昔の望遠鏡で見ています

3本のK25mm接眼鏡

 昔、望遠鏡を買ってもらうまでの間に、接眼鏡は何ミリにするか、よく考えたものだ。いろいろな書物を見ると、高倍率だけでなく低倍率の有用性も書いてあったので、ドイツサイズにおける長焦点の部類の25mmも、一本は揃えようと心に決めていたのを憶えている。
 その頃、屈折は対物側の収差を打ち消し合うので、HやMHで良しとされていたし、反射に推奨されていた高級な接眼鏡は、だいたい10mm未満の焦点距離がOrで、それ以上はKとするのが一般的だったと思う。その内のK25mmは、各社が製造していたものだが、今では見るのもすっかり珍しくなってしまった。かつてドイツサイズ全盛時代に作られていたK25mm接眼鏡について、手元の3本をご紹介する。



 左から、五藤、ニコン、ペンタックスである。製造年は五藤が一番古く、ペンタックスが最も新しいと思われる。ニコンとペンタックスの見口はゴム製で、眼鏡の使用者に優しい設計である。また覗く側のレンズの径も、大きくなっており、見易くなっているのが判る。レンズはそれぞれ綺麗なのだが、コーティングが古いためか、五藤のレンズ表面の反射光は少し大きいようだ。




 古色蒼然とした外観の五藤は、4つの部品に分解できる。左から二番目の部品を見ると、筒の下部に、レンズがカシメてあるのが判る。これは、同社の古いK40mmと同様な構造のようだ。


 

 見え味を確かめようと、テレパックで月を望んだのだが、皆それぞれ良く見えていた。低倍率という事もあり、分解能などに違いは無いように思えた。焦点位置は、ニコンとペンタックスがほぼ同位置だったが、五藤は少し接眼筒を繰り出さなくてはならない位置にあった。




 同様にティーガル60を使って、遠くの鉄塔でも見比べてみた。鉄塔の踊り場の裏側のくすみ具合や塗装のはげ具合を見ると、コントラストは若干だけニコンとペンタックスが良いような気はしたが、大差は無いようだった。製造年やコーティングの違いはあっても、レンズの磨き等は、皆良いのだろうと思った。
 ティーガルは地上用望遠鏡にも使えるように接眼筒の繰出しは量は大きいのだが、それでも五藤を使用する際には若干足りなくて、接眼鏡を浮かして固定しなければならなかった(上記画像参照)。
 五藤は古くはあっても、性能では決して引けを取らず、逆に絵になる外観ということもあって、最も存在感のある接眼鏡だと感じた。

最近の「天体望遠鏡」カテゴリーもっと見る