新潟久紀ブログ版retrospective

新行政推進室10「恒久的な仕組みを残す~ISO9000s,MB賞~」編(その3)

●恒久的な仕組みを残す~ISO9000s,MB賞~(その3)

 「仕事の進め方の点検を通じて改善が継続される仕組みを構築したい」。全ての職員が自らの仕事を洗い直し、全ての職場で組織的に、ひいては県庁全体として。これが、一時的・単発の成果に終わらず、時代や顧客たる県民のニーズの変化に対応しながら恒常的に高い品質で行政サービスを提供し続けていくことに繋がる。これこそ新しい行政のシステム構築ではないか。
 県職員の異動サイクルは概ね3年前後。新採用当時から、「在職期間内に自分独自の仕事の成果を残す」というのを密かに自分に課していた。組織的な業務が多い中で、ましてや若く下っ端の自分ごときが、目に見えて残せる足跡というのは大したものには出来そうにないのだが、前例のない対応の決裁文書の起案者としてでも良いし、安上がりの自作マンガのパンフレットでも良いと思っている。新行政推進室に設置時限があって、私自身も何時異動するかは分からないが、不適正支出等の問題後に新設されたこの部署で、"仕事の進め方の品質を確保する仕組み"づくりを自分の成果と言えるものにしたいと意を強くした。
 ISO9001と経営品質賞のどちらか一方を選択して傾注すれば正規の審査費用など大きな負担となるが、双方からの"良いとこ取り"により、模倣と指摘されない程度に参考にして、県行政サービス版として新潟県オリジナルの仕組みを作り出せば、ぼぼ無料とできるだろう。しかし、参考とするにしても、両制度の関係者から、それを許容していただく必要があるし、なによりも行政サービス版への造り替えの内容の妥当性について評価していだたき、オーソリティを纏わせる必要がありそうだ。
 そこで、若くて怖いもの知らずだった私は、ISO9001と経営品質賞を参考として、対処療法でなく"仕事の進め方の品質を確保する仕組み"を独自に作りたいと提案。それに併せて、それぞれの権威者というか伝道師のような人と直接面談して、制度を参考にすることへの理解に加えて、図々しくも、それぞれの制度を県行政版に読み替える取り組みに有識者として協力をお願いしたい、と上司に相談してみた。後に副知事になる上司は一言「やってみろ」と言ってくれた。趣旨の理解を頂けたことはもとより、何かあれば俺が尻拭いしてやる、といった表情見せてくれたのが何よりも嬉しかった。
 かくして、具体の作業に入る前に、県として全くお付き合いの無い有識者を捜し当てて突撃的に訪問することとした。先ずはISO9000シリーズの日本における認証機関で行政分野を担当する審査員。実際に他県の市役所でISO9001取得審査も対応した人にアポ取りをして赤坂の本社に単身で乗り込んだ。お相手頂いた主任審査員は、取り組みの趣旨を好感をもって理解してくださり、直接ISOを取得しようというのではないので審査委託料などお支払いできるものではないのですが…と恐縮がちに話す私に対して、アドバイザーとして安い謝金で取り組みに助言をくださることに快諾していただいた。
 余談になるが、私が県の財政状況の厳しさを殊更お話ししたためなのか、もしくは若い公務員の安月給を哀れんでくださったのか、面談の終わりが丁度お昼休み時間になったところで、「遠いところをご苦労様でしたので近くに案内しますよ」と、マグロの漬けを縁に散らした穴子丼をごちそうしてくださった。それがまた絶品であった。
 調子づいて、数日後には日本経営品質賞の審査委員として中核を務める外資系大手のコンピュータサービス関連企業の幹部職員にアポが取れた。有難いことに当県出身ということで、新潟県に寄与できるならと、即座にアドバイザーとなることをご快諾いただいた。更に、今回のオファーを縁に「新潟県経営品質賞」を創設したいと言う。予算が無い状況を告げると、経営品質賞制度は、審査と併せて組織体の運営に要する財源や利益を求めようというものではなく、"善い行い"が広く普及するため伝道師のように展開しているもの。若干の旅費や謝金で対応できると明言されたので、それならば職場の庶務係長役の私でも調整が付けられそうだ。
 これも余談になるが、訪問した東京の本社ビルは改築直後であったが、外装内装の新しさはもとより、面談した応接室の広さや都内を見渡す眺望の良さなど、これが世界標準かと思わせる圧倒のしつらえであった。聞けば、日中3000人程度が勤務しているといい、レストランから生活用品の買い物まで用が足りる複合ビルの様相を呈していた。新潟県内の一つの町の人口ほどが日中集う最新の建物を見上げた帰り際に、同じ"ヒト"が生活する場としての東京と地方の格差が強烈に印象に残ったものだ。

(「新行政推進室10「恒久的な仕組みを残す~ISO9000s,MB賞~」編(その3)」終わり。「新行政推進室11「恒久的な仕組みを残す~ISO9000s,MB賞~」編(その4)」に続きます。)
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