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イッピンNHK 「よりスタイリッシュに!よりモダンに!~佐賀 肥前吉田焼~」

2023-11-30 08:15:41 | イッピンNHK

 第221回 2019年4月23日 「よりスタイリッシュに!よりモダンに!~佐賀 肥前吉田焼~」リサーチャー: 黒谷友香

 番組内容
 有田焼の産地、佐賀県で日常使いの器を作り続けてきた「肥前吉田焼」。知る人ぞ知る焼き物が今、スタイリッシュに進化している。絶妙な濃淡を生む伝統の絵付け技法を駆使して、美しいグラデーションを表現した青一色の皿。そのほか、昔ながらの水玉模様をポップにアレンジした器や、側面に切り込みが入っているのに飲み物がこぼれない!という不思議なカップなど。斬新なアイデアを実現させる職人技に、女優の黒谷友香が迫る。

*https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/detail/?crnid=A201904231930001301000 より

 

 ≪参考≫ 肥前吉田焼について

 佐賀県・嬉野市吉田は、日本三大美肌の湯「嬉野温泉」と「嬉野茶」が全国的に有名です。

 この地で400年余前から作られている焼き物が「肥前吉田焼」(ひぜんよしだやき)です。
 佐賀県と言えば、日本の磁器発祥の地として名高い「有田」ですが、有田町から車で30分程の嬉野市を中心とした地域では、日常使いの焼き物が作られてきました。

 「有田焼」などとは異なって、「肥前吉田焼」には形や様式などこれといった特徴はありません。
 唯一の特徴は、日常生活に根ざした器を作ること。
 その精神は今もこの地に受け継がれており、十数件ある窯元それぞれが「今の生活」のための器を作り続けています。

 その「肥前吉田焼」では、歴史や伝統により培われた技術を用いるだけでなく、新たな可能性を模索する動きが生まれています。
 新しいデザインや遊び心のある作品が作られています。
 
 平成28(2016)年からは「肥前吉田焼デザインコンペティション」もそのひとつです。

 また肥前吉田焼窯元協同組合では、嬉野市内20か所において、嬉野市の特産物をPRするために、「カプセルトイ販売機(通称ガチャ)」で、肥前吉田焼のマグネットの販売を行っています。(1回500円(税込み))。


  
 1.「副久 GOSU」シリーズ(副久製陶所)

 「副久製陶所」(そえきゅうせいとうじょ)は、昭和28(1953)年に創業した窯元です。
 初代は、唐子模様の器を中心に製造。
 2代目は、墨を用いた白抜き技法である「墨はじき」、伝統的な筆による絵付け技法である「濃み」(だみ)の技法を生かして、白地を青で装飾する伝統的な焼き物を手掛けてきました。

 現在は、三代目となる副島久洋(そえじま ひさひろ)さんが、奥様の美智子さんと共に、代々継がれてきた技法を用いながらも、新しい挑戦を続けていらっしゃいます。

 「副久 GOSU」は、平成27(2015)年に開発されたグラデーションを巧みに生かした青一色のお皿のシリーズで、好評を博しています。

 その特徴は「濃み」(だみ)。
 久洋さんは、一年の月日を掛けて独自に5段階の濃淡の呉須を開発し、伝統の「濃み」(だみ)の新たな表現方法を確立し、現在7タイプのお皿を作っています。

 「濃み」(だみ)とは、素地に絵付をする際に、絵付けの輪郭線の中に太い濃筆で呉須を含ませて塗っていく技法のことです。
 筆を指で押さえることで、呉須の量を調整して色の濃淡を表現することも出来ます。
 輪郭部分の絵付けが男性の作業であり、「濃み」を作成する「ダミ手」は女性の職人の作業であったと言われています。
 濃みの技法を習得するには実に長い訓練が必要とされ、本当に熟練技です。

