その一の続き
実はドリアン助川は、20年以上昔にもクイーンについてコラムを河北新報夕刊に寄稿していたことがあり、その時にもひどい間違いを書いている。「音楽人物列伝」というタイトルのコラムで、連載7回目の時にクイーンを取り上げていた。コラム部分だけを切り取り保存していたため、正確な日付は不明だが、切り取りの裏側から1997年2月であることは分かった。
コラムで助川は生まれて初めて買ったLPレコードがクイーンの3枚目のアルバム「シアー・ハート・アタック」と述べており、これだけでかなり洋楽に入れ込んでいたことが伺える。しかし、次の箇所には唖然となった。
―メンバーの経歴も異色で、ドラムのロジャー・テイラーは歯科医。ベースのジョン・ディーコンは高校の数学教師。ギターのブライアン・メイは王立ロケット研究所の研究員。そしてボーカルのフレディ・マーキュリーはペルシャ系英国人の裁判官の息子としてインドで育ったという過去を持つ……
助川とはほぼ同世代の私だが、クイーンファンになり、アルバムを聴くようになったのはフレディの死後5年目の1996年だった。当時はまだまだネットが普及しておらず、情報は主に書で得る時代だった。
にも関らず、ファン歴1年目の私さえメンバーの経歴のデタラメさには驚いた。ファンなら既知にせよ、ロジャーが歯科医というのに吹いた方もいるだろう。実際は歯科医の卵で、それも早々に断念したことは映画ボヘミアン・ラプソディでも描かれている。
ブライアンが王立ロケット研究所の研究員というのも酷いが、特にフレディが裁判官の息子としてインドで育ったというのはデタラメも甚だしい。確かにフレディは血筋ではペルシア系だが、正しくはパールシー、つまりペルシア系インド人で、育ったのは当時英領だったザンジバル島。尤もフレディが誕生した1946年はインドもザンジバルも植民地だったので、ペルシャ系英国人と言えなくもない。
そしてフレディの父は植民地政府のオフィスで会計係として働いていたにすぎない。大体、植民地の有色人種が裁判官になれるはずがないのだ。ここまでくると弘法にも筆の誤りといったレベルではなく、これでロック評論家として通っていたのだ。音楽雑誌にはフレディをアラブ人と書いていたライターまでいたし、日本の洋楽専門家のレベルの程度が伺えよう。
町山智浩なる米国在住の映画評論家がいる。彼も助川と同じく1962年生まれだが、映画評論家ならば少なくとも映画を見てから批評すると一般人は思い込んでいる。
しかし、映画をロクに見ずとも評論家が勤まるという見本こそが町山なのだ。まとめサイトには「町山智浩が『ボヘミアン・ラプソディ』をラジオで語った内容が嘘が交じってるとしてぼのぼの氏が批判」という記事があり、一ファンのぼのぼの氏が町山の嘘を丁寧に正していた。
町山という映画評論家がいるのは知っていたが、私から見てもマチガイの連発には呆れるばかり。町山のデタラメ話については、クイーンファンのyaeさんからのコメントで初めて知ったが、おそらく彼はクイーン映画に限らず他にも作品を見ずに批評していたと思える。このような者が米国通の映画評論家としてBS朝日に出演しているのだ。
wikiには町山が天安門事件の学生側指導者・柴玲氏について、「死者300人について最も責任を負うべき者は、学生のリーダー」とブログで述べていたことが載っている。他にも「柴玲たちの冷酷な企みにも負けずに無血撤収を成功させた学生たち」と、「柴玲たちが期待していたような最悪の事態を食い止めた軍側の指揮者たち」は評価すべきとしていたという。yaeさんの言葉を借りれば、「出自(父親が韓国人が影響してるのか?」
以上2人の事例から、新聞やТVに登場する専門家には専門分野の基礎知識も危うい専門家たちがいるようだ。○○の専門家などと紹介されれば、一般大衆は疑いもせず、その言説を鵜呑みにしてしまうだろう。私もクイーンファンでなければ、助川のコラムを信じていたと思う。新聞編集者も“専門家”に丸投げし、誤記述をチェックしないのだ。
昨年10月の新聞週間に寄せて数学者・藤原正彦氏は、「新聞は冷静な統計を示し、理性的思考を促すことができるメディアだ」と訴えていたが、正確さや冷静な統計ではwikiを見た方が遥かにマシのようだ。専門家とやらも全面信用はできない。
◆関連記事:「学者の品格」
「フレディは幸せだった?」
詳しくはwikiにて・・・
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E8%84%B3#%E8%82%A9%E6%9B%B8%E3%81%8D%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6
ゲーマーとしてはまったく忌まわしいです。
ゲームをしない私でも“ゲーム脳”という造語は知っていました。ホンモノの脳神経学者が“ゲーム脳”について書くならともかく、実際は文学部出だったとは呆れます。日大の公式ウェブサイトにも一時経歴詐称が載っていたそうで、これも酷い。偽りの肩書でメディアに登場する著名人は他にもいると思います。
“ゲーム脳の恐怖”というタイトルだけで刺激的ですが、一日中引きこもってゲームをしているのでなければ、別に問題はないでは?