中国貴州省とそこで暮らしている苗族トン族等の少数民族を紹介しています。

日本人には余り馴染みのない中国貴州省と、今私が一時滞在中の雲南省や大理白族自治州大理古城について

放牛、放羊、放鴨について

2013年08月11日 | 中国農村

中国には放牛、放羊、放鴨等という言葉があります。これは、家で飼っている牛、山羊、アヒル等を屋外に連れ出し、牛や山羊、アヒルに草等の餌を食べさせる事を意味するようです。以前は、この放牛、放羊、放鴨子は、農村部では子供が行う大事な仕事の一部でした。以前は中国の農村部を訪れると、子供達が放牛、放羊をしている光景を良く見かけたものです。

中国では、農村部での義務教育段階での完全無償化が全面的に実施されたのは、漸く2007年になってからですから、それ以前には、中国の農村部に行くと実に多くの子供達が学校には通っていない実態を目にしたものです。「今日は日曜日では無いはずなのに、どうしてと」と思う程、多くの子供達が平日にも、田畑で農作業等の手伝いをしている光景を目撃したものです。

2000年中頃以降は、中国の農村部でも、名実共に小中学校段階での義務教育の本当の意味での義務化、無償化が進んで子供がほぼ全員学校に通うようになり、平日に子供達が農作業をする光景も見られなくなりました。それでも、学校が休みの日や、夏休み等には、子供が放牛、放羊をする光景は今でも良く見られます。

放山羊をしているところ。貴州省や雲南省では黒山羊が最高に美味しいとされているようで、白山羊より、この黒山羊の方が値段が高いです。無論傍らには、人が居て畑等の農作物を荒らさないよう見張っています。

 

こちらは白山羊の放羊で、このように人が山羊が畑や田圃の農作物を食べないよう見張っています。

 

こちらは放牛からの帰りで、夕方放牛を終えて牛を連れて家に戻る所。水牛、黄牛が居ます。


こちらは水牛を連れて、放牛に向かうところ。この村では11月行われる芦笙祭りの祭には、水牛を屠り食べます。この村では水牛を屠る時は、水牛の首を絞め窒息死させます。私も水牛の肉を食べましたが、黄牛やヤク等の肉とどう違うか良く分かりません。

 

こちらの写真は、子供が水牛を、外に連れ出し水浴びさせているところ。自分でも水浴びをしていますが、水牛に水浴びさせるのも放牛の一部。

 

こちらの写真は、アヒルを連れて、放鴨に行く人。アヒルは主に田圃の中に放し、田圃の中の雑草を取り、その排泄物は栄養となる。アイガモ農法と同じ様です。


牛や水牛は役牛として、中国貴州省の農村部等では現在も活躍しています。雲南省では、茶葉古道等でも「馬幇」が活躍した歴史もあるので、場所によりますが牛より馬が多い印象を受けます。が、貴州省農村部では水牛や黄牛が多いようです。

 

7月中旬に貴州省の从江県のある村に祭りがあるというので出かけました。その村は度々訪れた村で、去年行った時に一緒だった学生と共に、撮った写真を子供に渡そうと思い、その子供の家を捜し当て訪ねた所、家の人が言うには「子供は今家に居ない、山へ放牛に出かけている」との返事でした。出来れば直接子供に写真を渡したかったので「子供は、お昼に家に戻るのか」と尋ねた所、「お昼時には、戻らないが夕方には子供は戻る」という話でした。私達も昼には、その村を離れる事になっていましたので、家の人に写真を手渡してきましたが、農村部ではこのように家の農作業を手伝い、夏休みを過ごす子供たちが圧倒的に多いようです。実を言えば、「放牛」とは言え、お昼には一度家に戻ると勝手に思い込んでいたので、朝家を出て、夕方ようやく放牛から戻ると言う事には少し驚きました。

最近日本語科のある学生と「放牛」が話題になった事があります。その学生は、貴州省の農村に生まれ、育った学生で中学校迄は、農村で生活していたそうです。当然、家の農作業の手伝いも、日常茶飯事で毎日したそうで、家ではお茶も栽培していたので、お茶摘みの経験もあるとの事です。土日や学校が休みの時には、当然「放牛」もしたそうで、放牛をしたその頃の思い出をいろいろ楽しそうに話してくれました。なんでもその学生の話に拠れば、暗くなると牛は独りでも家に戻るそうで、それがとても不思議だとも話していました。

その学生の話ではある時、日本語科の授業で「放牛」が話題になったそうです。その学生は日本語科の一年生で、それも日本語習い始めて半年位の時ですから、「放牛」と言う言葉を、日本語で説明するのは大変難しかったようです。中国語も交え「放牛」という言葉の意味を、その授業を担当している日本人の若い教師に説明したものの、最終的には、なんでも「放牛」と言う言葉の意味は「牛を連れて散歩する」と言う風に理解されてしまったそうです。

それで、その若い日本人教師は、「はー あなたは、牛を連れて散歩するのですか 」とトテモ奇妙に思ったようだと、大笑いしながら私に話してくれました。実は、この学生は私がある大学で日本語の教師をしていた時、私が教えた生徒でもありますが、純農村部で生まれて、育った大学生というのは、最近は中国でも思いのほか少ないようです。最近は貴州省内の大学に通う大学生の中でも、実際に「放牛」を経験して学生は少ないと思いますが、私は、幸運にもこの「放牛」の経験もある学生が生まれ育った農村やその実家を見る事が出来て私にとり、とても貴重な体験となりました。

 

 

 



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