先日、東北歴史博物館で開催されていた『中国★美の十字路展』を見てきた。思った以上に展示物が多かったので、見応えがあった。パンフレットには「これまで中国が海外に送り出した最大規模の展覧会」「中国全土40ヶ所以上の博物館や研究機関が所蔵する日本初公開を多数含む210件」「うち6割以上が一級文物(日本での国宝)で構成」と書かれてある。贋作で有名な中国なので現代作られた“文物”や、実は三級文物を一級と称した可能性もあるかもしれないが、「シルクロード」の言葉はやはり惹き付けられるものだ。たとえ“三級文物”でも見ておいて損はないと思い、博物館まで足を運んだ。
展示には様々な俑があった。紙や布と違い土でできた俑は保存がいいので、当時の風俗を知る上では格好の文化財だ。やはり『美の十字路展』を謳っているの で、非漢族、特に北方遊牧民や西域の異民族の俑が多かった。北方遊牧民はさすがに騎馬民族ゆえ馬上姿も多数あり、馬に跨りながら吹奏したり酒も飲んでい る。楽器を鳴らすのはともかく飲酒乗馬して大丈夫か、と思うのは現代のひ弱な定住民の老婆心だろうか。
私が特に見たかったのが西域の通商民族ソグド人に 関する遺物だ。期待通り彼らの文化財が多く展示されていたのはよかった。大きな目にひげの濃く彫りの深い容貌は明らかに漢族とは異なる。ソグド系と思われ る異民族の雑技団の俑もあったが、かつての中国では雑技団は西域の異民族が中心だったのか?上の映像の騎駝俑は日本初公開らしいが、騎駝に乗っているのも ソグド人と見られ、いかにもシルクロードの通商を牛耳った商業民族らしい姿だ。他にもソグド人が商談をしている浮彫りもあった。
展示されていたソグド人の石棺は見事だった。石の表面はまだ彩色が残っており、色あせてはいてもかつては鮮やかな色彩の棺だったのが分かる。ゾロアスター教徒といえば遺体を鳥に食わせる鳥葬が有名だが、ソグド人は必ずしも鳥葬にこだわらなかったのだろうか。
上記の手の込んだ瓶は「鳳首瓶」と呼ばれ、これまた日本初公開。これは特に西域、ペルシアの影響が濃厚なのは素人目にも分かる。他にもペルシア文化色の強 い銀器やガラス製品を見ただけでも、博物館に来た甲斐があった。それらの工芸品は現代人から見ても質やデザインが素晴らしい。
展示品に は仏像も多く、日本の仏像もかなり影響を受けているのが知れる。菩薩や観音像はどれも秀麗だった。ただ、残念なことに首が切断されていたり、顔が削り取ら れている浮彫りもあった。シルクロード一帯は後にイスラム化するので、その過程で起きた偶像破壊の一環だろうか。20世紀初めに敦煌にも行った西域探険 家・吉川小一郎によると、壁画や塑像を部屋に置くと少し目を離した隙に回教徒の現地人が目を砕いたそうだ。彼らは偶像の目に睨まれると地獄に落ちると言うのだ。欧米人探険家もとにかく人夫が壊して困る、との記録を残している。
今年になっても「彫刻は罪」「禁止対象は古代エジプトの彫像も含まれる」とのファトワ(宗教命令)を出すムスリム神学者もいるほどなので、この先どれだけの遺跡が破壊されるのだろう。
よろしかったら、クリックお願いします。
展示には様々な俑があった。紙や布と違い土でできた俑は保存がいいので、当時の風俗を知る上では格好の文化財だ。やはり『美の十字路展』を謳っているの で、非漢族、特に北方遊牧民や西域の異民族の俑が多かった。北方遊牧民はさすがに騎馬民族ゆえ馬上姿も多数あり、馬に跨りながら吹奏したり酒も飲んでい る。楽器を鳴らすのはともかく飲酒乗馬して大丈夫か、と思うのは現代のひ弱な定住民の老婆心だろうか。
