惚れた相手

イモッチには好きな奴がいます。好きというよりも惚れているようです。今のお相手は『ぜんまいざむらい』です。「ぜんまいざむらい」というアニメの中の主人公の『ぜんまいざむらい』です。ややこしいですね。彼の名前を呼ぶと、頬を赤らめ、視線を落とし、思いっきり照れ笑いをします。アニメのキャラクターに惚れるなんて、変だけど可愛い奴です。

ママッチはイモッチとお風呂に入っている時、窓ガラスに彼の顔を書いてからかうのだそうです。頭のぜんまいの辺りまでは途中で止めると、「続きを書け」と急かすらしいですが、目とかを書き始めると慌てて消してしまうそうです。

『ぜんまいざむらい』はイモッチと同類の丸っこいキャラクターです。でも初恋のお相手は「でこぼこフレンズ」の『じょうろう』でした。こちらは超スリムでノッポ、ちょっとニヒル（死語？）な感じで『ぜんまいざむらい』とはまるで違うタイプです。イモッチは恋多き女なのでしょうか？

「アニメのキャラクターに恋しても片思いでかわいそう」と思われるかも知れませんが、それは逆で彼女の頭の中ではきっと楽しいデートをイメージしています。もしかしたら、『じょうろう』に水をかけてもらいながら大好きなビニールプールでバシャバシャ遊んでいるのかも知れません。こんな素敵なデート　人間が相手ではできませんものね。

自閉症はイマジネーションの障碍とも言われますが、それは全てにおいてではありません。自分の好きなこと、得意なことに関しては、イメージする力は十分あります。イモッチは時々、自分の世界へ入り込み、一人で大笑いをすることがあります。嫌なことがあった時は特にでしょうか。実際には何が見えているのかわかりませんが、もし多少でもコミュニケーションが取れるようになれば聞いてみたいもんです。

そして将来、本物の人間に恋する時が来るのでしょうか？そうなったら素敵ですね。例え片思いでも。淡い気持ち　体験して欲しいものです。

でも、その前にお父さんが照れくさい時期が来るといいんですけど、多分ないでしょうね。頭にぜんまいでも載せてみましょうか。