### **CockroachDBのセキュリティ上の主な欠点**
CockroachDBは分散SQLデータベースとして高い可用性とスケーラビリティを提供しますが、従来のエンタープライズ向けRDBMS(Oracle RACなど)と比べると、セキュリティ面で以下の課題があります。
#### **1. 細かいアクセス制御の不足**
- **行レベルセキュリティ(RLS)や列レベルのマスキング**がPostgreSQLほど成熟していない(CockroachDBはPostgreSQL互換だが、完全ではない)。
- **ロールベースアクセス制御(RBAC)**は基本的な機能のみで、Oracleの**Virtual Private Database(VPD)**のような高度なポリシー制御ができない。
#### **2. 監査機能の限界**
- **組み込みの監査ログ**が貧弱で、詳細な操作追跡(誰がどのデータを変更したか)にはサードパーティツール(Fluentd, ELKスタックなど)の連携が必要。
- Oracleの**Unified Audit Trail**のような包括的な監査機能が標準でない。
#### **3. 暗号化の制約**
- **Transparent Data Encryption(TDE)**はサポートされているが、Oracleのような**自動暗号化キーローテーション**や**HSM(Hardware Security Module)統合**が弱い。
- クライアントサイド暗号化(Always Encrypted的な機能)の標準サポートなし。
#### **4. ネットワークセキュリティの設定複雑さ**
- マルチクラウド/分散環境では、**ノード間通信(TLS設定)**や**クライアント認証**の管理が煩雑。
- Oracle RACのような**専用ネットワーク(Interconnect)の分離**機能がなく、攻撃面が広がるリスク。
#### **5. エンタープライズ向け認証連携の未成熟**
- **Kerberos**や**Active Directory統合**は可能だが、Oracleの**Enterprise User Security(EUS)**ほどシームレスでない。
- 多要素認証(MFA)のネイティブサポートが弱い。
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### **CockroachDBをOracle RAC並みに堅牢化する方法**
CockroachDBのセキュリティを強化するには、**機能の不足を外部ツールや設計で補う**必要があります。以下は具体的な対策です。
#### **1. アクセス制御の強化**
- **ロールと権限の厳格化**
```sql
-- 例: 特定テーブルの行レベルフィルタリング(WHERE句で擬似的にRLSを実現)
CREATE VIEW restricted_data AS
SELECT * FROM sensitive_data WHERE tenant_id = current_user_tenant();
```
- **サードパーティツール利用**
PostgreSQL拡張(PGラッパー経由)や**ProxySQL**でRLSを模倣。
#### **2. 監査ログの拡張**
- **監査用の外部サービス導入**
- **AWS CloudTrail** + **Fluentd**でログ収集。
- **OpenTelemetry**で監査トレースを統合。
- **カスタムトリガー**で重要な操作(DROP, ALTERなど)を記録。
#### **3. 暗号化の深化**
- **TDEの有効化**
```sql
CREATE TABLE encrypted_data (
id UUID PRIMARY KEY,
data BYTES ENCRYPTED WITH KEY_identifier
);
```
- **キー管理の厳格化**
- **AWS KMS**や**HashiCorp Vault**でキーローテーションを自動化。
- **アプリケーション層での暗号化**
- 機密データはアプリ側で暗号化(例: AES-256)してから保存。
#### **4. ネットワーク分離と認証**
- **TLS/mTLSの強制**
```yaml
# CockroachDB設定例(node間通信)
listen-addr: node1.crdb.internal:26257
certs-dir: /certs
require-node-client-cert: true
```
- **ファイアウォール/VPC分離**
- ノード間通信をプライベートサブネットに閉じる(AWS VPC, GCP Private Service Connect)。
- **IAM統合**
- **AWS IAM**や**GCP Workload Identity**でクライアント認証を強化。
#### **5. エンタープライズ認証連携**
- **LDAP/Active Directory連携**
```sql
CREATE USER 'user1' WITH LOGIN
CONTROLCHANGEFEED PASSWORD 'complex-password'
VALID UNTIL '2025-12-31';
```
- **プロキシ層でのMFA導入**
- **PgBouncer** + **OAuth2 Proxy**で多要素認証を追加。
#### **6. 脆弱性管理とベストプラクティス**
- **定期的なペネトレーションテスト**
- **SQLインジェクション**や**水平権限昇格**のテストを実施。
- **CISベンチマーク準拠**
- CockroachDBの[セキュリティガイド](https://www.cockroachlabs.com/docs/stable/security-reference.html)に沿った設定。
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### **まとめ**
**CockroachDB単体ではOracle RACレベルのセキュリティは達成困難**ですが、以下の組み合わせで近づけられます:
1. **外部ツール連携**(Vault, KMS, Fluentd)
2. **アプリケーション層での保護**(クライアント暗号化、プロキシ認証)
3. **厳格なネットワーク設計**(mTLS, VPC分離)
4. **監査とコンプライアンスの自動化**
**「分散DBの利便性」と「エンタープライズセキュリティ」のトレードオフ**を理解し、**運用コスト**と**リスク許容度**で最適なバランスを選ぶ必要があります。

