⑴
母の日に、義母の3回忌法要が旭川であった。
1日での往復運転には自信がなかったので、
前日、市内のホテルに宿泊した。
3年前になるが、葬儀の朝、旭川は快晴だった。
ぶらりと辺りへ足を伸ばすと、
葬儀場前の河川敷も近くの山々も、
朝日を浴びた新緑が鮮やかで、心に残った。
だから、今回も同様の期待をした。
願い通り北都の朝は好天だった。
早々、家内を誘い散歩へ出る。
市民文化会館から緑道が続いていた。
『七条緑道』と言う名前がついているのを知ったのは、
歩き始めてしばらくしてからだった。
花壇はムスカリが花盛り。
その道の所々には『彫刻の街・旭川』らしく野外彫刻があった。
作者を見ると、どれも加藤顕清の名。
1体1体が、朝の木漏れ日を受けていた。
どの姿もみんな、私に何かを語りかけているようだった。
しかも、突然訪問した私を、そっと歓迎しているかのよう。
私は立ち止まっては見上げ、また次のブロンズに近づき見上げた。
ブロンズの上は朝日の青空で、澄み渡っていた。
大きく深呼吸をすると、期待通りの心地よさが胸いっぱいに広がった。
勢い、緑道の先の「常盤公園」まで足を伸ばす。
美術館前には、あのブールデル作『雄弁』が、
朝日に向かって力説していた。
「不思議!」、勇気が湧いてきた。
⑵
目覚めると、カーテンの隙間からの日差しは弱く、
明らかに雨模様。
雨が降ったりやんだりの日がダラダラと続いている。
聞き慣れなかったが、『蝦夷梅雨』と言う。
通説では「北海道には梅雨がない」。
だが、何年か前から「エゾツユ」が、
よくローカルニュースの話題になっている。
40年の東京生活では、6月に入ってまもなく、
梅雨が始まった。
教職の合間、校舎の片隅でしばしば雨に濡れた紫陽花を見た。
その静かなたたずまいに、足が止まった。
多忙さに振り回され、余裕を失っている私に反省をうながしてくれた。
「もっとゆっくりでいいんだよ」と。
だから、じめじめとしたイメージの季節だが、嫌いではなかった。
だが、今年の6月は違う。
好天の朝であってほしいと願っている。
それは・・・・。
4月から自治会長になり、私の暮らしぶりは変わった。
まずは、郵便物が多くなった。
電話がよく鳴り、訪問者も増えた。
会議への出席依頼もしばしば舞い込んでくる。
当然のことだが、どんな依頼ごとにも、
1つ1つ丁寧に対応するよう心がけている。
しかし、想定はしていたが、初めて知ること聞くことが多い。
判断に迷うことも、自信が持てないままの対応も珍しくない。
それにアフターコロナが加わり、4年ぶりのことまで・・・。
案の定だが、疲労感がどんどんと重なる。
年齢も影響し、朝はいつまでもベッドから離れたくないのだ。
体も気分も重いまま朝を迎えることが増えた。
それでももしもだが、いい天気の朝ならどうだろうか。
疲れが残ったままの目覚めでも、きっと意を決して起き上がるだろう。
アクティブな私になろうとするだろう。
そして、朝日に染まる濃い緑色の山々を見上げたり、
アヤメやルピナスが咲き誇るご近所の花壇に足を緩めたり、
時には、散歩するワンちゃんに手を振ってみたりしながら、
小1時間程度のジョギングやウオーキングを楽しむ。
すると期待通り、爽快感が体も心も軽くしてくれる。
迷いや不安、わずらわしさが消え、
一歩でも半歩でも踏み出そうとする私になれるのだ。
なので、どうか明日は好天の朝でありますように。
⑶
久しぶりに好天の朝だった。
前日から、天気が回復したらジョギングをと目論んでいた。
家内を誘い、5キロのスロージョギングだ。
最近は、走り始めて1キロまで左膝に痛みがあるが、
その後は、違和感なく走れる。
しかし、翌日と翌々日はやや痛みを感じながらの歩行になる。
まだまだ無理はできない。
なので、平坦のコースを走るようにしている。
この日は、我が家から歴史の杜公園へ向かい、
公園の周回コースを3周して、帰宅するコースを選んだ。
公園の周回は、アップダウンがない。
ウオーキングよりやや速いだけのペースでも、
2人とも息を切らしながら走る。
1周目の途中で、2本のゴルフクラブを持った方とすれ違った。
挨拶を交わしたが、始めて見る顔だった。
「散歩をかね、スイング練習のようだね?」。
走りながらの問いに、家内も同意した。
そして2周目、驚いたことに同じところにその方がいた。
そして、近づく私たちに話しかけた。
「2人とも元気でいいね。
俺も昔、走ってたんだ。
100キロマラソンを8年続けて完走したこともあるんだ。
でも、今はこれしかできない」
と、クラブをかざした。
思わず、私は訊いた。
「もしかして、私たちを待っていたんですか?」
「そうだよ。頑張れって言いたくてね。」
そのまま通り過ぎる訳にいかなかった。
私も家内も足を止めた。
すると「いいから、続けて続けて!」。
うながされるまま、走り始めると、
「アスファルトより芝生のほうがいいよ!」。
大きな声が好天の青空からとんできた。
アルケミラが 見ごろ
※次回のブログ更新予定は6月24日(土)です
母の日に、義母の3回忌法要が旭川であった。