 「副久 GOSU」でも「濃み」を行うのは、奥様の美智子さんです。
 専用の「濃み筆」という筆に、「呉須」というコバルトの顔料で出来た絵の具を含ませて、一定の速度で中心から色付けをしていきます。
 色は5段階あり、その色の濃さによって「濃み」のやり方も変えていきます。
 水分の多い場合は筆から絞り出す量を少なめに、色が濃いものは絞り出す量を多めにして「濃み筆」を動かしていきます。
 一つ一つが手作業なので、2枚と同じものは出来ません。
 
 仕上げは、夫の久洋さんが行います。
 回転台を使って皿の裏側に色を一気に塗り、銘を入れたら、釉薬をかけて焼成します。
 焼き上げると、濃厚の異なる美しい青色が浮かび上がりました。
 水の波紋のように美しいお皿です。

 副島さんご夫妻は、この「副久 GOSU」の開発をきっかけに、器に呉須の花が咲いたような「hana」シリーズを誕生させたり、デザイナーとのコラボレーションや地域の企画にも熱心に取り組みを続けていらっしゃいます。
 
 副久製陶所 佐賀県嬉野市嬉野町大字吉田丁

 

 2.「水玉食器」(副千製陶所・副島謙一さん)

 「副千製陶所」(そえせんせいとうじょ)さんの代表作は、昭和21(1946)年に誕生し、「肥前吉田焼」の代名詞とも言われ、ホテルや旅館などでよく見掛ける青と白の水玉模様の手彫り水玉柄」の土瓶です。

 平成22(2010)年には、「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」を受賞しています。

 その水玉土瓶が現代の生活スタイルに合うようにとモダンでデザイン性溢れる水玉の器に進化し、評判になっています。

 3代目の副島謙一さんは、「水玉模様」を「掻き落とし」と呼ばれる伝統技法を用い、一つひとつ手彫りでモダンでスリムな土瓶や急須、水差し、フリーカップ、湯飲みなどを制作しています。
 全国でも「搔き落とし」で彫る職人は少ないのだそうです。

 成形は弟の副島弘明さんが「排泥鋳込み」(はいでいいこみ)という手法を用いて行います。
 作業開始から16分で中の泥漿(でいすい)を排出したら乾燥させ、型を外します。
 そして、茶こしや注ぎ口をパーツを取り付けていきます。
 「排泥鋳込み」(はいでいいこみ)
 石膏型に流し込んだ泥漿(でいしょう)を一定時間放置した後、必要な厚さになったら余分な泥漿を流し出す成形方法です。
 石膏型が泥漿(でいしょう)の水分を吸収して張り付く性質を利用したものです。
 主に急須や花瓶など、中が空洞になった袋状の器の量産に適している手法です。

 水玉を施す作業では、副島謙一さんが防塵マスクを装着して、工業用ドリルを改良した「リューター」という道具を巧みに使って、直径1.5㎝の水玉を削っていきます。
 
 一見、 ランダムに削っているように見えますが、基準があるそうです。
 かつての「水玉土瓶」は水玉の数は多かったのですが、単調なものでしたが、謙一さんは、水玉と下地のバランスにこだわって、余白の部分も水玉を生かすように削っています。
 
 素焼きを終えたら、釉薬をたっぷり厚めに掛けて、削った水玉の角を柔らかくします。

 次に水玉に色をのせていきます。
 この色付けの作業を行うのは、奥様の由紀子さんです。
 色付けは、筆で塗るとムラが出来るため、黄色の絵の具の上から黄色いフィルムでコーティングして、水玉に色を定着させます。
 焼成するとフィルムは無くなり、美しい水玉模様が浮かび上がりました。

 副千製陶所 佐賀県嬉野市嬉野町大字吉田丁4116−13

 

 3.「yongo-hingo」(224porcelain・辻諭さん)

 元々、有田において御用焼を営む「辻家」の出として約170年前の安政年間(1854~1860年)に創業した「辻与製陶所与山窯」(つじよせいとうじょよざんがま)。
 他の「肥前吉田焼」の窯元と同じく長きに渡り佐賀の「有田」や「伊万里」、長崎の「波佐見」の下請けとして表に出ることなく、その技術を影で磨いてきました。

