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俳句雑記帳

俳句についてのあれこれ。特に現代俳句の鑑賞。

芒(すすき)

2011年10月18日 | 俳句

 秋の七草の一つであるが季語としては長く楽しめる。花芒、穂芒など言い方はいろいろあるが、いずれも秋の季語である。動物の尾の形に似ているので尾花とも言われ、屋根を葺く材料ともなるので茅(かや)とも呼ばれる。
 秋に黄褐色の穂が出るが、これは花の集まりでめしべおしべをそなえている。枯れると白くなってゆくが、これに日が当たると銀色に輝いて美しい。その景色を詠んだ句は多いので、類句が生まれやすいとも言える。

    金芒ひとかたまり銀芒ひとかたまり  高浜虚子(たかはま・きょし)

 まず字余りであることに驚かされる。22音もあるから7音も余るが、リズムはちゃんとしている。金芒とか銀芒という言葉は今では平凡と言えるが、おそらく戦前の作であろうから当時としては新しかったのだろう。
 情景としては、たとえば車に乗って川沿いの道を走っていたとする。あるところに一株の芒があって、何本もの芒が金色に輝いている。そうしてしばらく行くと、また一株の芒があって今度は銀色に輝いているのである。「かたまりの金芒また銀芒」という感じなのである。芒の生長具合と光線の加減によって見え方が違うのである。
 もちろん、広い邸宅の庭の情景とし考えてもよいだろう。

   をりとりてはらりとおもきすすきかな  飯田蛇笏(いいだ・だこつ)

 この句、はじめは漢字まじりで発表されたようだ。その後、作者の手でひらかなに改められたと言う。折るという動作のあとの、一瞬の驚きをより適切に表現しようとしたのだろうと、飯田龍太は書いている。
 芒はそう簡単に折れるものかと思うが、花芒は穂持ちの第一節に指を当てると簡単に折れるそうだ。山住みの作者はそういうことをよく知っていたのだろう。
 かるがると風に吹かれていた花芒は手折ってみると、意外な重さが感じられたのである。それはまるで風の重さのように感じられたに違いない。


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