にいはんは周回遅れ

世間の流れとは違う時空に生きる

同じ事を言っても人によって説得力が違う例

2007-06-10 | オーマイニュース

拙ブログでは、オーマイニュース(以下OMN)のこれまでの経緯から、藤倉善郎記者によるネット選挙解禁キャンペーンの記事にたいへん注目しています。おそらく記者の文体による部分もあるのでしょうが、過去3回の連載はオピニオンというよりは、OMNによるアジ演説のカラーが前面に出てあまりいい印象を持っていませんでした。申し訳程度に「ネット選挙の解禁は市民の為」という主張が添えられているものの、全体を覆っているのは「私(OMN)は公職選挙法が嫌いだ」という空気ではないかと思えたからです。

しかし、昨日掲載された永田あつし安城市議(民主党)へのインタビュー記事は読み応えがありました。私にとって音声メールの配信が公選法違反にならない事実は目からウロコでしたし、動機がネット選挙解禁を訴えるパフォーマンスからだったとはいえ、国会質問で違法性がない点を確認した上での行為です。「グレーゾーンだらけの公選法を何とかしよう」というのが、今回のOMNのキャンペーンでの主張の一つですが、永田氏は白か黒かをはっきりさせた上で音声メールの配信に踏み切っています。全体としても、インタビューの体裁をとっているため、OMNや記者の主張は控えめとなってバランスの取れている記事だと感じられました。

インタビューでの永田氏の回答は、OMNがこれまで行ってきたキャンペーンの内容とは大差がありません。にもかかわらず、この記事で受けた印象がそれまでのものと異なったのは、記事がネット選挙解禁の主張に終始せず、永田氏の回答が自身の具体的な経験から始まって、現行の公選法の問題点、ネット選挙解禁の必要性につながっているからでしょう。永田氏と記者がネット選挙解禁の部分では同じ考えを持っているのはわかっているのに、永田氏の回答が記者に誘導されている印象を受けません。これはインタビューを行う際の基本的なマニュアルなのかもしれませんが、藤倉記者の手法も適切なものだったのだろうと考えられます。

とはいっても、OMNに関連して気になる部分、勘違いして欲しくない部分がありますので、インタビューの一部を引用します。(引用部分はイタリック体で表示、太字は筆者)

永田氏(以下永): 文書関係の選挙違反では、通常はまず警察が警告を出して、従わなければ摘発される。まずは『イエローカード』が出されるだけ。しかし私は一度も警告は受けていません

藤倉記者:── “グレーゾーン”である以上、警告が来たらやめればそれでいい、ということですね。

永:「候補者に関して言えば、そのとおりです。しかし一般の有権者が『違反の恐れがある』と言われれば、誰だって萎縮してしまう。だから、誰も何もできない」

何か、4月の新宿区議選関連記事におけるOMNの対応が見えてくるようです。この件については未だにOMNからのアナウンスはありませんが、やはり警察の警告が出されたから一連の記事を一時退避させたのではないかと思わせます。そして、OMNはイエローカード一枚はOKのガイドラインを知っていて、一連の記事を出していたのではないかと疑わせるものがあります。

ただ、永田氏の回答にあるように、候補者に関して言えばそのとおりだとしても、言論機関としてはどうなのかという倫理上の問題が残ります。この回答が、今後OMNで記事を出す時にも通用すると勘違いして欲しくはありません。また、永田氏は一度も警告を受けていないと言っています。法を遵守する者にこそ法改正を訴える権利があります。それが言論の自由を制限する表現で、言い過ぎだというなら、法を遵守する者とそうでない者は、法改正を訴えたときに世間に与える説得力が桁違いであると言いかえましょう。

例えばプロレスではカウント4までの反則が許されていますし、昔と比較してリングアウト決着が激減した今では、場外カウントも厳密に数えられないケースが殆どです。これはプロレスがエンターテインメントである事や、ファンがリングアウト決着を望まなくなった事が原因でしょう。ですが、メディアの一員であるはずのOMNがプロレスをする必要はないでしょう。相手のいないプロレスがどれだけ滑稽かを考えればすぐにわかる事です。最近はエアギターが市民権を得てきているようですが、エアプロレスで検索しても出てくるのはネタばかりです。

イエローカード一枚はOKのガイドラインは、いわゆるお上のお目こぼしでしかありません。

サッカーの世界では、複数の試合にまたがってイエローカードの累積があると出場停止のペナルティーを受ける事、カードのリセット方式はリーグや大会によってルールが異なる事をお忘れなきように願います。