環境法令ウオッチング

2006年7月から2007年12月までの環境法令情報・行政情報・判例情報を掲載。

廃棄物処理法にみる行政処分と行政指導

2006-10-25 07:47:54 | 廃棄物適正処理
2006年10月25日 
 産廃最終処分場に、大量の医療廃棄物が不法投棄された疑いがあるのに県は十分な調査をしていないとして、地元住民が処理場を掘削して不法投棄量や投棄物の調査をするよう求める要請書を県に提出した、というニュースがありました。
 同処分場は、安定型処分場であるため、廃棄物の性状が安定している産業廃棄物である廃プラスチック類・ゴムくず・金属くず・建設廃材・ガラスくず・陶磁器くず(いわゆる安定五品目)以外を埋め立てることはできません。
 県の対応は、①2004年12月の調査を受け、業者を指導し、医療廃棄物は既に撤去させている、②現在も業者に対し、掘削して不法投棄物があれば撤去するよう指導している、と回答しているとのことですが、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)上、疑問の残る点があります。以下、あくまで報道の通りであると仮定して、検証してみたいと思います。

行政処分は適切か
 まず、廃棄物処理法の規定によれば、施設基準に適合しない処理が行われたことに対して、事業の停止命令、施設の使用の停止命令、改善命令、措置命令などの行政処分が発せられることになります。これらの行政処分による改善が不可能な場合、行政処分に従わなかった場合、対象となる行為の情状が特に重い場合は、許可を取り消さなければなりません(なお、これらの行政処分によらず、許可を取り消すこともできます)。
 これらの行政処分は事業の停止措置などの不利益処分(平成17年8月12日環境省通知環廃産発第050812002号)が伴いますので、発令前に行政手続法による弁明の機会の付与の通知がなされます。その後、弁明書の提出を経て、書類審理され、行政処分の発令となります(不服の場合は、行政不服審査法等による不服申立てによる救済へ)。
 上記の報道内容によれば、『調査を受け、業者を指導し、医療廃棄物は既に撤去させている』とされているため現状は改善されている、と考えることができます。しかしながら、『指導』の文字から推測するに、おそらく上記の手続を経ることなくいわゆる『行政指導』による指導がなされたのではないでしょうか。行政処分の場合は、『いつからいつまで(始期・終期)に、どのように改善せよ』というのが基本ですので、『現在も業者に対し、掘削して不法投棄物があれば撤去するよう指導している』という不完全な状態は事実上ありえないからです。一方、行政指導は行政処分ではなく、あくまで相手方の任意の協力を前提とするものですから、できるところから改善していく的な対応もありうることになります。
 廃棄物処理法をめぐる行政処分のあり方については、環境省から平成17年8月12日に『行政処分の指針について(通知)』(環廃産発第050812003号)がだされており、そのなかでは、法の趣旨にそった適正な行政処分を実施するよう明確に求められています。『豊田市産業廃棄物処理に係る行政処分の基準等に関する条例』のように、『行政処分の指針について(通知)』による運用を条例化している例もありますが、今回の事例のように実際の自治体現場においては、行政指導的な対応がまだまだ多い、というのが実状でしょうか(事例は、あくまで報道ベースの素材ですので、推測の域は出ませんが)。

【官報ウオッチング】
新しい情報はありません。

【行政情報ウオッチング】
経済産業省
意匠法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令案
意匠法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令案
商標法施行令の一部を改正する政令案
電気設備の技術基準の解釈の一部改正に関する意見募集について

国土交通省
建築物防災週間において行った各種調査結果の公表について
「国土交通省地域活性化戦略会議」の設置について

東京都
環境学習教室と花壇作りボランティアを募集

【判例情報ウオッチング】
 熊本地裁で、10月23日、「基準値を超えるダイオキシンが出ている」として産業廃棄物処理業者を相手取り、同産廃焼却施設の操業差し止めを住民が求めた訴訟の弁論があり、和解が成立しました。和解内容は、①定期検査で基準を超えるダイオキシンが検出された場合、業者は住民にデータを開示する、②業者は県・市の検査とは別に年1回ダイオキシン検査を実施し、住民に検査データの写しを交付する、③業者は住民の施設内立ち入りや写真撮影を認める、などとされています。同焼却施設については、1997年に許可が出された際にも、県知事に許可の取り消しを求める行政訴訟が提起され、「原告適格がない」と却下されていたものです。


ISO14001
◆「環境法令管理室」に「10月16日から10月22日までに公布された主な環境法令一覧」をアップしました/2006.10.22
◆「環境法令管理室」に「10月16日から10月22日までに発表された改正予定法令一覧」をアップしました/2006.10.22


2 コメント

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おはようございます☆ (ヒマワリ)
2006-10-26 08:12:03
行政処分されないように、自分達の出したゴミは責任もって捨てないといけないですね。
医療廃棄物は、感染とか、ケガのもとになってしまうから、ほんと慎重に捨てないとなぁ~。
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Unknown (o-gyousei)
2006-10-26 10:33:31
その通りですね。処理業者が該当する許可を有していることを知っていた場合、あるいは知ることができた場合には、排出事業者も措置命令(ここでは医療廃棄物の撤去及び適正処理)の対象となります。今回の報道によると、医療廃棄物の排出者である病院も告発の対象となっているようです。
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