いわさきあきらの音人的生活

京都のキーボーディスト岩崎明のブログです。音楽の知識、機材の紹介、日記など。

☆キーボードプレーヤー列伝 第6回「デイヴ・グルーシン」後編

2009年06月24日 | キーボードプレーヤー列伝
 デイヴ・グルーシン(Dave Grusin)は、

 アコースティック・ピアノ、
 フェンダー・ローズ・エレクトリック・ピアノ

 と’70年~’80年のフュージョンの定番キーボードの他に、
 シンセサイザーも積極的にサウンドに取り入れていた。

 フェンダー・ローズは高温を強調した音でも、
 エフェクトを効かせた音でもなく、ナチュラルな音質だ。

 ドラマーのラリー・ローゼンと、
 GRP(グルーシン・ローゼン・プロダクション)を設立。

 オーディオ・クオリティーの高いレコード(ダイレクトカッティングのレコードも)、CDを続々と出した。

 ダイレクトカッティングのレコードは、
 録音しながら、レコードに溝を刻んでいくという、
 演奏のミスが許されないレコードなのだが、
 そういうレコードが出せるのは、
 かなりの確かなテクニックがある人なのだ。


 若い頃はジャズのレコードもリリースしていて、
 かつてあった河原町のジャズ喫茶で
 それを聴いたことがあるのだが、
 これは、なんだかもうひとつの出来だった。

 それがフュージョンという土俵で、
 様々なヒット作を出す人になったのは、
 クインシー・ジョーンズとの出会いが
 大きかったのではないかと思うのだが、
 詳しくはわからない。
 
 映画音楽から様々なミュージシャンのプロデュースなど、
 かなりの仕事量をこなす、
 大器晩成型、職人キーボーディストである。


デイヴ・グルーシン・プロデュースのCD

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☆キーボードプレーヤー列伝 第5回「デイヴ・グルーシン」前編

2009年06月22日 | キーボードプレーヤー列伝
 デイヴ・グルーシン(Dave Grusin)は、
 キーボード・プレーヤーとしてよりも、
 プロデューサーとしてのイメージの方が、最初は強かった。

 
 サックスの渡辺貞男は、
 ジャズといういかにも難しそうで、近より難そうな音楽を
 シンプルなメロディーを奏でて、ポップな音楽に仕立てた。

 そのプロデューサーがデイヴ・グルーシンだった。

「カリフォルニア・シャワー」
「マイ・ディア・ライフ」
「モーニング・アイランド」

 この3枚のアルバムはホントによく聴いた。


 和楽器とフュージョンをコラボレートした日本人、横倉裕。
 そのファーストアルバムのプロデュースもこの人だった。

 その他、アコースティック・ギターのアール・クルー、
 大御所ギタリスト、リー・リトナー、
 フルートのデイヴ・バレンティンなど・・・

 そのプロデュースの特徴は、ポップで明るく、聴きやすい。


 そのデイヴ・グルーシンのプレーヤーとしての最初のフュージョン・アルバムは、
「ワン・オブ・ア・カインド(ONE OF A KIND)」だと思う。

 プレーヤーといっても、やはり、プロデューサー、
 ソロのプレイよりもトータルの曲の完成度が印象的なアルバム作りだ。

 レコードの1曲目だった複雑な曲「モンタージュ」は、
 CDでは後半になっている。
 このスティーブ・ガッドのドラムがすごい。

 アルバムの完成度でいえば、
 この後の「マウンテン・ダンス(Mountain Dance)」がおすすめ。
 
 歯切れのよい、能天気な、とも感じるキーボードのリズム、
 アーティストというよりも、職人的な見た目とパフォーマンスが
 このデイヴ・グルーシンの特徴だと思う。


                  (後編につづく)


ワン・オブ・ア・カインド/デイヴ・グルーシン


マウンテン・ダンス/デイヴ・グルーシン


カリフォルニア・シャワー/渡辺貞男


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☆キーボードプレーヤー列伝 第4回「ジョー・サンプル」後編

2009年06月12日 | キーボードプレーヤー列伝
 ジョーサンプル(Joe Sample)は、

 フェンダー・ローズ・エレキピアノと
 アコースティック・ピアノがメイン・キーボードで、
 シンセサイザー系は、サブ的にアナログシンセはを使うぐらい。

 ローズはアタックを強調した音色で、
 歯切れの良いソロやバッキングのフレーズにフィットしている。

 ちょっと前にツッコんだように聴こえるぐらいのノリが、フレーズにスピード感を与える。


 メロディアスなフレーズとシャープなリズムのコントラスト、
 それが、ジョー・サンプルの最大の魅力である、と思う。


 キーボード・プレーヤーはアレンジャーとしての実力がある人が多い。
 ジョー・サンプルもまた、
 1stアルバム「虹の楽園」の名曲「メロディーズ・オブ・ラブ」での
 見事なストリングス・アレンジでそれを示している。

