その①の続き
言論・表現の自由を高らかに謳う欧米のマスコミが、ことイスラエルに関すると反ユダヤ主義の批判を恐れやる気も消滅、まるで蛇の前のカエルとなるのは既に日本人でも知っている。『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』(ジョン.J.ミアシャイマー&スティーヴン.M.ウォルト著、講談社)という本は、その題名だけでアメリカの主流メディアや一流紙は完全黙殺を決め込んだことで、欧米のメディアの誇る言論・表現の自由の実態が知れよう。この本の見出しがまた興味深いので、一部挙げてみたい。
-第5章「政策形成を誘導する」(アメリカ合衆国議会を牛耳る/親イスラエルの合衆国大統領を誕生させる/政権を<イスラエル・ロビー>側に引き止める)、第6章「社会的風潮を支配する」(メディアは一つのメッセージしか発信しない/一方向からしか考えないシンクタンク/学会、教育界を見張る<イスラエル・ロビー>/不快な戦術/大きな消音装置)…
アルノー氏はイランのアフマディーネジャード大統領によるホロコースト作り話発言をドイツ外相は抗議したのに、日本のメディアは岡田外相に意見を求めなかった、こうした問題に光をあててもらわなければ困ると憤慨して書くが、何年も日本滞在しながら日独のメディアの違いも分らなかったのか?日独のメディアの論調が同じであるべきと考えるアルノー氏の異常さはともかく、殊更ホロコーストを強調していることから彼自身もまた“イスラエル・ロビー”の1人である可能性がある。この類ならホロコースト問題をイスラエルの意向に添ったかたちで光をあててもらわなければ困るのは当然だろう。
著名人となればマスコミが騒ぐのは日米共通だが、O.J.シンプソン事件はそのスケールの大きさで、先日の酒井法子容疑者騒動など比較にもならない。前者は殺人と人種問題が絡んでいる背景があるにせよ、クリントン元大統領とモニカ・ルインスキー嬢との醜聞はその規模でO.J.シンプソンさえ圧倒する。国家予算をふんだんに使った世紀の茶番劇はさすが世界の超大国に相応しい。偽善に塗れた道徳劇と化したあの裁判中、アフガンとスーダンに米軍が空爆したことを憶えている人がどれだけいようか?大統領とルインスキー嬢の「不適切な関係」に国ぐるみで狂騒したアメリカのメディアだが、所詮愚にもつかぬバカ騒ぎに過ぎない。
日本のマスコミは建前は客観性を売りにしている。アルノー氏はそれらを「客観性を口実にどっちつかずの態度を取ることは許されない」と叱責する。確かに客観性というものは時に日和見となりがちで、読者の理解を困難にする場合もある。だが、主観性を全面に出すことだけがジャーナリズムではない。綿密な取材と観察、洞察力に恵まれた教養ある者による主観なら優れた分析が期待できるが、そうでない者の書いたコラムは虚偽とでっち上げ、妄想の産物となる危険性を秘めている。こうなればもはやイエローペーパーそのものであり、見ない方が無難である。
イラク戦争前、欧米メディアは盛んにイラクが大量破壊兵器を隠し持つ危険な国と報道していたものだった。だが、現時点ではそれらが全くの虚報だった実態を知っている。あの戦争当初、いかに米国のメディアが政府寄りだったのかを思い出してほしい。所詮新聞は体制の味方であり、最近はイランの核兵器疑惑を喧伝しているが、イスエラルの持つ大量破壊兵器は毎度ながらの見ざる、聞かざる、言わざるに徹している。欧米に不従順な第三世界の指導者をリンチするのが欧米式報道なのだ。
日本のマスコミを酷評するアルノー氏だが、そのコラムの論調から日本のマスコミに大きく頼っていることが分る。氏のコラムの文章「「天下り」は今や金正日やオウム真理教より憎まれている…「事務次官」なら、間違いなく八つ裂きだ…」など、己自身の思い込みが加わっているが、氏自身も挙げた朝日のような日本の新聞だけ見ていたことから出た結論なのだ。官僚バッシングなどマスコミの年中行事となっており、「天下り」よりもべら棒な年収のあるマスコミ関係者が憎まれていることもアルノー殿は理解出来ないらしく、「足と頭を使って書く」という記者の本分からは程遠い。
先日も記事にしたが、四半世紀もの海外生活を送られたブロガー氏からのコメントに、「そういえば、日本のTV、週刊誌などに登場する「日本語のできる米国人」ジャーナリストなども、論理、学識に疑問のある人が多いような気がする。どうせ彼らは、本国では売れないことを知っていて、日本に潜り込んできた二流インテリ、或いは左翼系、或いはモルモン教徒系などの人間と思う…」と書かれていた。アルノー氏のコラムはその指摘を証明するサンプルとなろう。
日本のマスコミも低劣だが、欧米のそれもまた如何わしさでは人後に落ちない。欧米のマスコミはただ煽るだけの「世界扇動党」というべきで、非生産的な「ムダ話党」より遥かに性質が悪い。高級紙を謳いつつ世論形成を誘導、無知な読者に政治の見通しを伝えてやっているとの途方もない思い上がりが文面から伝わってくる。そんなマスコミこそ読者に責任を負わないのは日本、欧米も変わらず、いささかでも教育を受けた読者層なら、もはや似非インテリ風情の大上段に構えた講釈など見たいとは思わないだろう。
◆関連記事:「大本営発表」
「イスラエル・ロビー」
「欧米は本当に言論の自由が保障された社会か?」
