある意味ミステリーのようにも読めるいい小説。
・いろいろな話題が盛り込まれている割にはすっきりとまとまっていてすごい。
・『日蝕』はもっと難解だったが読みやすい。
・登場人物の生き方が良く描けている。特に洋子については良い。
 最後の終わり方がさらっとしているところも良い。本当にいい小説で感動した。
・構成がかっちりしていて、音楽、政治、世界情勢などを盛り込んでもまとまっている。
 医学的な描写も正確に描かれているように思う。
 男性が有名人なので、女性からはインターネットで居場所が追えるという設定がうまい。
・とても面白かった。なんでこんなに読みやすい。
 もっと多くの読者に読んでもらいたいと作者が考えて、作風を変えてきているのでは?
 人の心の襞を描く筆力がすごい。
・恋愛小説は好きじゃないが、文章が上手なので読めた。サービス精神にあふれた小説。
・恋愛以外の事の方がたくさん描かれている。2度目に読んで、恋愛だけではない部分読み取れて得した。
・洋子の祖母の家のままごとに使った石の話。「未来は過去を変える」というところが印象に残った。
 行ったことのある世界の都市が出てきて楽しめた。
・盛りだくさん過ぎると思い、文章も嫌いと思ったが、後半は面白くて最後の終わり方も気に入った。
・これほどの知識を盛り込んで、これほど緻密に書ける作家はいない。ただの恋愛小説ではない。

否定的な意見としては
・武智さんの自殺は腑に落ちない。
・蒔野ばっかり得しているようで気に入らない。洋子の方が支払う代償が大きいのでは。
・恋愛は読むより、自分でするもの。
・メールのところがちょっとこじつけでは?都合よく失くすとか壊れるとか。
・なんでこんなに二人はお互いに好きになったのかわかりにくい。
 偽メールを書いた女性と結婚生活続けられるものなのか?
・内容が盛りだくさんすぎる。登場人物ももっと絞っても良かった。
・当て字のような読めない漢字の使い方にはルビをふってほしい。
 カギ括弧のなかになぜ句点がある?頭の良いおぼっちゃんが小手先で書いているみたいに感じる。
・メールで騙されるところはメロドラマみたい。アメリカ人の夫の浮気も唐突に感じる。

講師からは
読みにくいという意見が多いかと予想していたが、そうでもなかった。
さすがおもしろ本棚のみなさんは読む力を持っていると感じた。

恋愛小説はある程度、筋書が決まっているので、出会いの場面が大事、どう出会わせるか。

また男女の人物造形も大切。本作品では蒔野がギタリストで芸術家の生き方を表し、
洋子はジャーナリストで日本と地続きにつながっている世界のありようを描いている。
洋子の母が被爆者で、父がユーゴの映画監督ということも重要。
平野啓一郎の作品としては『日蝕』をぜひ読んでほしい。
この作品に出てくるトーマス・マンやリルケの作品を連動して読んでみるのも良い。

この作品に登場してくる音楽や小説や世界情勢など、情報量が多くて
私には全部が全部すぐにわかることではなかったのですが、
検索して調べたり、音楽についてはYou Tubeで検索して聞いてみたりして楽しめました。
楽しいだけではない恋愛物語でしたが、恋愛以外で描かれている部分が多く、
ただの恋愛小説ではなかったと思いました。


映画化されるようですが、2時間程度で収めようとするとやっぱりただの恋愛物語になってしまいそうで、
石田ゆりこさんも福山雅治さんも好きですが、やっぱり見に行くのはやめようかなと思ってしまいました。

蒔野の言葉「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。
だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去はそれくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?」という言葉が印象に残った作品でした。


来月は今作に登場していた(蒔野がギターコンクールの本番前に読んでいたという)
カルペンティエルの『失われた足跡』が課題本です。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