goo blog サービス終了のお知らせ 

俳句雑記帳

俳句についてのあれこれ。特に現代俳句の鑑賞。

羅(うすもの)

2009年07月20日 | 俳句
 薄く、透けて見えるように織った布地。盛夏の頃に用いられる絽(ろ)・紗(しゃ)・明石(あかし)・透綾(すきや)・上布(じょうふ)など、薄絹や麻で作った単衣(ひとえ)を言う。昆虫の翅のように薄いものなど、いかにも涼しげですがすがしさを感じさせる。蝉の羽のように薄くて軽い着物を、古くは「蝉の羽」と呼んだようである。「蝉の羽の」とは、「薄し」「衣」「ひとへ」などにかかる枕詞だった。

   羅やをとこは背中より老いて  戸恒東人(とつね・はるひと)

 句集『過客』(かかく)より。著者の第六句集と言う。
男が着る羅と言えば絽くらいしか筆者は知らないが、このごろの若い人は着ないであろう。やはり中年より上の男である。盆などには絽の衣を着た僧を見かけることもある。さて、男が羅を着ると体格というか骨格まで透けて見えるようである。人間は歳と共に猫背になる人が多いようだが、羅を着ていることでそれがはっきり見えると言うのだ。男の場合は特に骨格がよく見えるだろう。その人のうしろ姿を見ながら「あの人も歳とったなあ」と感じているのであるが、それはたちまち自分自身に返ってくることである。なにやら背中が寒い。(勢力海平)

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。