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言論・表現の自由を高らかに謳う欧米のマスコミが、ことイスラエルに関すると反ユダヤ主義の批判を恐れやる気も消滅、まるで蛇の前のカエルとなるのは既に日本人でも知っている。『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』(ジョン.J.ミアシャイマー&スティーヴン.M.ウォルト著、講談社)という本は、その題名だけでアメリカの主流メディアや一流紙は完全黙殺を決め込んだことで、欧米のメディアの誇る言論・表現の自由の実態が知れよう。この本の見出しがまた興味深いので、一部挙げてみたい。
-第5章「政策形成を誘導する」(アメリカ合衆国議会を牛耳る/親イスラエルの合衆国大統領を誕生させる/政権を<イスラエル・ロビー>側に引き止める)、第6章「社会的風潮を支配する」(メディアは一つのメッセージしか発信しない/一方向からしか考えないシンクタンク/学会、教育界を見張る<イスラエル・ロビー>/不快な戦術/大きな消音装置)…
アルノー氏はイランのアフマディーネジャード大統領によるホロコースト作り話発言をドイツ外相は抗議したのに、日本のメディアは岡田外相に意見を求めなかった、こうした問題に光をあててもらわなければ困ると憤慨して書くが、何年も日本滞在しながら日独のメディアの違いも分らなかったのか?日独のメディアの論調が同じであるべきと考えるアルノー氏の異常さはともかく、殊更ホロコーストを強調していることから彼自身もまた“イスラエル・ロビー”の1人である可能性がある。この類ならホロコースト問題をイスラエルの意向に添ったかたちで光をあててもらわなければ困るのは当然だろう。
著名人となればマスコミが騒ぐのは日米共通だが、O.J.シンプソン事件はそのスケールの大きさで、先日の酒井法子容疑者騒動など比較にもならない。前者は殺人と人種問題が絡んでいる背景があるにせよ、クリントン元大統領とモニカ・ルインスキー嬢との醜聞はその規模でO.J.シンプソンさえ圧倒する。国家予算をふんだんに使った世紀の茶番劇はさすが世界の超大国に相応しい。偽善に塗れた道徳劇と化したあの裁判中、アフガンとスーダンに米軍が空爆したことを憶えている人がどれだけいようか?大統領とルインスキー嬢の「不適切な関係」に国ぐるみで狂騒したアメリカのメディアだが、所詮愚にもつかぬバカ騒ぎに過ぎない。
日本のマスコミは建前は客観性を売りにしている。アルノー氏はそれらを「客観性を口実にどっちつかずの態度を取ることは許されない」と叱責する。確かに客観性というものは時に日和見となりがちで、読者の理解を困難にする場合もある。だが、主観性を全面に出すことだけがジャーナリズムではない。綿密な取材と観察、洞察力に恵まれた教養ある者による主観なら優れた分析が期待できるが、そうでない者の書いたコラムは虚偽とでっち上げ、妄想の産物となる危険性を秘めている。こうなればもはやイエローペーパーそのものであり、見ない方が無難である。
イラク戦争前、欧米メディアは盛んにイラクが大量破壊兵器を隠し持つ危険な国と報道していたものだった。だが、現時点ではそれらが全くの虚報だった実態を知っている。あの戦争当初、いかに米国のメディアが政府寄りだったのかを思い出してほしい。所詮新聞は体制の味方であり、最近はイランの核兵器疑惑を喧伝しているが、イスエラルの持つ大量破壊兵器は毎度ながらの見ざる、聞かざる、言わざるに徹している。欧米に不従順な第三世界の指導者をリンチするのが欧米式報道なのだ。
日本のマスコミを酷評するアルノー氏だが、そのコラムの論調から日本のマスコミに大きく頼っていることが分る。氏のコラムの文章「「天下り」は今や金正日やオウム真理教より憎まれている…「事務次官」なら、間違いなく八つ裂きだ…」など、己自身の思い込みが加わっているが、氏自身も挙げた朝日のような日本の新聞だけ見ていたことから出た結論なのだ。官僚バッシングなどマスコミの年中行事となっており、「天下り」よりもべら棒な年収のあるマスコミ関係者が憎まれていることもアルノー殿は理解出来ないらしく、「足と頭を使って書く」という記者の本分からは程遠い。
先日も記事にしたが、四半世紀もの海外生活を送られたブロガー氏からのコメントに、「そういえば、日本のTV、週刊誌などに登場する「日本語のできる米国人」ジャーナリストなども、論理、学識に疑問のある人が多いような気がする。どうせ彼らは、本国では売れないことを知っていて、日本に潜り込んできた二流インテリ、或いは左翼系、或いはモルモン教徒系などの人間と思う…」と書かれていた。アルノー氏のコラムはその指摘を証明するサンプルとなろう。
日本のマスコミも低劣だが、欧米のそれもまた如何わしさでは人後に落ちない。欧米のマスコミはただ煽るだけの「世界扇動党」というべきで、非生産的な「ムダ話党」より遥かに性質が悪い。高級紙を謳いつつ世論形成を誘導、無知な読者に政治の見通しを伝えてやっているとの途方もない思い上がりが文面から伝わってくる。そんなマスコミこそ読者に責任を負わないのは日本、欧米も変わらず、いささかでも教育を受けた読者層なら、もはや似非インテリ風情の大上段に構えた講釈など見たいとは思わないだろう。
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