京都府高等学校軽音楽コンテスト新人大会つまり、1年生のバンド限定の初めてのコンテストの審査員をやってきました。
場所は大谷高校、樹心閣。
京都府のコンテストは、審査項目は、演奏技術、一体感、個性表現の3項目、20点合計60点満点。
ただし、メンバーそれぞれへのメッセージが主体の記入項目になっているのが特徴。
審査員は、現在天童よしみのサポートなどで活躍、甲陽音楽院など教育活動も長い多田明日香先生(ドラム)大阪音楽大学の森島裕子先生(ボーカル)と僕。
さっそくバンドへのコメント。
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桂高校 町田佳憐(まちだかれん)
ピアノの弾き語り。トップから良く頑張りました。歌詞の高尚さと繊細な歌が魅力的です。情感もこもっていたと思う。
この日、折り畳み式の簡易電子ピアノだったが、明らかに音がワンランク悪く、肝心のピアニシモが表現できていなかったと思う。
会場のものを借りるとか、機材も考えた方が良いでしょう。
嵯峨野高校 サガノクション
一年生と思えない実力のバンド。バンドがボーカルを聴きながらステージのバランスを取ると良いと思う。
タイトなリズムセクション。ベースも上手い。ギターも上手いが、ボーカルより大きく普段からバランスを気にして欲しい。
光華高校 New Year Project
伸びやかなボーカル。ギターもしっかり練習している。ベースはラインをうまく選んで、バンドをリードしていた。
ドラムはいない。キーボードはペダルでストリングスなどボリュームを細かく調整できたらもっと良い。
楽しく演奏出来ていて、気持ちよかった。
城陽高校 astrum
ボーカルよく頑張りました。ギターはちょっと考えすぎ?ソロのシングルノートは滑らかに。
ベース頑張れ。しっかりキープしよう。ヨレない、止まらないがドラムは基本。キーボードは白玉以外の工夫を。
もっと練習しよう。
峰山高校 ミテイ
バランスよく聞こえる良いバンド。ボーカルは歌い慣れている。アコギも頑張った。
ギターは上手い。よく練習している安定感がある。しかし、楽器のメンテナンスは普段から考えよう。
本番に限ってトラブルは起こる。リズムセクションはよく出来ている。
大谷高校 Anonyme
スピード感のあるところでバンドがまとまっている。しかし、若干すべり気味。
リズムセクションはそれが気になる。女の子のギターはソロは上手いがソロを中心に音色を作りすぎ。
バッキングは歪みすぎている。手元のボリュームやタッチでバンドのギターとしてサウンドをコントロールしよう。
ギターが二人いるので、音が大きすぎてボーカルを邪魔している。バンドサウンドをよく聴いて欲しい。
嵯峨野高校 Rysky monsters
バンドらしいサウンド。聴いてて安心できる。タイトで良いリズムセクション。④ラムので音がクリア。ベースの音作りも良い。
キーボードのバランスも良い。ボーカルも良い。ギターはセンシティブなコントロールもできている。バランス感覚が良い。
オブリガートは左手のコントロールで滑らかさがあればなお良い。
兎道高校 cham
さりげなくナチュラルなボーカル。楽しい空気が伝わるバンド。
ギターは左手はしっかり押さえよう。リズムセクションは頑張っているが、安定感が欲しい。ドラムのフィルもブレる。
バンドのグルーブに意識が必要。
僕は、昔、NYの亡くなった有名エンジニアに言われた言葉を思い出します。
「岡本、良いバンドを持ちたかったら、お前が信頼し、相手もお前を信頼してくれるメンバーを探し、来る日もくる日も
イントロの4小節を何度も繰り返し練習するんだ。そうしたらバンドになる。それがN Y式だ」
アメリカの有名バンドのリハを見に行って「朝会って、夕方スタジオに挨拶に行ったらまだ同じ数小節を繰り返しやってた」
という話は珍しくない。だから、アメリカのバンドの常識かもしれない。
大谷高校 華奢クラブ
難度のまとまりが一歩抜きん出ている。ステージングも自然にカッコ良い。ギターはバンドのためにギターという味がある。バンランス感覚も良い。ドラムは爽やかでタイト。ベースのオンシクも良い。キーボードもバランスの良いプレー。ボーカルもパフォーマンス込みでバンドとの一体感がある。メロディーによって、バンドからよく抜けて聞こえるところとそうでないところの差がある。これはなんとか解決したいところ。アレンジも込みで。
光華高校 New Days Project
ボーカルもよく聞こえ、バランスの良いバンド。しかし、全体にリズムのタイトさが欲しい。
キーボードは音符の長さ、切りぎわに注意。ドラムよく叩けている。僕はベース大きめは好きだけど、ちょっと大きかったかもしれない。普段から気をつける。ギターは弾けてたようだけど正直聞こえなかった。ボーカルは、ギターと目を合わせようと視線を送ったり良いパフォーマンスで全体を活気づけようと頑張った。
峰山高校 コナタイロ
バランスの良いバンドらしいバンド。後半だんだんよくなった。多少グルーブのタイトさは無いがちゃんとグルーブしていると思う。ギターはとてもテイスティーなグルーヴ。音色も良い。ベースがちゃんとバンドの芯にいるのが強み。ドラムは柔らかくグルーヴしている。ボーカルは音程に注意。テイスティーなボーカルで楽しめたが、Aメロで抜けてこないのが気になった。
嵯峨野高校 ヒロポンズ
嵯峨野らしい爆発力。ロックバンドらしい仕上がり。ドラム&ベースはスピード感のあるグルーヴが出ていた。少し大雑把だけど。ちょっと緻密になればワンランクアップしたバンドになる。ギターは思った以上に8ビートのドライブ感を分かっている。密かに上手いかも。ボーカルは普通だけど、ずっと音像がバランスよく聞こえる。案外上手いのかも!
