秋晴れの日に、星見に出かける。行く先は、先日下見を済ませた山岳道路の標高1,200m付近にある駐車場だ。西が山頂方向にあたるため、少し視界が遮られるが空は暗く、近場では最高の条件を持つところの一つだ。
持って行く鏡筒は、昔の五藤8cmF15を選んだ。この望遠鏡は、1970年頃に製造されたもので、20年位前に中古で入手したものだ。対物レンズはオーソドックスなアクロマートだが、銘機と誉れ高いニコン8cmに比較しても引けを取らない見え方をしているのを確認している。架台は、タカハシのEM11赤道儀だ。これはスマホから操作して自動導入できるもので、強近眼の自分に代わって星を導いてくれる。
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現地には日没前に到着したが、周囲の山々には少し霧がかかっていた。望遠鏡を組立てている間に、何度か山頂から霧の塊が下りて来ては晴れるのを繰り返す。その時の気温は17度であったが、夜間は冷え込むのであろう、一部の木々には紅葉が始まっていた。
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薄明が訪れる頃には空は晴れ渡り、南西の空に三日月が輝きだした。周囲が開けているからだろうか、街中に比べて月の見える高度が高いように錯覚する。そして月が山の尾根に沈む頃、周囲が一気に暗くなっていった。
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長焦点屈折で星雲星団を見るためには、接眼鏡も長焦点のものが必要になる。この鏡筒は、昔のオリジナルのままなので、2インチは使用できない。今回は、昔のマスヤマ35mmと36.4mmにねじ込むタイプの天頂プリズムを用意した。もちろん五藤の接眼筒のネジは特殊なM36.5なので、M36.4への変換アダプターリングも準備している。このマスヤマは、かつて所有していたシュミットカセグレイン用として平成の初期の頃に入手していたもので、オルソやケルナーに比べて視野が広い。ただ、見口が金属製で眼鏡使用者には使い難かったので、その対策としてOリングを見口に貼付けており、画像に見える加工の跡はその部分である。
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空が暗くなってきて、初めに鏡筒を向けたのは、南の銀河だ。まずM8が、星雲星団ガイドブック(誠文堂新光社1971年,藤井旭著)に記述されているとおり、「双眼鏡であろうと6cmであろうと20cmであろうと,「すばらしい」という言葉がまっさきにとびだしてくるほど大きく見ごたえのある大星雲」であることを追体験する。周囲の星雲星団も観望してみると、接眼レンズの中は沢山の美しい星々で溢れており、空の暗さの効用を改めて感じさせられた。
続いて南東の空に輝く木星を導入すると、良く見えているのに驚く。意外にも、シンチレーションは良好のようだ。ドイツサイズの0r9mmを使ったのだが、二本のバンド間の灰色の模様の存在も伺うことができた。以前に他の高地でも、惑星がよく見えるのを経験したことがあるので、高山というところは案外に気流が良いところなのかもしれないと思った。
夏から秋の星々を一通り楽しんだ頃、寒さが半端なく感じられるようになってきたので、終了とした。その後、幸福感に包まれながら帰宅の途についたのは、言うまでもない。