
二十歳の頃、
僕は工場に勤めていて
その工場には 同じ年の
暴走族へ入っているSくんがいました

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ある日の昼休み
危なそうな Sくんの仲間が
10人ぐらいで工場へやってきて
なにやらみんなで話をしていました
怖そうな、目つきの悪い男たちと
対等に話しているSくんを見て
僕は「すごい奴だな、」と
思いました
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その三ヵ月後、第一次オイルショックで
Sくんと僕は
昼夜 二交代で12時間勤務の、
より仕事がキツい電線課へ移動になりました
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そんな ある昼休み..
夜勤の仮眠の時に、
僕はすぐに眠れないので
飲んでいたウイスキーを
Sくんが僕の車で見つけて
「飲ませろ」と言うので
手渡すと ぐい飲みして
すぐにSくんはヨッパライになってしまって
昼休みが終わって 作業場へ入ってから
今度は大きな声で歌を歌い出してしまいました、
もう気分は最高潮、
誰にも止められません
その時でした
「こら、いい加減にしろ。」
課長の怒鳴る声が室内に響きました
そして「厳重注意」になり、
その 一ヵ月後、
Sくんは会社を辞めて行きました

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そんな Sくんの思い出は..昼の弁当箱、
ふたを開けると 白いご飯に
でんぷで「バカ、」と書かれた
ピンクの文字..
「あのやろう。」と笑う Sくんに
「どうしたの?」と僕が聞くと、
「朝、妹と喧嘩したんだ。」
僕は 妹がいるっていいな.... そう思いました
