トーキング・マイノリティ

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震災とデマ その①

2017-03-11 22:40:19 | 仙台/宮城

 東日本大震災から6年目の今日は、メディアがこぞって震災特集を報道する日となっている。一般国民に震災被害を忘れないよう訴えつつ、本当のところはネタとメシの種にしているのがメディアなのだ。宮城の地元紙・河北新報も例によって第一面で震災記事を載せているが、被災地ゆえにこの日以外でも関連記事をトップで扱うことがある。
 震災にはデモが飛び交い易いというが、今年1月16日付の河北新報第一面に、震災時の“デマ”を報じた記事がトップを飾った。「仙台「被災地で外国人犯罪が頻発」」「不確定情報 SNSで拡散 震災直後 特殊心理も背景」などの見出しの中で、最大の大見出しは「デマ半数聞き86%信じる」だった。そして以下は大見出しの右脇にあった見出し文。

「東日本大震災直後に宮城県内で流れた「被災地で外国人犯罪が頻発している」というデマを聞いた仙台市民の8割以上が事実と信じたとする調査結果を、郭基煥(カクキカン)東北学院大教授(共生社会論)がまとめた。宮城県警によると当時、外国人犯罪が増えた事実はない。会員制交流サイト(SNS)の普及で真偽不明の情報が拡散しやすい状況と、大災害直後の特殊な心理状態が背景にあったとみられる」

 続けて記事本文には調査結果の発表があり、そこからも引用したい。
調査は昨年9~10月、被災した仙台市青葉宮城野若林の各区に住む日本国籍の20~69歳、計2100人を対象に実施。質問を郵送し770人から回答を得た。回収率は36.7%。
 回答者全体の51.6%が「被災地で外国人の犯罪があるといううわさを聞いた」と答えた。そのうち信じた人は86.2%に上った。年齢や性別で大きな差はなかった。外国人犯罪を「確かに見た」と答えた人は0.4%、「そうだと思われる現場を見た」は1.9%とごくわずかだった。

 情報源(複数回答)は「家族や地元住民」が68.0%と口コミが最も多く、次いで「インターネット」が42.9%。うわさとなった犯罪(同)は「略奪、窃盗」97.0%、「遺体損壊」28.0%の順だった。
 当時はSNSで「被災地で外国人窃盗団が横行している」「外国人が遺体から金品を盗んでいる」といったデマが飛び交い、被災者の間でささやかれた。宮城県警はうわさが事実ではないと確認。流言を否定するチラシを避難所に配り、治安は保たれていることを強調した。ウェブサイトでは「2011年3月12~21日の重要犯罪は4件で、10年同期の7件と比べて多くない」と説明した…

 さらに同日の第三面には郭基煥・東北学院大教授によるコラムがあり、ここでの見出しは「大災害時 情報選択 冷静に」「疑う心構え 事前教育を」。コラム左側にはカクキカン氏の経歴も載っている。
愛知県一宮市生まれ。名古屋大大学院国際開発研究科博士後期課程満了。2009年に東北学院大准教授。13年から現職。専門は社会学、差別論在日3世。49歳

 郭氏の調査で、おや、と感じたことがある。青葉、宮城野、若林区民への調査はあるが、太白区がない。海に接していない泉、太白区だが、仙台市最大の人口を擁する青葉区もその点は変わりない。wikiに載っている2016年10月1日時点の人口数では、青葉、太白、泉、宮城野、若林区の順。泉と太白区の人口数だけで仙台の4割強なのだ。
 殊に泉区は近年人口増加しており、仙台の中心部を避け泉区に事務所を開設する企業も増え、発展している区域である。いくら海に面していないにせよ、泉、太白区を調査対象から外したのはいかなる理由なのか?この点だけで郭氏の調査は安直な手抜きと見なされて当然だ。

 青葉区民の私だが、何時も利用している美容院は泉区にある。そこに勤める美容師さんも泉区民であり、2年ほど前に彼女から興味深い話を聞いた。被災地に行ったボランティアの話では、指輪を盗むため遺体の指を切断、遺体の側には切断された指が転がっていたのを幾つも見たという。それがトラウマになり、ボランティアにその後行けなくなったというのだ。
 これも「遺体損壊デマ」の一種だが、件の美容師さんは新聞を取らずネットもしていない。携帯ならば持っていたはずだが、これが情報源だったのか?或いは本当にボランティアに行った知人がいたのか。情報源についての真偽を確かめる手段はないが、美容師さんがその時言った言葉は多くの仙台市民のみならず大半の日本人が共有する想いだろう。
「あちらの人間は日本人には出来ないことを平気でやりますからね」
その②に続く

◆関連記事:「杜の都、超激震!
 「被災地で救援活動する人々

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