トーキング・マイノリティ

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プーチンに肩入れする者たち その二

2022-04-26 21:40:17 | 世相(日本)

その一の続き
 ロシアのウクライナ侵攻後も、ネット上ではプーチン支持を止めるどころか、肩入れを強めている者を見かける。プーチン擁護の最大の理由はディープステート(以下DS)がメディアを駆使してプーチンは悪者扱いしており、プーチンはむしろDSの陰謀の被害者というのだ。
 試しに「ウクライナ DS」で検索すると、その類の陰謀論記事ヒットの多いこと。検索トップで出てきた記事のひとつ「ロシアの「ウクライナ侵攻」という報道について」はその典型なので、記事の一部を引用したい。

上の写真のように、ウクライナ・ゼレンスキー大統領はディープステート(深い闇の領域)の仲間です。ウクライナには生物兵器の研究所や人身売買の基地があり、地下施設は悪魔に誘拐された多くの子供たちや人身売買の本拠地になっています……
 テレビで報道されている映像はほとんどが虚偽であり、その攻撃されたビルや住民のインタビューなどの映像は、過去ロシアが侵攻した画像を編集し挿入しているのです。つまり今のウクライナへの軍事作戦は偽りの戦争なのです……

 記事の結びはこうある。
プーチン大統領は、世界の支配階級の95%はレプティリアンの人食いだと告げました。子供誘拐殺人、アドレノクロム。冷血ハイブリッド爬虫類。日本政府、テレビ、政財界、芸能界、知事、市長、宗教人らも人食いとのこと。悪魔サインを指で示しているウクライナ・ゼレンスキー大統領もその一人です

 陰謀論というよりも妄想論者の見本にしか見えなかった。プーチンが世界の支配階級の95%はレプティリアンの人食いだと告げたことは初めて知ったが、万一そんな発言をしていれば、それこそメディアが一斉に「プーチンの狂気」を取り上げるはず。ブログ主による低劣なデマというよりも、己自身の願望妄想を綴っているのだろう。
 村木泉水なる管理人は自己紹介で、「写真は、時々、僕の所に現れて来る金星のUFOさんです。彼らの星では、湖の都市ラース 教育都市シマ 森の街ササリー ポンプキン平原 科学都市リマなどがあり、地球人と金星人は兄弟の関係です」と述べている。ブログトップでは癌になったとあるが、X-ファイルを見過ぎたのか、元から精神が壊れていたのやら。

 この類は震災を人工地震と結びつけることが多く、トランプを支持する傾向がある。尤も元ウクライナ大使の外交官・馬渕睦夫もメディアでDSの陰謀を語っているので、村木殿ばかりを笑えないが。
 DS陰謀論はユダヤ陰謀論と表裏一体であり、DSの用語は使わずとも世界の諸悪の根源はユダヤ、何かあればユダヤに結びつける保守系らしきブロガーもいる。反グローバリズムを主張する右派も少なくなく、グローバル資本主義を牛耳るユダヤ系を敵視するのは当然だろう。私自身、とかく親中反日傾向の強いユダヤ人は嫌いだ。

無敵の太陽』というブログがある。管理人・黒木頼景氏は『教科書に載せて全日本人に知らせたい現代史 支那人の卑史 朝鮮人の痴史』(成甲書房)という著書があり、以下はAmazon に載った経歴
昭和42(1967)年茨城県生まれ。大東文化大学外国語学部英語学科卒業。米国セイント・ピーターズ・カレッジ政治学部およびカンザス州立大学大学院政治学科に留学。ブログ「無敵の太陽」でアジア近隣諸国史や西欧史、移民問題などの評論活動を展開中。ヘリオス・インスティテュート代表

 黒木氏の著書は未読だがタイトルだけで、保守から“煽動的ウヨク”呼ばわりされたこともある百田尚樹氏顔負け。黒木氏はとかくブログで延々ユダヤ人非難を書き連ねており、ウクライナ侵攻以前からプーチンを高く評価していた。3月19日付記事に至っても、プーチン称賛と擁護の内容一色だった。

 もちろん黒木氏の言うように、「日本には行動や言論の自由があるから、誰が何を見て何を語ろうが個人の勝手だが」、この日も“ライフルが似合うプーチン大統領”の画像をアップしている。
 私がプーチンを厭わしく思うのはマッチョ気質丸出しで、上半身裸でライフルを構えるのはモデルか役者くらいにしてほしい。自己顕示欲と自己陶酔の権化のような男だが、類は友を呼ぶのか一部男性には堪らないようだ。

 プーチン以外にも黒木氏はヒトラーに同情的で、いかにドイツはじめ欧米社会にユダヤ人が食い込み、欧米人をとことん食い物にしてきたか描いている。
 もちろんそれは決して誇張ではないが、だからといえ強制収容所に押し込み、虐殺していいという理由にはならない。氏はガス室殺人の証拠は無いと書くが、ヒトラーが虐殺したのはユダヤ人だけではない。

 同時にウクライナも善とはほど遠いにせよ、ロシアが軍事侵攻してよいという理由は全くない。黒木氏はそれも全てユダヤ人が陰で糸を引いていると解釈、4月23日付記事には、「最近では批判するのも厭になるが、日本のマスコミは歐米からの偏向報道を垂れ流すだけの媒体となっている」と述べている。
 但し日本のマスコミが、他国の偏向報道を垂れ流すだけの媒体でなかった時期が果たしてあったのかは疑問だが。
その三に続く

◆関連記事:「地震兵器
なぜ人は陰謀論にハマるのか?

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