私が特に見たかったのが西域の通商民族ソグド人に 関する遺物だ。期待通り彼らの文化財が多く展示されていたのはよかった。大きな目にひげの濃く彫りの深い容貌は明らかに漢族とは異なる。ソグド系と思われ る異民族の雑技団の俑もあったが、かつての中国では雑技団は西域の異民族が中心だったのか?上の映像の騎駝俑は日本初公開らしいが、騎駝に乗っているのも ソグド人と見られ、いかにもシルクロードの通商を牛耳った商業民族らしい姿だ。他にもソグド人が商談をしている浮彫りもあった。
展示されていたソグド人の石棺は見事だった。石の表面はまだ彩色が残っており、色あせてはいてもかつては鮮やかな色彩の棺だったのが分かる。ゾロアスター教徒といえば遺体を鳥に食わせる鳥葬が有名だが、ソグド人は必ずしも鳥葬にこだわらなかったのだろうか。
上記の手の込んだ瓶は「鳳首瓶」と呼ばれ、これまた日本初公開。これは特に西域、ペルシアの影響が濃厚なのは素人目にも分かる。他にもペルシア文化色の強 い銀器やガラス製品を見ただけでも、博物館に来た甲斐があった。それらの工芸品は現代人から見ても質やデザインが素晴らしい。
展示品に は仏像も多く、日本の仏像もかなり影響を受けているのが知れる。菩薩や観音像はどれも秀麗だった。ただ、残念なことに首が切断されていたり、顔が削り取ら れている浮彫りもあった。シルクロード一帯は後にイスラム化するので、その過程で起きた偶像破壊の一環だろうか。20世紀初めに敦煌にも行った西域探険 家・吉川小一郎によると、壁画や塑像を部屋に置くと少し目を離した隙に回教徒の現地人が目を砕いたそうだ。彼らは偶像の目に睨まれると地獄に落ちると言うのだ。欧米人探険家もとにかく人夫が壊して困る、との記録を残している。
今年になっても「彫刻は罪」「禁止対象は古代エジプトの彫像も含まれる」とのファトワ(宗教命令)を出すムスリム神学者もいるほどなので、この先どれだけの遺跡が破壊されるのだろう。
よろしかったら、クリックお願いします。
頭部が無いのは売買目的の盗掘の類では?
頭部だけでもコレクターには垂涎の代物でしょう。
しかし駱駝の像はいいですねぇ。
文化財としての値打ちよりも芸術品としての
値打ちの方が高そう。
mugiさんには失礼ですが、本物の一級文物であれば、そうやすやすとお目にかかれないと思いますし、展示するのであれば、それなり警備を敷くのが当然だと思います。今回の展示会がどれだけのセキュリティを持っているのかは分かりませんが、歴史的価値があればあるほど、ダミーの可能性大だと思われます。
(下手な話、酔っ払いが暴れて、歴史的なものを壊したとなれば、国際問題にもなるというものです。)
とはいっても、だからといって、mugiさんがご覧になったものがニセモノというつもりもありませんし、万が一ニセモノであっても、本物はないにしても、何かを訴えるものはあると思います。
私は拝見した事がないのですが、やはり、春秋・戦国時代の文物も拝見してみたいと思いますし、兵馬俑も、一度、この目で拝見してみたいと思います。例え、それがニセモノであっても、偽りの歴史であったとしても、それを見抜けない、自分自身が、それだけの人間である、ということだと思います。
最後に、私は、美術的価値の有無に関わらず、やはり、歴史的な文物が破壊されることに関して、強い憤りを感じます。例えそれが、宗教的なものや、現在の価値では計れないものであったとしてもです。
そうした、遺産を破壊する事こそ、歴史、引いては、人類に対しての冒瀆、挑戦でしかないと思います。
(現在の価値観で、美術的価値や価格価値を述べること事態、ナンセンスだと思います。)
頭部のないギリシア、ローマの彫像のように、展示された仏像の首の断面も凹凸が大きく、激しく破壊されたのが分かります。また、鼻が欠けた菩薩像もありました。売買目的の盗掘よりも、ムスリムによる破壊の可能性が高いと思います。
