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俳句雑記帳

俳句についてのあれこれ。特に現代俳句の鑑賞。

月(つき)

2009年09月19日 | 俳句
 雪月花と言われるように日本人の代表的な美の対象である。月は年中見られるわけだが、秋の季語として定着している。空気が澄んで月も星も美しくはっきりと見えるからである。月の運行を基準にした暦法が太陰暦でえあるが、これに季節変化など太陽暦の要素を加味したものが太陰太陽暦である。日本のいわゆる旧暦はこれに当る。「仲秋の名月」と言えば旧暦8月15日の月を指す。単に「名月」とも言う。名月の翌日は「十六夜」(いざよい)、その次の日は「立待月」(たちまちづき)、その次の日は「居待月」(いまちづき)というように呼び名がある。名月の一ヶ月前、7月15日の満月を「盆の月」と言う。季語としての「月」には無数の傍題があるので最適の季語を選びたい。

たかだかと上がる無月の波がしら  黛 執(まゆずみ・しゅう)

 今夜は名月のはずなのに空が曇って月が見えないことがある。これを無月(むげつ)と言う。雨が降っている場合は雨月(うげつ)である。作者は名月を見るつもりで海岸に来たのであろう。ところが空は雲に覆われて名月は見えないのである。海は荒れているが名月の夜(良夜)ならば情景はずいぶんと変るはずである。残念だなあと思いながら海を眺めれば波頭が高々と上がっている。岩に打ち寄せているのであろう。月光の中に見る波頭は美しいが、無月の波頭は不気味でさえある。名月は年に一度のことであるから拘りがあるのだろう。無月とは無念の月でもある。(勢力海平)

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