Oracle RAC(Real Application Clusters)とCockroachDBは、どちらも分散データベースシステムですが、設計思想やユースケースが大きく異なります。どちらが「良い」かは、要件に依存します。以下に比較ポイントを整理します。
---
### **1. 基本特性の違い**
| **項目** | **Oracle RAC** | **CockroachDB** |
|------------------------|----------------------------------------|------------------------------------------|
| **タイプ** | 共有ストレージ型クラスタ(集中型RDBMS) | 分散型NewSQLデータベース(クラウドネイティブ) |
| **ライセンス** | 商用(高コスト) | オープンソース(Enterprise版もあり) |
| **スケーラビリティ** | 垂直スケーリングが主流 | 水平スケーリングに最適化 |
| **データ整合性** | ACID厳格遵守(金融・基幹系向け) | ACID(分散トランザクション対応) |
| **可用性** | 高可用性(ストレージ依存) | マルチリージョン耐障害性 |
---
### **2. 選定基準**
#### **Oracle RACが向いている場合**
- **既存のOracle資産**(PL/SQL、ERPシステムなど)を活用する必要がある。
- **高いトランザクション性能**(特にOLTP)と強固なACID保証が必須(例:金融システム)。
- **サポート契約**を含むエンタープライズ向けソリューションが必要。
- 共有ストレージ(SAN/NAS)環境が利用可能。
#### **CockroachDBが向いている場合**
- **クラウドネイティブ**または**マルチリージョン展開**が必要。
- **水平スケーリング**(ノードの追加で性能向上)が求められる。
- **オープンソース**またはコスト効率を重視する。
- 地理的に分散したデータ配置(低レイテンシー要件)に対応したい。
---
### **3. パフォーマンスと運用**
- **Oracle RAC**:
- 複雑なチューニングが必要だが、大規模なトランザクション処理に強い。
- ストレージのボトルネックやキャッシュ整合性管理が課題になる可能性あり。
- **CockroachDB**:
- 自動シャーディングとレプリケーションにより、スケールアウトが容易。
- 分散トランザクションのオーバーヘッドがあるため、超高頻度OLTPでは注意が必要。
---
### **4. コスト比較**
- **Oracle RAC**:
- ライセンス費用(プロセッサ数ベース)、ストレージ、専門DBAの確保が必要。
- **CockroachDB**:
- 無料のCommunity版あり。Enterprise版はOracleよりコスト効率が高い場合が多い。
---
### **結論**
- **伝統的な基幹システム(銀行、ERPなど)** → **Oracle RAC**
- **クラウド活用・グローバル分散・スケーラビリティ重視** → **CockroachDB**
特に、クラウド移行やマイクロサービス化を進めている場合、CockroachDBの柔軟性が有利です。逆に、既存のOracle環境と深く連携する場合はRACが適しています。
要件に応じてPoC(概念検証)を実施することをおすすめします。