新潟久紀ブログ版retrospective

柏崎こども時代45「卒業祝いの自転車選びで落胆(その1)」

●卒業祝いの自転車選びで落胆(その1)

 昭和半ばの柏崎市立比角小学校での学童生活もいよいよ終わりとなる6年生の春休み。当時の近所界隈では中学校に進学するのに合わせて24インチのいかにもお子様用の自転車から26インチ以上のお兄さん向け自転車に買い替えるのが一般的で、私も年明け早々くらいからどんな自転車を親にねだろうかと考えていたものだ。
 小学4年生くらいの時に買ってもらった既存の車両は、何の変哲もない子供用自転車だったのであるが、購入後の暫くしてからえらく派手な電飾やらギミックを装着した自転車が大ブームとなった。小学生だと通学は徒歩の範囲であり近所の友達の家や公園に行く程度しか使わないはずなのに、5段変速とか12段変速とかメカニズムが必要以上に複雑化するばかりか、ヘッドライトがツインになるのは当然で、それがリトラクタブル式(!)になったり、その下にフォグランプが付いたり、果ては方向指示ランプがしかもフラッシャー式で装備されたりと、”デコトラ”も顔負けするほどのエスカレートぶりだった。
 テレビコマーシャルで毎日のようにそんな車体を格好の良い演出で見せられていると、男の子というのは単純なもので、必要性など考え無しに欲しくなってきたものだ。
 しかし、裕福では無かった我が家ではそんな流行りに応じて自転車を買い替えられるわけもなく、同級生が派手なデコレーションの自転車に乗り換えたのを羨ましがっているだけだったのだ。
 一方で私は、貧乏性がすっかり身に染みていたのか、あまりにも過剰な商品に対して何か批判的に見るクセもあって、流行りに乗せられて高価なものを買わされるのはあまり利口な事ではないという冷めた目線も持つ子供であった。気障に言えば費用対効果を見極める強かさがあったというか、素直に言えばひがみっぽかったというかだった。
 そんな私は、幼いころから煌びやかなものへの憧れと豊かでない経済力をバランスさせることに面白みを感じるところがあって、このたびの装飾系自転車ブームに対する葛藤についても、何か自分なりに折り合いを付ける術を模索しながら日々を過ごしていた。
 何かを意識しながら周囲や物事を見ていると、何か得るものがあるもので、その機会はなんと小学校が町内会と協働して行ったボランティア活動の中で到来した。
 それは「廃品回収」と呼ばれていて、住んでいる町内会単位で小学生がグループになり、その親たちも参加して、リヤカーを引きながら一軒一軒を回り、コーラの瓶やら空き缶、古紙などいわゆる資源ゴミを回収して集めて地域の引き取り業者に持ち込んで売り払い、収益を小学校の備品購入などに充てようという取組だった。
 私は、業者の値踏みを受けながら廃品をリヤカーから降ろしていると、少し離れた廃品の山に目が奪われた。
 そこは電気器具の廃品がまとめられた区画だったのだが、透明のビニール袋に封入された直径5cm程の丸いオレンジ色のプラスチック製発光器具が2つであり、それは自転車装着用の方向指示用ランプであることが分かった。
 未使用の状態で、自転車のフロントホークへの取り付け金具やフレームに着ける電池ケース、ハンドルバーに着ける点灯切り替え用のスイッチなど一式が綺麗なまま目の前にあったのだ。
 恐れを知らぬ当時の私はズケズケと業者のおじちゃんに「これを貰えないかな」と尋ねてみた。そばにいた私の母親は「大事な商売モノだから馬鹿なことを言わないで」とたしなめてきたが、黒々と日焼けしてねじり鉢巻きにひげを生やしたその人は「ああいいよ」と意外にも簡単に了解してくれた。新品とはいえ金属やらプラやら複雑に絡んでいる物品は捌くのに面倒らしい。今回の廃品回収の実入りの具合も機嫌を良くしていたのかもしれない。
 思わぬ収穫を大喜びで自宅に持ち帰り、工具を持ち出して早速、自分の質素な子供用自転車に取り付けたものだ。ハンドルの右手側手元に着けた切り替えスイッチを動かすと、フロントホークのオレンジ色のランプが点灯する。スイッチの切り替えで右が点いたり左が点いたり両方点いたり。さすがに点滅機能は無かったのでスイッチをカチカチ動かして点滅させてみたり。一人で大興奮して大騒ぎしたものだ。
 タダで手に入れたギミックを装備した自転車は、市販品には無い唯一無二のモノということも私の気に入りのポイントとなり、小学6年生の夏を過ぎた頃はガタガタになるほどに正に乗りつぶすまで使い込むことになった。こうした経緯もあり私としては、中学生進学を機にした自転車の買い替えを、新しい愛車への期待も最高潮のタイミングで迎えようとしていたのだ。

(「柏崎こども時代45「卒業祝いの自転車選びで落胆(その1)」」終わり。仕事遍歴を少し離れた実家暮らしこども時代の思い出話「柏崎こども時代46「卒業祝いの自転車選びで落胆(その2)」」に続きます。)
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