昔の望遠鏡で見ています

鏡の中心を求める

 だいぶ前になりますが、反射鏡の中心に印をつける際に、レコードのターンテーブルを使用すると良いと、何かの本で読んだことがあります。ニュートン反射の鏡で、印をつけていないものがありましたので、この方法でトライしてみることにしました。レコードプレーヤーは、大昔のダイレクトドライブ式のものです。押入れの奥から引っ張り出してみると、きちんと動くようです。これを見ていると、なけなしの小遣いでLPをやっとの思いで購入したことや、その上に針を下すときドキドキしたことなどを思い出しました。



 ターンテーブルの中央には、レコードを刺す突起がありますので、鏡を水平に載せるのに、何かで高さを稼がなくてはいけません。今回は、文庫本を積み重ねることにしました。
 実際に印をつけようとすると、鏡には天井が映されていて、その表面がよく判らないので、まず戸惑います。文庫本の厚みも正確に同じではありませんので、鏡面も微妙に上下します。ペンを持つ手も、一周する間に動いてしまうようで、小さな印を付けるのが難しいと感じ断念しました。また、この方法を用いるのでしたら、トースカンのような治工具に、ペンを取り付けると良いと思いました。
 
 次に思い出したのが、「ニュートン式反射望遠鏡の光軸調整法」(平成4年2月著者 市川利光)及びその補足版の「ニュートン式反射望遠鏡の光軸調整法 さらなる光軸調整法を求めて」(平成4年9月)という自家出版された冊子です。これは、苗村鏡を使った自作の反射鏡筒の光軸調整について、詳細な考察を加えた本です。例えば、鏡筒の前部に糸を張って主鏡の中心を合わせたり、接眼筒が鏡筒に垂直に取り付けられているかを、治具を作成して調節したりしています。レーザーを使った方法の記載はありませんが、その要点は現代でも通用すると思います。
 この本では、主鏡の中心にマークを付ける際には、主鏡の周りにテープを張り、その周囲の四分の一毎のところに印を付け、対面の位置同士を糸で結び、その交点を中心としています(最初にテープを一周させ、合わせ目に印を付けたのちに、一旦取り外します。その後、半分毎に折り、周長の二分の一と四分の一のところを求め、再度取り付けます。)。この方法では、糸の交差部分への最初の1筆を入れる際に、どこが表面か迷いますが、その後は不器用な私でも比較的容易に行うことができました。



 筆者は、使う糸について、「黒のミシン糸を使う。木綿糸では太すぎてだめ。」と述べていますが、今回は手元にあった裁縫箱から適当に選んだ糸を使いました。また、中心のマーカーについては、「ケント紙に直径7mmの円を書き、コンパスの中心の所を0.5mmくらい黒くする(コンパスの穴のままでも良い)。それを切り抜いて、普通の糊で糸を張った真上から見て、糸の十字の中心に0.5mmの印がくるようにして、ピンセットで主鏡に張り付ける。普通の糊を使用すれば、主鏡にのせてから多少の位置の修正ができる(再メッキの時も大丈夫だった)」とし、厳密に中心を求めることを目指していますが、今回はそれよりだいぶ大きい点を書き入れることとしました。これらの点について、冊子の内容とは異なっていますので、ご留意下さい。

 使用を推奨されたミシン糸ですが、昔は足踏み式のミシンがどこの家庭にもありましたので、容易に手に入りました。それが、現在の一般家庭ではミシンが無いのは当たり前で、裁縫道具も最小限のものしかないのが普通となってしまいました。このようなところにも、時代の変化を感じさせられます。

 ※誤って書いても、溶剤で消えるので、やり直せるようです。(ペン;油性、溶剤;カメラ用クリーナー(主成分エチルアルコール))。なお鏡面には、SiO2処理を施してありますが、耐久性については未確認ですので、同様のことをなされる場合には、最小限とした方が良いと思います。)

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