新潟久紀ブログ版retrospective

新行政推進室11「恒久的な仕組みを残す~ISO9000s,MB賞~」編(その4)

●恒久的な仕組みを残す~ISO9000s,MB賞~(その4)

 アドバイザー確保は順調なのだが、その面談を通じて一つ気になることが浮かんできた。ISO9001も経営品質賞も共通して根本原則としている「顧客本位」は、奇しくも新行政推進室が取りまとめた21世紀の県行政創造運動の基本理念である「県民起点」と同義であり、両制度を参考として行く上で親和性が高いのであるが、県民起点と言い始めたのは最近であり、そうした理念に基づく取り組みの展開を考えた時に、現在の県庁組織がスムーズに受け入れられるような意識水準にあるのだろうかという不安だ。
 長きに亘り役所業務の主流は許認可など「規制行政」であった。監視監督し、県民からの申請を待って、抑制的なスタンスで認めていくというものだ。そうした業務を通じた意識や風土が綿々と蓄積されて今がある中で、途端に「県民起点」だ「顧客満足」だとの理念や、目指す「新潟県庁版の仕事の進め方の品質を確保する仕組み」を、有識者の助言を得ながら、できるだけ分かり易くて職員の作業負荷を抑えた制度にするにしても、いきなり職員に示すことは、現実的にはハレーションを招きそうだ。
 仕事の品質確保のための制度づくりの構築には、既存の制度を参照するにしても、有識者から助言を受けながらであることと、庁内的意思決定の所要時間等を考えると、半年前後は掛かるであろう。それまでの時間を単に空白期間にするのではなく、制度ができあがった時に広く県職員にスムーズに普及浸透させていけるような素地を作る時間に充てようと考えた。
 「県民起点」の理念を浸透させるには、お経のようにその文言を唱えるのではなく、分かり易いイメージと具体的な方法を示すことで、実践を通じて心身に染みこませることが効果的であろう。市町村役場に比較して窓口業務が少ないとはいえ、やはり、県民と直接対応する業務を持つ職場における対応というのが、実践の場として最重要となる。先ずは、そうした窓口業務で推奨すべき行いについて例示して実践を促し、そうした業務のバックヤードにいる内部管理業務に関わる人の意識付けにもつなげようと考えた。
 早速、窓口業務のサービス向上に関する内外の取り組み情報を収集してたたき台を作り、アドバイザーから助言を受けながら、「窓口サービスの質の向上のための指針(サービス指針)」として制作し、職場に掲示できるようポスターにして、本庁と出先の全職場に配布した。
 ポスターでは「新潟県では、窓口を通じて提供するサービスについて、できる限りご満足していただくため、ご利用される県民の皆様の立場に立って考え、「質の向上」という視点で改善してまいります」として、「こころよい」「わかりやすい」「納得のいく」をキーワードにサービス提供にあたっての具体的取り組みを例示し、最後に「意見等を把握して反映させる」と記す。行政手続きの進め方など無形のサービスであっても「質」という視点で考えるということが目新しい。ISO9001や経営品質賞の考え方を引用していくという今後に向けた布石だ。
 案の定、「サービス指針ポスター」については、職員から苦言も届いた。すなわち「県民起点とは窓口業務のある職場だけの取り組みなのか」と。アドバイザー達と情報共有すると、「苦情であっても反応してくれることは何より。無関心が一番の敵。」と声を揃える。「ネガティブな反応なども引き合いにしながら、品質向上の議論に内部管理部署も巻き込んで行けばよいのですよ」というのだ。
 サービス指針ポスターの配布に際しての初度の問い合わせや照会への対応が一息つく頃、ISO9001と経営品質賞を参考とした品質確保のためのたたき台が、仕事の進める上で点検すべき数項目を列挙する形として見え始めてきた。それが机上論でなく、現場で活用される実効性を伴うものとして仕上がるよう、県内の基幹的な地域機関の会議室を借りて都合の付く職員を広く参集し、アドバイザーを招聘しての意見交換会を順次開催した。
 やはりアドバイザーを擁しての意見交換会は非常に盛り上がるものであった。ISO9001だの経営品質賞だの、私のような青二才が聞きかじりでもっともらしく説法しようものなら、理屈屋皮肉屋が多いと私が常々思っている県職員たちから、相当な苦情や抵抗を受けて"しどろもどろ"していたかもしれない。例えば、「サービス向上至上主義として、許認可行政などにおいてルールをねじ曲げてでも県民の要望を叶えろというのか」という曲解論者に対して、アドバイザーが「何でも県民の要望どおりにしようというものではなく、"できないことはできないと分かり易くしっかり伝えること"がサービス向上になる。その方法を書き表して明確化し、職員誰が対応しても格差が無くなることが品質を確保する改善計画になる」などと応えながら、対応を仕組みとして構築することを諭すといった具合だ。

(「新行政推進室11「恒久的な仕組みを残す~ISO9000s,MB賞~」編(その4)」終わり。「新行政推進室12「恒久的な仕組みを残す~ISO9000s,MB賞~」編(その5)」に続きます。)
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