1日での往復運転には自信がなかったので、
前日、市内のホテルに宿泊した。
3年前になるが、葬儀の朝、旭川は快晴だった。
ぶらりと辺りへ足を伸ばすと、
葬儀場前の河川敷も近くの山々も、
朝日を浴びた新緑が鮮やかで、心に残った。
だから、今回も同様の期待をした。
願い通り北都の朝は好天だった。
早々、家内を誘い散歩へ出る。
市民文化会館から緑道が続いていた。
『七条緑道』と言う名前がついているのを知ったのは、
歩き始めてしばらくしてからだった。
花壇はムスカリが花盛り。
その道の所々には『彫刻の街・旭川』らしく野外彫刻があった。
作者を見ると、どれも加藤顕清の名。
1体1体が、朝の木漏れ日を受けていた。
どの姿もみんな、私に何かを語りかけているようだった。
しかも、突然訪問した私を、そっと歓迎しているかのよう。
私は立ち止まっては見上げ、また次のブロンズに近づき見上げた。
ブロンズの上は朝日の青空で、澄み渡っていた。
大きく深呼吸をすると、期待通りの心地よさが胸いっぱいに広がった。
勢い、緑道の先の「常盤公園」まで足を伸ばす。
美術館前には、あのブールデル作『雄弁』が、
朝日に向かって力説していた。
「不思議!」、勇気が湧いてきた。
⑵
目覚めると、カーテンの隙間からの日差しは弱く、
明らかに雨模様。
雨が降ったりやんだりの日がダラダラと続いている。
聞き慣れなかったが、『蝦夷梅雨』と言う。
通説では「北海道には梅雨がない」。
だが、何年か前から「エゾツユ」が、
よくローカルニュースの話題になっている。
40年の東京生活では、6月に入ってまもなく、
梅雨が始まった。
教職の合間、校舎の片隅でしばしば雨に濡れた紫陽花を見た。
その静かなたたずまいに、足が止まった。
多忙さに振り回され、余裕を失っている私に反省をうながしてくれた。
「もっとゆっくりでいいんだよ」と。
だから、じめじめとしたイメージの季節だが、嫌いではなかった。
だが、今年の6月は違う。
好天の朝であってほしいと願っている。
それは・・・・。
4月から自治会長になり、私の暮らしぶりは変わった。
まずは、郵便物が多くなった。
電話がよく鳴り、訪問者も増えた。
会議への出席依頼もしばしば舞い込んでくる。
当然のことだが、どんな依頼ごとにも、
1つ1つ丁寧に対応するよう心がけている。
しかし、想定はしていたが、初めて知ること聞くことが多い。
判断に迷うことも、自信が持てないままの対応も珍しくない。
それにアフターコロナが加わり、4年ぶりのことまで・・・。
案の定だが、疲労感がどんどんと重なる。
年齢も影響し、朝はいつまでもベッドから離れたくないのだ。
体も気分も重いまま朝を迎えることが増えた。
それでももしもだが、いい天気の朝ならどうだろうか。
疲れが残ったままの目覚めでも、きっと意を決して起き上がるだろう。
アクティブな私になろうとするだろう。
そして、朝日に染まる濃い緑色の山々を見上げたり、
アヤメやルピナスが咲き誇るご近所の花壇に足を緩めたり、
時には、散歩するワンちゃんに手を振ってみたりしながら、
小1時間程度のジョギングやウオーキングを楽しむ。
すると期待通り、爽快感が体も心も軽くしてくれる。
迷いや不安、わずらわしさが消え、
一歩でも半歩でも踏み出そうとする私になれるのだ。
なので、どうか明日は好天の朝でありますように。
⑶
久しぶりに好天の朝だった。
前日から、天気が回復したらジョギングをと目論んでいた。
家内を誘い、5キロのスロージョギングだ。
最近は、走り始めて1キロまで左膝に痛みがあるが、
その後は、違和感なく走れる。
しかし、翌日と翌々日はやや痛みを感じながらの歩行になる。
まだまだ無理はできない。
なので、平坦のコースを走るようにしている。
この日は、我が家から歴史の杜公園へ向かい、
公園の周回コースを3周して、帰宅するコースを選んだ。
公園の周回は、アップダウンがない。
ウオーキングよりやや速いだけのペースでも、
2人とも息を切らしながら走る。
1周目の途中で、2本のゴルフクラブを持った方とすれ違った。
挨拶を交わしたが、始めて見る顔だった。
「散歩をかね、スイング練習のようだね?」。
走りながらの問いに、家内も同意した。
そして2周目、驚いたことに同じところにその方がいた。
そして、近づく私たちに話しかけた。
「2人とも元気でいいね。
俺も昔、走ってたんだ。
100キロマラソンを8年続けて完走したこともあるんだ。
でも、今はこれしかできない」
と、クラブをかざした。
思わず、私は訊いた。
「もしかして、私たちを待っていたんですか?」
「そうだよ。頑張れって言いたくてね。」
そのまま通り過ぎる訳にいかなかった。
私も家内も足を止めた。
すると「いいから、続けて続けて!」。
うながされるまま、走り始めると、
「アスファルトより芝生のほうがいいよ!」。
大きな声が好天の青空からとんできた。
アルケミラが 見ごろ
※次回のブログ更新予定は6月24日(土)です
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