 現在、「肥前吉田焼」の中で目覚ましい活躍を続け、トップランナーとして走り続けている辻 諭さんは、「辻与製陶所与山窯」の6代目・辻 賢嗣さんの長男です。

 辻 諭さんは、実家の細工人(ろくろ師)のもとで修行したり、有田の窯業大学校に通って技術や知識を習得ていく中で、
「肥前吉田焼」を埋もれさせることなく、吉田で焼き物を作る意義を明確にしたいと思うようになりました。

 そして、磁器の産地として長い歴史とその中で培ってきた技術を下地としながらも、有田焼のような様式がないからこそ
これまでの価値観に捉われることなく、自由なものづくりが出来るのではないか思い、平成24(2012)年に「肥前吉田焼」の磁器ブランド「224porcelain」を立ち上げました。

 「224porcelain」の「224」は「ニーニーヨン」と読みます。
 これは「2・2・4」 辻与=「ツ・ジ・ヨ」というダジャレで決めたそうですが、珍しい名前なのですぐに覚えてもらうことが出来ますし、数字だと海外でもそのまま読んでもらうことも出来ます。

 辻さんが手掛けた作品には、自家焙煎するための「PRIVATE ROASTER」(プライベートロースター)、紙を使わないセラミックコーヒーフィルター「caffè hat」(カフェハット)、雲の形をした器やポットの「Cloud nine」(クラウドナイン)、 
醤油をかければ”おにぎり”の形が浮かび上がる醤油皿「おにぎり」、アロマディフューザーの「kisetsu」(キセツ)、「shirakaba」(シラカバ)、「Fragrance fruit」(フレグランスフルーツ)など、ユニークなものが沢山あり、どれも好評を得ています。

 その中でも特に人気なのは、「yongo-hingoよんごひんご」という名前のちょっとまがった形をしたへんてこな「マグ」です。
 「よんごひんご」とは、佐賀の方言で「真っ直ぐでない」「曲がっている」「歪んでいる」こと。

 「yongo-hingoよんごひんご」は、切り目が入り凹凸になっていることで、手にピッタリフィットし持ちやすくなっています。
 また二重構造になっているので、淹れたてのコーヒーも熱さを和らげることが出来るだけでなく、保温効果もあります。
 一方冷たい飲み物も水滴が付きにくいので、ノンストレスで使うことが出来ます。

 二重構造の成型は、職人の木村定二さんにより、「排泥鋳込み」(はいでいいこみ)という手法を用いて行われます。
 型が水分を吸って行くと繋ぎ目のない二重構造のカップが出来上がる。
 
 「排泥鋳込」(はいでいいこみ)
 石膏型に流し込んだ泥漿(でいしょう)を一定時間放置した後、必要な厚さになったら余分な泥漿を流し出す成形方法です。
 石膏型が泥漿(でいしょう)の水分を吸収して張り付く性質を利用したものです。
 主に急須や花瓶など、中が空洞になった袋状の器の量産に適している手法です。
 
 次に、凹凸の部分を作ります。
 凹んだ部分は、生地が柔らかい状態のうちに、水に濡らしたナイフを斜めにして切り目を入れていきます。
 出っ張りは、木べらを使って手前に押し出します。
 
 そして辻さんが釉薬を塗ります。
 目指すのは雑味の鮮やかな「白」。
 そのために独自に配合した釉薬を使います。
 窯で13時間焼き上げたら、完成です。

 224porcelainの工房には、器が買えるショップや嬉野茶や地元のランチを夜はバーとしてお酒と水タバコが楽しめる「saryo」というカフェが併設されています。
 
 224porcelain 佐賀県嬉野市嬉野町大字下宿乙909

*https://omotedana.hatenablog.com/entry/Ippin/Saga/Hizenyoshidayaki より


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