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仙台セントラル閉館に想うこと

2018-06-20 21:40:12 | 仙台/宮城

 6月13日付河北新報の第30面に、「仙台セントラル今月閉館」「市内唯一、地元資本の映画館」の見出しで、次の記事があった。トップ画像は30面からの借用。

仙台市内で唯一、地元資本によって運営されている映画館「仙台セントラルホール」(青葉区中央)が6月末で閉館することが12日、分かった。インターネット動画の普及などにより映画離れが進み、恒常的な赤字経営に陥っていた。ミニシアター系の新作や旧作の上映に力を入れてきたが赤字体質は改善せず、40年の歴史に幕を下ろす。
 経営主体の合同会社仙台セントラル劇場の小野寺勉代表(63)は「東日本大震災で施設が一部損壊して客足が落ちた上に老朽化も進み、維持が困難」と閉館の理由を説明した。合同会社も解散する方向。

 1979年、青葉区中央通沿いに新築されたビル内で、不動産会社が経営する日乃出セントラル劇場として開館。赤字などのため経営者は3回入れ替わった。2007年からビル所有者の名を冠して桜井薬局セントラルホールとして運営。今年2月、命名権契約が切れて現名称になった。落語家を招いた魅知国(みちのく)仙台寄席、在仙プロダクションによるお笑いライブなども開かれた。
 座席数は154。米映画「シンドラーのリスト」が大ヒットした94年の来館者は年間10万人を超えたが、近年は1万人台にとどまっていた。23日から「セントラル特選さよなら上映」と銘打ち、フィルム映写機による楢山節考など国内の8作品を上映する。

 セントラルの閉館により、仙台市内の映画館はMOVIXX仙台(太白区)、TOHOシネマズ仙台(青葉区)と、それぞれフォーラム運営委員会(山形市)が運営するフォーラム仙台(青葉区)、チネ・ラヴィータ(宮城野区)の計4館となる。

 新聞で初めて仙台セントラルが市内唯一、地元資本の映画館だったことを知った。第18面にも「映画文化に大きな痛手」「監督、ファンら惜しむ声」の見出しで関連記事が載っている。

仙台市の映画館仙台セントラルホール(青葉区中央)が今月末閉館することが明らかになった12日、作品を上映した映画監督、催しに出演した音楽家、自主上映会を開いた映画ファンらから惜しむ声が上がった。
地元発の映画を大切にしてくれるありがたい存在だった。閉館は仙台の映画文化にとって大きな痛手だ」。東日本大震災で被災した宮城県南三陸町を舞台とする2本のドキュメンタリー作品を同ホールで上映した映画監督我妻和樹さん(32)=白石市=は肩を落とした。
(中略)
 若林区の無職加藤嘉信さん(74)は2010年ごろから、同ホールの協力を得て平和や命の大切さをテーマとする新作の上映会を数回開いた。「公共施設で上映するより客層が広がるのでありがたかった」と感謝する。
 宮城県内の11館が加盟する県映画協会の加藤慶蔵会長(72)は「力関係の上で配給会社の方が強くなるなど、映画館の経営環境は厳しさを増している。特にセントラルホールのような基盤の弱い館は全国的に閉館が相次いでいる」と説明した。閉館後の施設の使い道は未定。我妻さんらは「何らかの形で営業を再開してほしい」と願っている。

 学生時代から行っていた映画館が閉館するのは本当に寂しい。かつて仙台駅前には日乃出会館仙台東宝劇場があったが、郊外型シネコンに押され、これ等も閉館している。
 私が初めて仙台セントラルで映画を見たのは学生時代の春休み。今から40年近くも前なので、開館して間もなかった頃だ。見たのはリバイバルされた『追憶』だったが、ロバート・レッドフォードがとにかく格好良かったのを憶えている。この映画館では様々な映画を見たが、『デューン/砂の惑星』『トップガン』そして『シンドラーのリスト』もここで見ている。

 セントラルで最後に見た作品は、『日本以外全部沈没』だったかもしれない。記事にもあるように、平和や命の大切さをテーマとする作品が上映されるようになり、震災以降はそれが増えてきたように感じた。そのため自然と足が遠のいてしまった。マイナー作品は私好みだが、社会派映画は苦手である。せっかくカネを払った以上、ТVでは見られない映画が見たいのだ。
 最近は映画館に行く人の数が減少しており、シネコンさえ客入りが悪いという。ミニシアター系は全国的に見ても経営環境が厳しく、閉館が相次いでいるが、映画好きには実に残念な時代となった。

