12月1日の土曜日から2日の日曜日にかけて、愛知県体育館で大道塾主催の世界大会が開催されました。海外での大道塾の支部普及率がダントツのモスクワを筆頭に、多くの国からの参加者があり、とても熱い戦いが繰り広げられました。
今のモスクワが強いのは、一番最初に海外に渡ったのがモスクワであったことにより、普及年数が長い事と合わせて、モスクワという国の国民性から、大道塾の空道という空手をベースとした競技スタイルが普及しやすい土壌があったためと思われます。
伝統派の空手と違い、技を当てることを認められるスタイルは、競技の中で 「強さ」 を比較するうえでとても分かりやすく、極真空手のような上段への手の攻撃や掴みや投げ技の制限がない事で、総合的な技術が実際に使えるということ、またキックボクシングや総合格闘技と違い、道着を着用することで、護身としての道着を使った技術が使え、また、道着を着てしっかりと帯を締めるということで、ただの格闘技と異なり、日本の伝統的な ”武道” として、学ぶべき道というものがあるということも、年齢を超えて学ぶべき価値のあるものとしての部分が、ロシアで高い評価が得られている理由ではないかと思います。
横須賀湘南支部からは、追浜所属の谷井選手が軽量級に出場し、結果として4位の成績を残すことができました。
本人からすれば、表彰台の一番上に登っていたとしてもよいだけのレベルがあるだけに、僅差の判定負けによるベスト4という結果には、悔しさがにじんでいる様子でした。
しかし、勝負の中で相手を倒せば勝ちは明白である競技です。
私自身も現役選手の頃、自分に言い聞かせていたことは、試合で相手を倒せなければ、あとは審判に判定を委ねるのが、選手の心のけじめだと思っています。
試合は勝っても負けても、あくまでも実戦ではなく、ルールのある競技の中の決めごとです。
腹をくくるのは、勝負の時もそうですが、勝負を終えた後の心のけじめはより重要なことだと思います。
何はともあれ、優勝した選手にほぼ互角の勝負を演じ、立派に戦い抜いた谷井選手の実力には感服するばかり。
皆のいい見本になる、いい戦いでした。
ところで、、
私事ですが、
大会を見に来られた方は分かると思いますが、私の審判グループの中で、ひときわ体が大きく、異様にイカツい顔をして主審をしていたロシア人、覚えておられますか?
彼は、フィリポフという名前で、1996年にモスクワで行われた無差別の大会で私が戦った相手です。
当時はまだ若手の選手でした。
私の試合結果は4位でしたが、その時に負けた相手がこのフィリポフです。
その頃はもう少し体は小さかったかもしれませんが、当時からバリバリの筋肉質で、まさにモスクワの無差別大会という感じの、体の大きな選手がゴロゴロしていました。
遠間からの足払いをもらい、極めの効果でポイント先取されました。
攻防の後半で、グラウンド状態のもつれたところで下からの腕十字が決まりかけましたが、当時は寝技が15秒という時間制限があり、腕をロックした時点で時間終了。
効果ポイント先取されて、判定負けという結果でした。
打撃レベルがまだそれほど高くない時代の話なので、ポイント先取されていなければ、、、と悔しい思いをしましたが、逆に、つかみの打撃に関しては制限がない時代で、相手側はかなり荒っぽい攻防をしてきた記憶があります。
ロシアで大道塾が普及しだした当時、モスクワに乗り込んでの敵地での無差別大会。なかなか刺激のある経験が出来ましたが、今ではかなり昔の、懐かしい思い出です。
廊下を歩いていると、これまた大柄な、おじさん風のロシア人に話しかけられ、「俺だよ俺! 覚えてないの?」 といった雰囲気で話す彼は、その昔、世界大会が開催される前の1990年代の時代、共に同じ北斗旗の舞台で戦ったロシア人です。
自分の道場の稽古生が、今大会で入賞したとのことで、とても喜んでいましたが、なんだか、、、とても太っていました。。。
「しっかり稽古して、自分も体動かさにゃー! いかんぞー!」 と言いたいところを、ロシア語しかしゃべれない彼にはボディーランゲージで伝えるしかありませんが、なぜだか通じてしまうのは、拳を交えて交流した仲間ならではですね。
にこにこ笑いあって腕を回して抱擁し、体をたたき合えば 「お互いにパッピー!」 といった感じです。
また、初日の夜には、大道塾寮生のOB会がありました。ある意味で、初めてのOB会です。
私から見ても大先輩の方々も多く集まり、その昔の寮生の話に花が咲きました。
こうした時、私はほとんど聞き役ですが、近況報告を含めて私も色々と話をさせて頂きました。
皆さんの話に腹を抱えて大笑いできるのは、やはりこうした時ですね! 実に楽しいひと時でした。
蓋を開ければ、またまたロシア旋風が吹き荒れた今大会でしたが、日本選手とロシア選手との大きなパワーの差はかなり縮まってきているようにも感じます。選手層の厚さの違いと、日本選手のフィジカル面での意識の向上、後は、一つ一つの技に、芯のある強さを持つことが必要かと。
技術面ではやはりまだまだ、日本選手が上手です。自信をもって今後につなげて頂きたいと思います。
ただし、一つ二つの自分の得意な技術や戦い方に固執する日本人と違い、どん欲に幅広い技術を身に着けているロシア選手の動きは、学ぶべきところも多いと思います。
また、ロシア以外にもジョージア(グルジア)などの旧ロシア圏の国々のレベルアップが目立ちましたが、より多くの国での基礎レベルの向上も必要ですね。
その他、やはり競技の前にまず、「武道」 としての学びを深めるべきです。
国ごとに差があるものの、礼法の酷さが目に付きます。
私がその選手の指導者であれば、そもそも、大会には出場させません。
最低限の礼法を守れず、心の姿勢がしっかりとしていなければ、試合うだけの価値があるものではないと私は考えています。
勝負に勝っては、無礼に大喜びしてはしゃぎまわり、負けては礼法もそこそこに悲観に暮れる姿は、見ていても決して気持ちのいいものではありません。
強さや技能だけではなく、心に武道家の誇りを持ち、日本の武の精神を通して、いい意味で、世界に普及していくことを望んでいます。
谷井選手のトロフィーは、車で来ていた私が、本人に代わって持ち帰りました。
世界大会入賞、おめでとうございます。
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