10年間、肩こりと複視に悩まされ、辛い日々を過ごされていました。
下垂体卒中治療後のお客様です。
現在41才(女性)10年前より時々複視を自覚。
眼鏡店 → 眼科 → 脳外科の順で受診。
眼鏡店、眼科では「異常なし」の一言、確かに視力は良好だったご様子。
脳外科でようやく下垂体卒中が発覚。
発覚するまでの約10年、眼鏡店と眼科に何度も足を運ばれていました。
視力は良好・・・では視機能はどうだったのでしょうか?
下垂体は視交叉の後側にある為、視神経(動眼・滑車・外転)に影響を及ぼし易い場所。
つまり下垂体に症状が出た場合、眼球運動に支障がでる可能性は十分考えられます。
下垂体卒中で眼に現れる症状は視野狭窄、視力低下、複視。
下垂体は多くのホルモンを分泌する内分泌器官でもあります。
下垂体腺腫がホルモンを過剰に分泌するタイプの場合は様々な合併リスクの発症。
治療方法は薬物、手術療法です。
矯正値(遠)
R(右)S-5.50 C-0.50 AX180 4△Base down
L(左)S-4.75 C-0.75 AX180 12△Base in
PD69.0㎜
矯正値(近)
R(右)S-4.25 C-0.50 AX180 4△Base down
L(左)S-3.50 C-0.75 AX180 21△Base in
PD66.0㎜
処方値
R(右)S-5.50 C-0.50 AX180 4△Base down
L(左)S-4.75 C-0.75 AX180 6△Base in
PD69.0㎜
やはり強めのプリズム度数が検出されました。
まずは遠見時の複視を改善して行きたいと思います。
下垂体卒中術後直後なので、今後時間の経過とともに矯正値が変化する事もご説明。
手術後なので今後プリズム度数は低下する事が予想されます。
10年間、必死に耐えて頑張ってきた眼球と眼筋。
少しでも楽に見る事が出来れば幸いです。
糖尿病網膜症のお客様。
眼底出血、視野欠損、併発緑内障を発症。
眩しさとコントラスト低下を感じ、現在は遮光レンズを装用中。
しかし光量によっては見にくい場合もあるようです。
そこで今回はDRIVEWEARを試す事にしました。
現在の遮光レンズ使用状況(遮光カラー AC)
朝(△) ≦ 昼(△) < 夜(〇)
晴(×~△) ≦ 曇(△) = 雨(△)
遮光レンズ装用前
朝(×) = 昼(×) ≦ 夜(△)
晴(×) ≦ 曇(×~△) ≦ 雨(△)
※ 〇(眩しさを感じにくい) △(眩しさをやや感じる) ×(眩しさを感じる)
遮光レンズのカラーACはイエロー系の色目。
基本的にコントラストアップ効果が高い色目なので夜間に効果を発揮しているのでしょう。
問題は晴天時と朝~昼に掛けての眩しさ。
カラーACの分光透過率曲線を見てみましょう。
続いて遮光レンズの中でも波長カット率が高いカラーFRの分光透過率曲線。
グラフを見て分かる通りカラーFRは光を良くカットしています。
一見するとカラーFRが優れている様に見えます。
しかし、両者にはメリットとデメリットが存在します。
FRは光を遮る分、同時にACに比べると「暗さ」を感じます。
AC→FRに色目が変化するレンズがあれば理想的です。
明るいときはFRカラ―、夜や雨、曇りの日にはコントラストアップが狙えるACカラ―。
今回のお客様も「そんなレンズがあればぜひ試したい」と一言。
そこで、ドライブウェアを試して頂く事になりました。
ドライブウェア(偏光 + 調光 + コントラストアップ + UV機能)は光の強さによって色が変化します。
晴 → 曇 → 雨 明るさに比例してレンズ色が変化 濃 → 薄
その時々の明るさ(状況)によって色が自動で変化するドライブウェア。
この試み、網膜症には遮光レンズとドライブウェア、どちらが有効なのでしょうか?
結果が出ればご報告したいと思います。
女性に多く発症する甲状腺眼病(バセドウ病・橋本病)バセドウ病は女性の1/500で発症。
甲状腺眼症は眼球運動障害を発症すことも多く、プリズムにて矯正する症例があります。
◆甲状腺の機能
甲状腺からは甲状腺ホルモンが血液の中に分泌され、全身に働いて体を温めたり、体のさまざまな成分をつくったりして体を元気にしています。
甲状腺ホルモンは多過ぎても少な過ぎてもいろいろな症状が出てきます。
多過ぎる場合が甲状腺亢進症(正確には「中毒症」バセドウ病・橋本病)になり、少ない場合は甲状腺機能低下症になります。
◆甲状腺眼症の症状
眼瞼腫脹・眼瞼後退・結膜充血→症状進行→眼球突出・外眼筋腫大・眼球運動障害・眼圧上昇・眼窩痛・稀に神経障害
◆眼位変化
外眼筋の肥厚化、下直筋が最多で上転障害、外方向へのズレを伴う事が多い。
◆治療
MRI・CTの撮影
ステロイド薬の全身投与・パルス療法・放射線治療・炎症沈静後の斜視手術を行う事も。
今回のお客様は40代後半で2年程前に甲状腺眼症と診断。
1年前からディプロピアの発症、プリズムレンズにて矯正となりました。
処方値
R(右)S+0.25 3△Base Up
L(左)S+1.50 C-0.50 AX100
PD57.0㎜
(視力差も考慮し右目にプリズム加入しています)
上下ズレは最大で6△(Prism)のズレ、左右は外方ズレ。
プリズム眼鏡は初めての装用、違和感を考慮し先ずは上下ズレを半分矯正。
慣れと共に少しずつプリズム量を増やして行く予定です。