私は昨年も『偉大なるシルクロードの遺産展』を見てきましたが、タジキスタン共和国のペンジケント遺跡の展示品もありました。かつてソグド人が居住したところですが、アラブ・ムスリムに滅ぼされました。この歴史を書いたブロガーさんもいます。
http://blog.goo.ne.jp/nammkha0715/e/0d1452d0d7c49aeea1e6257a868cb894
実は私もイミテーションではないかと疑いがあったので、博物館に行くのに少し迷いがありました。
警備員は確かにいましたが、厳重とはお世辞にも言えない状態でしたね。ネックレスが展示されてましたが、本物の宝石であれば時価いくらなのか不明です。
私は西域に関心があるので中国の文物はさほど熱心には見なかったですが、兵馬俑は見ごたえがあるでしょうね。私の父が中国旅行をして、現地で兵馬俑を見ましたが、とかくスケールが大きいと言ってました。
私も歴史的な遺跡や文物が狂信のため破壊されるのに、強い憤りを感じます。シルクロード一帯や中世にイスラム勢力が散々侵攻を繰り返した北インドは、文物が至って少ない惨状なのです。
ただ、イスラムの教義がイスラム以前を“暗黒時代”としているので、異教の遺跡を残す行為自体を神に対する冒瀆、挑戦と考えてしまうのです。このような狂信性こそ、「過去の遺物」になってもらいたいものですが。
ご無沙汰しております。
私も張芸謀は好きですね。人間模様の丹念な描写が好きです。でも、どうしても内容には『制約』が付きますね。海外のメディアでもその辺を突っ込まれたりしていますが、あの国では限界があるのでしょう。映画人として充実した人生を送って欲しいんですが…。
いずれにせよ、中国の文化には見るべき物が多いですね。「西域」と言えば、私はこの詩を思い浮かべます。
葡萄美酒夜光杯
欲飲琵琶馬上催
酔臥沙上君莫笑
古来征戦幾人回
ところで、中国の掲示板で以下のような注目すべきものを発見しました。日本の2chが善意で紹介されているようなのです。但しです、ムラの掟、双方の御家の事情により、両国民が根本的に親しくなる事は、無理でしょうね、お上が許しませんし…と思うんですが、どうでしょうか?
http://www.hanminzu.com/bbs/dispbbs.asp?boardID=42&ID=126825&page=1
あの有名ブログは私もよく見ております。
中国はもちろんイランも芸術活動にはかなり『制約』がありますが、それでもいい映画を出しますね。
陳 凱歌のように海外活動をすれば、反って持ち味が失われるのかもしれません。
唐時代の詩人・李白も胡姫や胡酒(葡萄酒)について詠ってました。「胡姫貌如花」と酒場に通っては夜光杯で飲んでいる。
ぶどうという言葉もペルシア語で葡萄酒を意味するバータから来ているとの説もあります。
お上のせいだけでなく、一個人間の親交はあっても日中国民が親しくなるのは無理だと思います。中国人同士でさえ対等とという観念がないのだから、まして異民族-東夷と見下してきた蛮族には。中華思想からすれば、戦争がなくても先に発展した日本を絶対許さない。
中国の公式サイト『人民網』の掲示板では、子供2人を殺害した中国人妻鄭永善の行為は全て責任は日本人と書いてましたね。
http://blog.goo.ne.jp/mugi411/e/7cedba83e640b518b732c05d2867470a
また7月の北朝鮮ミサイル発射で、最大手の掲示板「中華網」にはこんな書込みがありました。
「中国は喜んでいる。何故なら中国の敵を恐怖に陥れているからだ」「北朝鮮は中国に代わって敵、日本の対抗している」
「北朝鮮は中国の資源を消費することなく、日米に対抗している」「北朝鮮が狂暴であればあるほど中国の国際的地位は上がる」