◆関連記事:「追憶
デューン/砂の惑星
日本以外全部沈没

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8 コメント

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映画産業の凋落 (mobile)
2018-06-21 10:01:46
インターネットの普及で、映画も観たい時に手元で観ることができるようになった。初めてテレビが登場した時、映画会社のニンゲンは『あんなもの電気紙芝居ぢゃないか』と見くびったというが、もはや重厚長大なモノは、どんどん駆逐されていく時代です。
わざわざ映画館に足を運ぼうというニンゲンは(私も含めて)大スクリーンによる臨場感を味わいたいのですから(当然3Dや4Dへと流れる傾向に・・・)ミニシアターの閉館は止めることのできない流れなのかもしれません。
今後VRが発達すれば映画は完全に『パソコンで観るもの』になってしまうことでしょう。
しかし、ゴーグルを装着して手探りでウロウロしているあの姿は見ていて哀れをもよおす。私はゴメンです。
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Re:映画産業の凋落 (mugi)
2018-06-21 23:03:26
>mobile さん、

 ТV普及時にも映画産業は打撃を受けましたが、ネットの台頭はそれに追い打ちをかけるようになりましたね。観たい時に手元で観ることが出来るネット動画は便利ですが、ちっこいパソコン画面で観るのは味気なさすぎ。

 私も含めて昔からの映画ファンは、映画館の大画面で鑑賞したいのです。貴方も取り上げた『2001年宇宙の旅』など、パソコンでは臨場感が全く出ません。私は史劇も好きですが、仙台のミニシアターでは結構ルキノ・ヴィスコンティなどの巨匠の作品を上映していました。もはや欧州でもヴィスコンティのような映画は作られないでしょう。
 ハリウッドも最近は凋落が著しいですよね。最近の洋画離れは質の高い作品が減ったことにあると思います。
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エントリーには関係ありませんが (のらくろ)
2018-06-22 23:27:09
https://blog.goo.ne.jp/mugi411/e/30131bc7a093388e8ca549db2694f2d4#comment-list
1時間9分と2時間6分あたりが大変おもしろい!
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Re:エントリーには関係ありませんが (mugi)
2018-06-23 21:34:17
>のらくろ さん、

 たぶん動画サイトでしょうけど、URLが違ってはいませんか?お手数ですが、後日にでも再度リンク願います。
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大変失礼しました (のらくろ)
2018-06-23 21:45:50
改めまして
https://www.youtube.com/watch?v=3Gwd9VsPHJg

特に窓の外のギャラリーの反応に注目!

先週金曜分。2週間で消えてしまうので、お早めに。
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Re:大変失礼しました (mugi)
2018-06-24 22:49:54
>のらくろ さん、

 やはり虎ノ門ニュースでしたか。1時間9分と2時間6分あたりを真っ先に見ましたが、司会者が朝日新聞に電凸していたのは笑えました。朝日側でも対策を考えて、2回目を時間指定してきたのは確かでしょう。声から中年男性と思われますが、一応は丁重に応対している。記事にミスが3箇所もあったのも呆れますが、「エビデンス? ねーよそんなもん」と居直る記者がいる新聞社に相応しい。

 ご存知かもしれませんが、朝日新聞記者がターゲティング広告を知らずに赤っ恥を晒す出来事がありましたね。
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1971185.html
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不愉快記事2題(本ブログではありません) (のらくろ)
2018-06-27 00:08:52
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/13233
ハァ~、と、ため息しか出ません。

>愛読者の間には、作品は当時の状況を知る上で貴重で、子供の教育のために使われるべきだという意見もある。

これがメインストリームにならないのが、アメリカ、という国の「病理」だと投稿者は考えますが、如何?

もうひとつ
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53403
「東大は日本で一番 偉い 大学」、「オレはそこの教授様」というドヤ顔から、なんとも不愉快な腐臭が漂ってくるように思えますが?
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Re:不愉快記事2題(本ブログではありません) (mugi)
2018-06-27 22:06:06
>のらくろ さん、

「大草原の小さな家」はTVドラマ化され、日本でも人気がありましたね。TVドラマも相当な脚色があったはずですが、原作は今やこんな扱いを受けているとは……ため息しか出ないのは私も同じです。

>文学賞からワイルダーの名前を外すという決定の背景には、人種差別的な言動で知られる歴史的人物の文化的な評価を見直す米国での動きがある。

 この箇所には絶句させられました。ならば20世紀初めまでの歴史的人物の多くが対象となるでしょう。ポリコレもここまで来れば、単に「病理」では済まされない。日本も同じ道をたどりそうで恐ろしい。

 伊東 乾なる人物は初耳ですが、記事に目を通しただけで典型な似非リベラルですね。この類の教授様こそ、外国の文献を都合よく引用してきたことが今や知られるようになってきたのに。若者の右傾化など私の若い頃からの決まり文句だった。特に大笑いさせられた箇所があります。
「自国の文化だけが他よりも優れている、などという世間知らずで田舎臭い意見など、恥ずかしくて見ていられない、というのが率直なところです」

 世界、殊に非欧米諸国では「世間知らずで田舎臭い意見」がフツーですけど?それすら知らないのならば、この教授様こそが世間知らずの田舎者。'65年生まれでこれでは救いようがない。
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