百代の過客

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大阪学(大谷晃一)

2018年07月15日 | 読了!!

 私の父から送られてきた本です。 

 かなり、歴史や文芸、方言や言い回しなどに触れた章はとてもおもしろかったです。

 っても、風俗や文化について、とくに東京との比較のなかで大阪の特徴を浮き彫りにしようとした部分は、論の展開が強引な感じがしました。

 手に取って読んでみると、はじめに結論ありきでデータを(強引に)集めているような印象といえばいいのでしょうか。

 まあ、学術論文ではないので、いいといえばいいのだろうし。そもそもずいぶん昔の話だから、もしかしたら昔はそうだったのかもしれないけれど。

 ん~たしか、「大阪の神さん仏さん」という対談集のなかで高島幸次さんが、大阪の女性は豹柄の服が多いと言われているけど、実際に学生に調べさせたら、そうではなかった、といったくだりがあったような気がします。

 が、この本の筆者の主張パターンからすると、「大阪の女性は豹柄の服を着る人が多い。それは大阪の女性が東京と違って云々(ここは、ご自由に)だからだ」と言い張るのでは。しかし、そもそもその前提が正しいのか。間違ったデータに立脚して、論を展開しているのではないか。そんなふうに感じてしまうところが目につきました。

 なにかを教えたり伝えたりする仕事についている人は、教えたり伝えたりするまえに、それが事実かどうか考えて、調べないと。そういうふうに謙虚になる必要があると思っているけど、この本の作者は、どうかなぁ~。

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 指摘すればきりがないけれど、たとえば横断歩道の歩行者について、「大阪ではみながいち早く渡る中で青信号をじっと待っている方が、むしろ恥ずかしい気持ちになる。規則通り枠にしばられるのがいやなのである。(中略)、赤なら渡ってはいけないという観念よりも、目で見る現実に生きているのである」などと仰々しく書いているが、大阪の人の性格に由来する特有の現象なのかなぁ?

 大阪では多くの人が赤信号でも渡る。だから、大阪の人は規則通り枠にしばられるのがいや、という論法はどうなんだろう。そんな、精神論的な話なのだろうか。

 一昔前にはやった「日本人は特別」の大阪版かな?

 

 たとえば、東京の人でも、名古屋の人でも、福岡の人でも、大阪の道を歩けば、赤信号でも渡るようになると思う。

 なぜなら、信号が変わるのを待っていても、横から車がなかなか来ないから。待つ意味がない。

 大阪の人が合理的とか、そういうレベルではなく、当たり前では。

 逆に、「規則に縛られるのが嫌な」大阪の人が東京にいけば、信号を守るケースが多くなると思う。

 規則通り枠に縛られるのを嫌がって赤信号で渡れば、けがをするから。これも、合理的とかいう以前の話でしょう。

 

 大阪は幹線道路につながる路地が一方通行の場合が多く、幹線道路も一方通行が多い。

 たとえば、筋(タテ)が上下の一方通行の幹線道路。通り(ヨコ)が左から右の一方通行の路地として(四ツ橋筋などで、よく見かけるパターンです)。

               ↓ ↓  ↓ ↓

            |                   |

            |                   | A

----------                     --------

→   B            → 

----------                     --------

            |      C           | D

            |                    |

 Aに人がいて、下の方向に渡ろうとしているとする(Dの人が上に渡ろうとしている、でもいいけど)。

 信号はヨコ(通り)が青。ADの前、タテ(筋)は赤。

 このとき、一方通行のBから出てくる車は、多くがCに右折しようとする。

 さらに、このとき左から右の横断歩道は青のため、歩行者がいてBの車はなかなか曲がれない。

 Bの後ろに数台の車がいても、ほとんどが右折。直進の車はない。あってもBで詰まっているので進めない。

 

 大阪の道路では、こういう光景をよくみます。

 このとき、Aにいる歩行者は、車が来ないのに信号は赤。

 あなたなら、どうする?

 ここに、大阪の人の性格的な特徴はあまり関係ないと思います。

 子どもはともかく、普通の大人なら、渡るでしょう。

 というか、私(関東出身)はさっさと渡るほうですが、意外と周囲の人は、躊躇して渡らない。渡るにしても、おどおど。

 大阪の「赤信号でも渡る現象」は、大阪の道路の特徴でしかないと思います。

 

 いずれにしても、こうした我田引水というか、牽強付会というか、無理が通れば道理引っ込む的な主張が散見されました。

 大阪の人や街って、いいな~と感じていますが、無理に大阪を礼賛しなくても、いいのではないかな~というのが、読後感です。(まあ、歴史や文学のくだりは、面白かったし、それだけでも読むに値する本でした)

 と、ここまで書いて、ふと思った。

 「ギャグの本に、なにまじめに批評してんねん」

 そう思った人は、このブログの1~8段落目の最初の一文字を、声に出してみてください。

 

 あれ?

 言葉づかいが違う???


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