紙の本は10年後になくなる

2007年10月02日 | e-book関連
 以前書いたように、出版界は急速に変わっている。大衆市場向けペーパーバックの利益は激減しており、米国の多くの出版社は、もはや出版する時代ではないのではないかと考えている。

 ペーパーバックはコストがかさむ。実売率(販売業者に出荷されたうち実際に売れた本の割合)は下がっており、現在の平均は50%前後だ。もっと低いという声もある。平均が50%で、85%がかなり高い方だとすれば、多くの本の実売率は20%かそれ以下ということになる。

 売れ残ったペーパーバックは返本されない。カバーだけが返される。残りの部分は断裁されるのだ。なかには古本屋に流す書店もある。だから、カバーのないペーパーバックが売られているのだが、これは著者や出版社、あるいは両方からの窃盗である。ペーパーバックが返本されずに断裁される理由は複雑だ。もっと詳しく知りたければ、SF作家協会の記事を見てほしい。

 本を印刷して出荷しても、断裁されるだけなら高くつく。これは「著者の悪循環」を産む。出版社がある著者の本を5万部出荷し、実売率が60%だとする。これはかなり良い。しかし、3万部しか売れないなら、そんなにたくさん出荷する必要があるのかと出版社は考えるだろう。出版社は同じ著者の次の本は4万部出荷する。これも60%の実売率だ。その次はたった3万部しか出荷されない。その次は、例えばその著者の本があまり売れなかったとすると、新しい著者を試してみよう、となる。

 幸運にも、それは私の身にはまだ起こっていない。だが、驚くほど優れた作家にも起こった例があり、なかにはペンネームで書かざるをえなくなった人もいる。複数のペンネームを使う人もいる。

 一方、ペーパーバック出版そのものが、ある種の悪循環に陥りつつある。世の中では、非常に多くのペーパーバックが出版されている。それらは、ベストセラーとそうでないものに分かれる。ベストセラーは多くの部数が売れる。だが書店チェーン間の競争のためにばかばかしい値引きが加速され、その販売から多くの利益は得られない。

 そこで対策は、人々を書店へと向かわせ、買うつもりではなかった本も買うようにさせるしかない。ハードカバーが望ましいが、値引きされていないペーパーバックを買ってくれるかもしれないからだ。

 一方、大規模書店が開店するたびに、ショッピングモールの書店が店じまいする。この2つの店の違いは、大規模書店には、客は本を買うためだけに入るということである。ショッピングモールでは、Crate and Barrel(訳注:インテリアや日用雑貨の店)に来た客に本を売る。

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