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百億の星ぼしと千億の異世界

SF、ファンタジー、推理小説のブログ。感想を出来る限りネタバレしない範囲で気ままに書いています。

ジョージェット・ヘイヤー 『紳士と月夜の晒し台』(1935)

2013年02月23日 | 外国推理

GEORGETTLE HEYER Death In The Stocks
猪俣美江子:訳
カバーイラスト=田地川じゅん
カバーデザイン=内海由
(◎2011/創元推理文庫 127 11)


月夜の晩、ロンドンから離れた村の広場で、晒し台に両足を突っ込んだ紳士の刺殺体が発見された。動機を持つ者にはこと欠かないが、浮世離れした容疑者たちを前に、ハナサイド警視は苦戦する。そんなとき、思わぬ事態が発生して……。ヒストリカル・ロマンスの大家として知られる一方、セイヤーズも認めた力量を持つ著者による、巧みな人物描写と緻密なプロットの傑作本格ミステリ。

英国で黄金期に書かれたロマンスの巨匠による知られざる本格ミステリ。よって推理と並行してロマンスも進行していきます。この絡ませ方がまた絶妙なんです。画家ケネスとその妹トニー(アントニア)は相当に面白くて、特にケネスの変わり者ぶりはセイヤーズ女史のかのピーター・ウィムジイ卿を少し思い起こさせます。まぁ、ピーター・ウィムジイ卿に比べたらまだまだひよっこですけどねwww トニーはこの前読んだ『黄衣の王』のトレッサ・ノーンにも通ずる愛らしさがあって、大変好感が持てました。探偵役を務める弁護士ジャイルズは最初登場した時はキザなヤツかと思いましたが、実はいいヤツでしかもカッコ良かったw 犯人は後半になってわかっちゃいましたけど、微笑ましく読めました。物語も面白かった~♪ 次作『マシューズ家の毒』も必ず読みますよ。

パーシヴァル・ワイルド 『検死審問ふたたび』(1942)

2013年02月01日 | 外国推理

PERCIVAL WILDE Tinsley's Bones
越前敏弥訳
(創元推理文庫 M ワ 1 2 274 05)


リー・スローカム検死官が、ふたたび検死審問をおこなうことになった。今回の案件は、火事に巻きこまれて焼死したとおぼしき作家ティンズリー氏の一件。念願の陪審長に抜擢され、大いに張り切るうるさがたのイングリス氏は、活発に意見を述べ、審問記録に注釈を加え、さらには実地検分に出かける気合いの入れよう。はたして、いかなる評決が下るのか。傑作『検死審問』の続編登場。

前作も今作もどちらも面白かったんですが、個人的には本作のほうが前作よりも読後清涼感があって好きです。スローカム閣下のとぼけた味わいもいいんですが、証言台に立つ消防団長のハンク・ブルーイットがかっこいい。他にも不動産業者、菌類学者、ティンズリー氏の後妻と前妻…とさまざまな人が証言台に立ちますが各人個性豊かで、とくに菌類学者のエリザベスが楽しめました。前作もそうでしたが、作者パーシヴァル・ワイルドの妙はキャラクター作りの上手さにありますね。そしてとぼけたスローカム閣下と生真面目な陪審長イングリス氏との対比のさせ方。この陪審長キャラは前作から引き続きの登場ですが、生真面目だけれどもけっして嫌味にならず、むしろ好感が持てるのは根が悪い人じゃないからなんでしょうね。さらには陪審員の一人であるフェンウィックは、夫が亡くなってまだ一週間もたっていないティンズリー氏の後妻ベティと駆け落ちしようとして……。本書のラストに詩が出てくるんですが、この詩って向こうの国ではある程度知られた詩だったのでしょうか…。

パーシヴァル・ワイルド 『検死審問 インクエスト』(1940)

2013年01月24日 | 外国推理

PERCIVAL WILDE Inquest
越前敏弥訳
カバーイラスト=田地川じゅん
カバーデザイン=本山木犀
(創元推理文庫 Mワ1 1 274 04)


リー・スローカム閣下が検死官としてはじめて担当することになったのは、女流作家ミセス・ベネットの屋敷で起きた死亡事件だった。女主人の誕生日を祝うために集まっていた、個性的な関係者の証言から明らかになる真相とは? そして、検死官と陪審員が下した評決は? 全編が検死審問の記録からなるユニークな構成が際立つ、乱歩やチャンドラーを魅了した才人ワイルドの代表作。

古典の新訳。どんでん返しをさらにどんでん返した(?)ラストは、作中で登場人物である女流作家ベネットがこだわった勧善懲悪の作者なりの解決方法だったのでしょう。このラスト、まさに「死人に口なし」でイマイチ読後の清涼感こそ味わえませんでしたが、内容に引き込まれて頁を捲ってしまったほどに面白かったのも事実です。特筆すべきは各キャラの立っていること! どことなくとぼけた味わいのある愛すべき検死官リー・スローカムは言うに及ばず、その主役を食ってしまうほどのミセス・ベネット、そして誕生日に招かれた面々…個人的にはミセス・ベネットの娘アリスともうお一方とのエピソードをもう少し描いてもらいたかったところですが、逆にこのくらいで抑えておくのが甘さに流されずちょうど良かったのかなぁ? それにしてもこの時代の検死官ってもの凄い権限が与えられていたんですねw 続編『検死審問ふたたび』を続けて読みます♪