宮城県の地方紙・河北新報に、李薇なる外国人留学生の投書が載ったことがありますが、十分のバスの遅れに不満を言っているのです。
http://blog.goo.ne.jp/mugi411/e/0d22b92b433513b05f7080834df37d6a
日本人に徹底した奉仕を求める姿勢に、中華思想を見た思いです。
政治的状況は多少変化していると思うのです。
このような発言をする人が出てきている実態は、注目に値すると思います。
ttp://nippyo.blog57.fc2.com/blog-entry-73.html
>お上のせいだけでなく、一個人間の親交はあっても日中国民が親しくなるのは無理だと思います。
何かのアンケート調査では「次に生まれてくる時は、中国人に生まれたくない」と答えた人が6割強もいたらしいですからね…。
あの国の心は読めません。
いかに政治的状況が変化しても、民族の精神は不変です。まして、長い歴史を有する国は特に根本的変貌など望めないでしょう。
紹介されたサイトを面白く拝見させて頂きました。老若問わずつくづく中華思想は不変と知らされましたね。
たとえ死にゆく老人に日本を憎む気持が稀薄でも、若者が憎悪しているなら、どうして友好が望めるでしょう?日中に限らず隣国はどの文化圏でも仲が悪いものですが。
「日本人は中国人を見下している」、これは中国人がバカの一つ覚えよろしく繰り返す決まり文句ですが、人間は己を基準として物事を見るものです。漢族くらい他民族を蔑視して来た民族は他にありません。自分たちが有史以来異民族を見下してきたから、他も同じと思い込むのも無理はありませんね。異民族理解精神が根本的に欠けている。
『マオ』を読まれたでしょうか?本中に官製デモの描写がありますが、2年前の反日デモと全く同じなのは興味深いです。
http://blog.goo.ne.jp/mugi411/e/1ae5336b5a6186a58f77ebac8cbc5d25
日本も同じですが、どのような人を対象としたか不明のアンケートも鵜呑みには出来ません。
シンガポールのリー・クワン・ユーはかつて、「中国人は中国人としての誇りを持っているので、ロシア人のように欧米からの批判を気に止めない」と語ってました。エリートと庶民は違うでしょうが。
>老若問わずつくづく中華思想は不変と知らされましたね。
そう来られましたか...。
個人的には、言論の不自由な国において、政治的に許されるギリギリの範囲で発言を行った勇気を褒めたいところなのですが。「より大胆な発言をして逮捕されろ。」と言う勇気は、私にはありません;
>『マオ』を読まれたでしょうか?本中に官製デモの描写がありますが、2年前の反日デモと全く同じなのは興味深いです。
もちろん読みました。『ワイルドスワン』も読みました。私も「どこかで見た光景だ...」と思いました。今後も、そのような事があるかも知れませんね(嘆)
ところで、mugiさんはこちらをご存知でしょうか?
中国で製作された、下品な抗日アニメなのですが、それを痛烈に批判した中国語のブログがあるのです。
アニメ賛成派と反対派(所謂“憤青”)が真っ向対立しています。日本人や在日中国人の発言もあります。
アニメ反対派は「日中友好に役立たない」「日本人が見たらどう思うだろうか?」、賛成派(厨房)は「日本人は民族の仇なので国辱を忘れるべきではない」といった発言をしているようです。
(中国語がおできにならない場合は、機械翻訳でも大体の意味が取れるかと思います。)
http://blog.daqi.com/article/49923.html
さまざまな意見が存在している、という事実が面白いと思いました。
×アニメ賛成派と反対派(所謂“憤青”)
○アニメ賛成派(所謂“憤青”)と反対派