精神世界と心理学・読書の旅

精神世界と心理学を中心とした読書ノート

自己変容の炎(ジョーン ボリセンコ)

2010-09-15 20:47:52 | セラピー・ヒーリング・医療
◆『自己変容の炎―愛・癒し・覚醒 (ヒーリング・ライブラリー)』(ジョーン ボリセンコ)

世界の魂は、飢餓や公害や憎悪の炎の中におり、傷ついている。その傷の炎を意識的に使って、癒しの炎に変え、世界を変えていかないと、炎は私たちを燃やし尽くしてしまうと著者は言う。そして逆説的ながら、痛みや虐待やトラウマのおかげで、文字どおり光を見て、個人的な癒しや社会の癒しに熱意をもってとりくむ人が増えているという。

闇に閉ざされたときにこそ、変容をうながす本物のメッセージが到来するときだというのが、この本のひとつのテーマだ。人生の危機に直面したときに、自分自身と宇宙に対する根本的な信念が、魂の闇夜とどうつき合うかを決定する。「何で私が?」というギリギリの問いこそが、自分がほんとうに信じていることに対面させてくれる。不幸の原因について自分を責めるだけの無力なペシミストなのか、人生の難題に挑戦することが心理的・霊的成長の一過程だと信じるオプティミストなのか。

40代はじめのレスリーという女性は、3年前に夫を亡くした。二人の娘をかかえる彼女は銀行勤めをはじめたが、やがて自分自身が、右の乳房に悪性の腫瘍があることを知る。「何でこの私が、と最初は考えました。でもそのあと思ったんです、私がこうなっちゃおかしい理由もないって。だって何が起きるかなんて、私たちにわかるわけないんですもの。‥‥‥ひとつだけわかることは、胸の奥のどこかではっきりわかることは、こういうつらいことが、最後の最後には私のためになるんだってことなんです。なんでそうなるのかはわかりません。死ぬまでわからないかもしれませんが‥‥」

著者によれば、自分の病気や不幸に意味を見出すことができた人は、自分の置かれた状況をより大きな自由と幸福を手に入れるためのチャンスとして活用し、それによって人生の責任をとろうとした人たちだという。レスリーも、今の不幸に愛ある目的が込められていることが、いつの日か明らかになると信じ、自分の人生に責任をとる努力を惜しまない。しかもその信念は、硬直したドグマではなく、柔軟で開かれている。

魂の闇夜は多くの場合、新しい存在の仕方へのイニシエーション(通過儀礼)だと考える人が、心の健康の専門家のなかにもあらわれているという。病気は、肯定的な移行であり、「恵み」でさえあり、たとえばうつ病は、究極的には自分を心理的・霊的に強めるようなイニシエーションであるという。

人は、無力なものでも、縛られているものでも、役立たずでもない。苦しむだけの価値がじゅうぶんにある浄化に向かって、炎のなかをくぐり抜けているのだ。苦しむことの価値は、それがもっとも神聖なものの探求をうながすところにあるのだ。

知的な興奮を覚えるような新しいメッセージの本ではない。やや冗漫な感じももった。しかし読んでいて魂が気づかぬうちに影響を受けている、そんな印象をもっ た。


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