 もちろんピアノも素晴らしく、クラシック畑のピアノの人にもこの曲のファンが多い。


 フュージョン・ミュージックは、
 チック・コリアのような複雑で技巧的なものと、
 イージー・リスニング的なものに分かれていくが、
 ジョー・サンプルは後者の代表格。

 リチャード・ティーと並んで、
 私が最も影響を受けたキーボーディストの一人だ。


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☆キーボードプレーヤー列伝 第3回「ジョー・サンプル」前編

2009年06月10日 | キーボードプレーヤー列伝
 ジョー・サンプル(Joe Sample)を初めて聴いたのは、,
 クルセイダーズのアルバム「南から来た十字軍」のプレイだった。

 このアルバムの1曲目「スパイラル」。
 この曲で、初めてリズムというものを意識するようになる。

 スティックス・フーパーのドラムとロバート・ポップウェルのベース、
 いまだに自分の中でのNo.1リズムセクションだ。
 実は、この時耳を傾けるのは、キーボードのプレイよりも、
 リズムセクションの方がメインだった。

 正直、ジョー・サンプルのプレイはその時の私には難しすぎて、ついていけなかったのだ。


 その後、何枚かクルセイダーズのアルバムを聴いたのだが、
「これ良い!」と思う曲は、「スパイラル」も含め、すべてジョー・サンプルの作品だった。

 なので、ジョー・サンプルのソロアルバムを、すぐに買った。
「虹の楽園(Rainbow Seeker)」 これも、もちろん、レコード。

 クルセイダーズのリズムセクションで
 メロディアスな部分を前に出したこのアルバムは、大ヒットした。
 聴きやすく、カッコいい。
 このアルバムは色々な意味で、フュージョン・ミュージックの頂点に位置するアルバムだと思う。


 この後、なぜかフュージョン・ミュージックは急速に勢いを失い、
 80年代に入ると、時代は歌もの中心に移行していく。

 クルセイダーズもランディ・クロフォードをフューチャーしたりして、
 歌ものとフュージョンの融合を計る。
 そして、何曲かの名曲を生むが、
 結局、クルセイダーズは時代の波の中に消えていった。


                    (後編につづく)


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☆キーボードプレーヤー列伝 第2回「リチャード・ティー」後編

2009年06月08日 | キーボードプレーヤー列伝
リチャード・ティー(Richard Tee)の使うキーボードは、

アコースティック・ピアノ、
フェンダー・ローズ・エレキピアノ、
そしてオルガン(ハモンド)

と、キーボーディストとしては基本中の基本のようなセット。
シンセサイザーなどは使っているのは聞いたことがない。


それでいて、プレイを聴けば、すぐリチャード・ティーだとわかってしまう。
特に、フェンダーローズ(スーツケースタイプ)のスモールストーンのフェイザーを使った音色。
最近のプリセット式シンセでは、定番音色となっている。

これを使うと「リチャード・ティーのものまね」になってしまうので、使いづらい音だ。


自分自身のアルバムでは、歌も歌う。味のあるいい歌声だ。

私が1980年頃にジャケットが気に入って買ったのは、
写真の「ナチュラル・イングリーディエンツ」。
もちろん、レコード、でだが。

おすすめかと言われると、「う~ん」と言わざるをえない。
(でも、今聴くとまた違うかもしれないが・・)

リチャード・ティーの本領は、これだけの個性を持ちながら、
サイドメン、つまりバック・ミュージシャンとして最高に発揮されると思う。


これこそ自分の音という音色を持つことはミュージシャンの究極の目標でもある。
特に、キーボードにおいては、むつかしいと思うのだが、
それを体現した見本として、一度は聴いておくことをおすすめする。



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☆キーボードプレーヤー列伝 第1回「リチャード・ティー」前編

2009年06月07日 | キーボードプレーヤー列伝
 あれは私がまだ大学生だった頃、
 サックス・プレーヤーのトム・スコットのコンサートが京都会館であった。

 バックには、ドラムスのスティーブ・ガッドとピアノのリチャード・ティー(Richard Tee)の黄金コンビ。

 コンサート半ばでの、ピアノとドラムだけのセッション。
 強烈だった。

 その頃は、二人がいったい何をどうやっているのかはほとんどわからなかったが、
 とにかく強烈だった。


 ゴスペル、ブルース、ジャズ、そういったエッセンスはあるのだが、
 その演奏は、リチャード・ティー以外の何者でもありえない。

 これほどプレイを聞けば、すぐわかる個性のキーボーディストは、そうはいないだろう。

 アルバムはソロより、スタッフの1枚目、2枚目がいいと思う。(写真は2枚目の『モア・スタッフ』)
 その他、数限りなくスタジオミュージシャンとして参加した名演奏はある。


 1993年に49才でこの世を去る。

 際だったリズムとフィルで、ほとんど原型の判別がむつかしいほどアレンジされたジャズの名曲「Aトレイン」。

 You Tube にアップされている1988年のスティーブ・ガッドとの競演を見て、
 夜中にこみあげてくるものがあった。


                    (後編につづく)


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