兎道高校 TEEN
不思議にバンドがタイトにグルーヴしている。不思議なバンド。透明感のあるボーカルが抜けてきて気持ち良い。ベースとドラムも一体感がある。ドラムは重くとても良いグルーヴ。ベースも上手い。「2本のギターが全く同じリズムとストロークしていて、もったいない、工夫が欲しい。」とまで書いたが、しかし、不思議にバンドとして成り立ち良い音がしている。これで良いのかもしれない。不思議に良い点をつけちゃった。
立命館高校 Razward
スピード感のある良いバンド。その中に安定感があると得点は上がる。ボーカルはバンドによく合っていた。ドラムベースもドライブ感のあるグルーヴが出ていた。ギターはシンプルな発想だけど、切れ味の良いバンドにあったプレーだった。青いテレキャスの子は特に思い切りよい。バンドを引っ張っていた。
大谷高校 SM machine -gun
バンドがしっかりで音が良く、バンドが鳴っている。ボーカル2人とも落ち着いている。ベースとドラムは余裕のあるステージング。ギターもバランス良い。ソロも上手。
ボーカルも二人とも落ち着いていてよかった。
城陽高校 Tune Squad
悪く無い出来だけど、もっと何か出来そう。ボーカルはバンドのボーカルとして成り立っている。ドラムとベースが微妙にズレ、追いかけっこをしている。重くステディーなグルーヴが欲しい。ギターは二人いて、一人はクランチでずっとリズムとコードを弾いている。もう一人、ソロを弾くストラトの彼は、シングルノートで音がクリアすぎないか?何か出来そう。元の音源になくても、自分のパートは自分で居場所を探すことも必要。良いミュージシャンはそういうものだと思います。
兎道高校 リタ
8ビートの中心のバンドが多い中、軽快な16ビートの迫力ある演奏でした。メッセージの聞こえる軽快なボーカル。ギターは、大雑把だがバンドの中でグルーヴしようとする意識で演奏している。ベースとドラムもチャレンジしたのだと思います。バンドのいくぜ、という意識がサビの歌詞と相まって、グッと来る部分があった。
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と書いてきたところで、ボーカルがちゃんと聞こえて、リズムが安定してて、演奏してる方の楽しさや気持ちが伝われば、良い点が出る、というシンプルなところなんだと思います。
受賞を発表された生徒が泣きそうになって「初めてのステージで賞をもらえて、一生忘れないと思います。」と言ってるのを聞いて「これがこの子の出発になるんだ」と思った。
僕も高校一年の時、当時の友人に連れられフォークのコンテストに出て、ラッキーにも広島の今のメルパルクホールで開催された中四国大会に出たのは、大きなきっかけになった。
プロと呼ばれるようになっても、その時の会場が出演した中で一番大きなホールでした。(笑)鹿児島で演奏した。広島で演奏した。そういう思い出が大切なその子の人生の一コマになると思うと、本当に光栄な仕事を任せていただいたと思います。
この記事を書きながら、休憩にTVをつけるとWOWOWで、アレサフランクリンが教会で自分の原点ゴスペルに帰るという映画をやっていた。素晴らしい魂を感じる映画だった。いつの間にか少し目指すレベルが矮小化してる気がした。すっかりこういうレベルの音楽のことを忘れていた。
今日の高校生たちにこういうものを一度で良い。経験してもらいたいと思った。
人間にとって思いがけないそういう出来事は、人生を変えますよね。そして、それは人との出会いがもたらす。僕がやらねばならないことは沢山あるなあ、と感じました。
今回お会いした皆様、今後ともよろしくお願いいたします。