昔の望遠鏡で見ています

五藤8cmアクロマート鏡筒



 五藤の8cmアクロマート鏡筒です。1970年より少し前の望遠鏡だと思います。1970年発行の双眼鏡/天体望遠鏡ガイド(天文ガイド別冊)に掲載されている五藤8cm赤道儀(極軸の高度調節をスライドして行うタイプ)が有りますが、その鏡筒の接眼筒には止めネジ(ストッパー)が付属しています。この鏡筒には止めネジが付いていませんので、改良前のタイプではないかと考え、そのように推測しました。なお、接眼筒の繰り出しの抵抗(ラックピニオンの抵抗)は、エキセン環で調節できますので、止めネジが無くとも一般的な眼視での使用には支障はないようです。



 対物レンズです。入手時は汚れていましたが、五藤でメンテナンスを行ってもらい、美しく蘇りました。対物セルを納めている部分はアルミですが、真鍮のタイプもあるようです。真鍮はアルミに比べ比重が大きいですから、接眼部に太陽投影盤などの重量物を取り付けることが予め判っている場合に、バランスをとるために使ったのかなと想像したりしています。また対物レンズは、その当時のより小口径(6~6.5cm)に見られる箔無タイプではなく、箔が使用されているタイプです。より性能を重視して、製作されていることが判ります




 接眼筒の繰り出し長さは、12cm以上あります。昔は眼視が中心でしたので、長いものが多くありました。目盛りは上部に刻印されていますが、接眼筒に止めネジが有るタイプのものは、向かって左側側面に目盛りが付いています。五藤の接眼部のネジの規格は独特ですが、一般に使われている規格との調節リング(M36.5/M36.4変換アダプターリング)が発売されており、現代のアメリカンサイズのアイピースも使用できます。




 ファインダー(9×30)の接眼部です。ピントは接眼レンズ部を抜き差しして合わせますが、左手のネジはその位置を固定するためのネジです。

 この望遠鏡は、理振法のシールが貼ってあり、昔の学校に多数納入されました。生徒たちの使用も考えてか、造りも良いようです。使用されている主な材料は金属とガラスで、樹脂類は主要部分には使用されていません。対物蓋(対物レンズの画像の右端に一部写っています)も、比較的厚手の鉄板をプレスしたもので丈夫に作ってあります。何年たっても正常に使用できることから、多くの個体が残っているようです。

 長焦点ですので良く見えますし、何よりも姿が美しく存在感がある望遠鏡です。歴史のあるアクロマートですのでレンズの対候性にも優れており、昔の望遠鏡のスタンダードの一つではないかと思います。

鏡筒径:95mm、重量:約4.3kg 


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